【01 農産アンテナ】
2010-06-07
有機農業における政策展開の国際比較
5月30日(日)國學院大學(渋谷キャンパス)において、「有機農業における政策展開の国際比較」というテーマで研究会が開催されました。この研究会は、『自然共生型農業への転換・移行に関する総合的研究「科学研究費・基盤研究(2009年~2010年)-「成熟期有機農業」を素材として-』の一環として開催されました。日本有機農業学会の会員など、研究部会の関係者以外の人も参加できるというお知らせをいただいて参加させてもらいましたので、その概要をご報告します。
このプロジェクトは、「展開事例、技術論、歴史・理論、国際比較」から構成されています。第5回目の今回は、国際比較研究のテーマとして、①「欧州(フランスの事例を中心)の動向」と「韓国(親環境農業政策)の動向」をふまえて、日本との比較検討を行います。②最近の有機認証制度をめぐる国際動向に関して、特にIFOAM(アイフォーム:国際有機農業運動連盟)の「参加型保証システム(PGS)」を取り上げて検証します。
-------------------------------------------------------------------------------------- 【有機農業における政策展開の国際比較】
5月30日(日)
13:00 代表あいさつ 中島紀一 茨城大学 農学部
13:20 国際比較研究の視点と座標軸について
古沢広祐 国学院大学 経済学部
13:35 欧州の有機農業政策の動向(フランスを中心に)
石井圭一 東北大学 農学研究科
14:15 韓国の有機農業政策の動向
金氣興(キム・キフン) 東京大学東洋文化研究所
(汎アジア部門、日本学術振興会外国人特別研究員)
15:10 認証制度を巡る国際動向(IFOAMの参加型保証システムを中心に)
澤登早苗 恵泉女学園大学 人間社会学部
<質疑、討論>
15:50 全体討論・・・今後に向けて
17:00 閉会
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■発表内容の概要
研究会では、代表の茨城大学農学部の中島紀一先生から、これまでの経緯とプロジェクト全体に関する説明がありました。それに加えて、有機農業を取り巻く世界的な経済状況などについてのお話がありました。
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【国際比較研究の視点と座標軸】
続いて国学院大学の古沢先生から、ヨーロッパとアメリカを中心に成長を続けている世界の有機農業とオーガニック市場を巡る状況の紹介がありました。それを踏まえて、国際比較や今後の方向性を考える際の座標軸の説明、そして「これから何を目指していくべきなのか」についての提案がありました。
印象的だったのは、これまではヨーロッパやアメリカを中心に、大手スーパーマーケットチェーンなどの参入によって、国境を越えた市場流通の拡大が進んできましたが、これに伴う画一的市場拡大主義は必ずしもすべての生産者に利益をもたらしてこなかった側面もあるという指摘でした。開発途上国の小規模農家などがその代表です。そのことから、これからは例えばファーマーズマーケットや、消費者と生産者が直接つながる「提携」などの多元的な市場形成や非市場的な関係形成を重視していくことが重要ではないかと提案されました。報告の概要は以下の通りです。
<オーガニック市場の拡大と環境・安全・社会的公正>
・オーガニック市場の世界的な急拡大(北米と欧州の市場で約5兆円:2008年)
・有機食品分野の高い成長性(健康・環境・社会公正を求める消費者の増加)
・大手資本の参入と競争の激化(エコ商品、オーガニック商品、フェアトレード)
・小規模農家も参加可能な認証制度(参加型保証システム「PGS」)の必要性
・IFOAMの「社会的基準」(国際労働機関「ILO」の労働基準など)の紹介
<有機農業における制度化の動き>
1980年:IFOAM(国際有機農業運動連盟)「オーガニック基礎基準」策定
1988年:フランスで「有機認証制度」(検査・認証)がスタート
1990年:アメリカで連邦政府による「有機農業生産法」が成立
1991年:EUで有機農業認証基準(有機認証制度)が統一 (EEC/2092/91)
1992年:EUの「農業環境政策(環境直接支払い)」を制定 (EEC/2078/92)
1999年:コーデックス食品規格委員会(世界的なオーガニックの共通基準)
「欧州:政策的な支援体制(農業環境政策)→農地が10%近い規模の国も」
「米国:民間中心(ビジネスが市場を牽引)→有機農地はまだ0.5%だけ」
<世界史的な展開としての有機農業運動の座標軸>
・有機農業(環境保全型農業)の原型はアジアの農業
・1970年代から日本有機農業研究会が推進してきた「産消提携」運動
・欧米で広がる「CSA(地域が支える有機農業)」への継承(※URGENCI)
・これまでは→市場流通の拡大(画一的市場拡大主義「グローバル化」)
・これからは→「多元的な市場形成」「非市場的な関係形成」を重視(提携)
・IFOAMの『有機農業の原則(健康・環境・公正・配慮)』の推進を日本から!
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【欧州の有機農業政策の動向】
次に東北大学の石井先生からフランスの事例を中心に、順調に成長を続けるヨーロッパのオーガニック食品市場と有機農業に関する振興政策の動向について詳しい報告がありました。 とても印象的だったのは、1960年代に社会運動として始まったフランスの有機農業運動は「有機農業の認知」という目的をすでに「完全に達成した」という言葉でした。
そして、有機農業の普及と制度化は、慣行農業の持続可能性を向上させることに貢献しているとのことでした。このため、有機農業が生産者からも消費者からも尊重されて、財政的な支援の対象となっているそうです。そして、農業環境政策による環境直接支払い制度などの支援策が有機農業への転換や維持に貢献していることを改めて確認させてもらいました。
また、有機農業の振興政策の中で、生産面だけでなく消費面で有機食品の「需要の創出」についてもEUや国の役割として位置づけられていることを確認できました。フランスでも、1999年から有機農業やオーガニック食品の認知度を高めるためのキャンペーンが「消費者向けの情報普及対策」として、官民を上げて行われているそうです。報告の概要は以下の通りです。
<EUにおける有機食品・農産物の展開>
・EU諸国のオーガニック市場の占有率
3~6%以上:オランダ、ドイツ、スウェーデン、デンマーク、オーストリア
・オーガニック食品の購入場所(順位毎)
スーパー、マルシェ(市場)、有機専門店、農場、商店
・EU主要国のオーガニック食品売上高(順位毎)
ドイツ、イギリス、イタリア、フランス、スイス(独・英で約1兆円:2008年)
・有機専門店(ビオコープ:1986年~)の売上げ
329店舗、約550億円(前年30%増:2008年)
・EUにおける有機食品・農産物の展開
EUでは2007年に有機農業による生産面積が780万haに達している。これは、全農地の約4%にあたる。有機農産物やオーガニック食品の売上が約250億ドル(160億ユーロ:約2兆5千億円)に達した。
出所:『本来農業への道/持続可能な農業に関する調査プロジェクト2007年』
・EUにおける有機農業政策の体系
「EUの役割」:認証基準の制定、EU共通ロゴマーク、研究開発助成、販路開拓・需要創出 (加盟国への助成)、生産者助成(環境直接支払いなど)
「加盟国の役割」: 検査制度の運用(国)、研究・開発・普及(国・地方)、有機食品・農産物業界 の組織化(国・地方)、販路開拓・需要創出(給食なども:国・地方)、有機農業への転換・維持助成の実施(国・地方)
方法および生産物、食品の表示に関するEU規則」
1992年 環境直接支払いに関するEU規則(2078/92)採択「環境保護と田園の
景観維持の要件と両立する農業生産方法に関するEU規則」
・有機農業の推進に関する考え方(※EUのオーガニック行動計画2004)
「消費者ニーズに応える有機食品の流通販売は市場により評価されるべき
で、有機農業(市場)の発展は市場メカニズムによる」
「有機農業の原則に基づく農地利用は、環境保全や家畜福祉の向上、農村振
興などの公共財の供給に寄与(する)、このため有機農業の発展は社会が
推進すべき 」
・EU15カ国の環境直接支払い制度の取り組み
農業環境対策として支払われる環境直接支払いに関する契約面積は、国による格差が大きい。面積の多い順に、オーストリア、フィンランド、ドイツ、スウェーデン、イタリア等となっている。
・EU諸国の有機農業経営数と生産面積
環境直接支払いの契約面積と、有機農業の実施面積率を比べてみると基本的には相関関係が認められる。フランスの事例を考えても、有機農業による生産面積の増加に対する助成金の寄与は大きい。
<フランスに見る有機農業の制度化>
・フランス有機農業の系譜
1964年 自然と進歩協会設立(有機農業協会設立は1962年)
1980年 農業基本法「合成化学物質を利用しない農業」について明記
翌年の政令がその生産要件を規定
1988年 有機農業を公式名称とし、オーガニックロゴの使用には「有機認証
機関による契約細則の認可(検査・認証)」を義務化
1998年 フランス政府が有機農業振興5ヵ年計画を策定
・有機農業振興5ヵ年計画(1998‐2002)
背景:1980年代リードしたフランス有機農業の凋落
目標:2005年までに
有機農業経営 2.5万経営(農業経営の約3.8%)
有機農業面積 100万ha (農地面積の約3.6%)
措置: 1)有機農業への転換助成拡充
2)生産部門ごとの業界組織化支援
3)不正防止の強化、有機畜産の基準強化
4)農業専門教育における浸透、競争的研究資金
5)一般消費者向けの情報普及・啓発
・有機農業センターの取組と有機農業振興
「地域レベルのプラットフォームの形成」
1)農業者や技師に対する研究開発成果の普及
→啓発と技術力の向上
2)技術・経済的な経営モデルの構築
→①転換の際の助言指導の改善、②転換に伴う不安の解消、
③技術的制約の克服、④有機システムの経済性の向上
3)有機給食の支援
→①地域の販路拡大、②有機食品の付加価値化、③地域消費者の啓蒙
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【韓国の有機農業政策の動向】
石井先生の報告の後に、最初の質疑応答の時間がもたれました。EUの有機農業政策に関する興味深い報告に対して、様々な角度からたくさんの質問が出ていました。それに続いて、東京大学東洋文化研究所で日本と韓国の有機農業に関する研究を続ける金氣興(キム・キフン)さんから、韓国の有機農業と環境保全型農業を表す「親環境農業」について報告がありました。
韓国の有機農業は、1970年代なかばから先駆的な生産者団体(「正農会」や「韓国有機農業協会」など)の自発的な努力によって始まりました。その後、特に1990年代に入ってからは、政府主導で政策的な支援策の導入を含めて推進されてきたといいます。韓国では、有機農業と無農薬から減農薬までを含めた農業を、環境にやさしい農業の総称として「親環境農業」と呼んでいます。
気候条件が日本に近い韓国では、1997年に農業環境政策に近い「環境農業育成法」を施行しました。そして1999年には環境直接支払い制度が導入されました。2001年に「親環境農業育成法」が施行されて「親環境農産物認証制度」が導入されました。その結果、この10年間で有機農業と環境保全型農業を著しく発展させています。有機農産物の割合は、転換期間中もいれるとすでに全農地の約0.5%を占めるまでになっているそうです。
<1990年代から親環境農業政策の流れ >
1993年:農政に初めて「環境農業」を導入
1994年:農林部(農水省)に「環境農業課」の設置
1997年:「環境農業育成法」(1998年12月、実行)
1998年:農民、消費者、政府からなる「農・消・政審議会」を設置
「親環境農業元年」を宣言
1999年:親環境農業育成計画の策定
親環境農業直接支払制度の導入
2001年:「親環境農業育成法」に改正
親環境農業育成5ヵ年計画の実施
親環境農産物認証制度の施行
<親環境農産物の認証別種類と基準>
出所:韓国農林水産食品部「親環境農業育成法施行規則」
<韓国農業政策の方向: 「農業・農村総合対策」(2004)>
背景:93年ウルグアイラウンド交渉以降、本格的な開放体制に転換により国際
的に競争力を持つ農業を育成。2013年までの基本方向性を示す。
方向:①農業政策:市場志向的構造改編(大規模農家)、親環境・高品質農業
(小規模農家)の推進など
②所得政策:直接支払の拡大(価格支持⇒所得支持)、農外所得(ツー
リズムの活用や加工食品の開発)増大など
③農村政策:農業生産の空間⇒生産・定住・休養の空間への概念
財源:119兆ウォン投・融資(2007年の補完対策により2.9兆ウォン増額)
※直接支払い制度の拡大
①水田農業直接支払い、米所得補填直接支払い制度の改編
②親環境直接支払い制度(環境直接支払い)の強化
③条件不利地域直接支払い・景観保全直接支払い制度
予算比重:2003年9.4%⇒2008年22.6%⇒2013年22.9%
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【有機認証制度をめぐる国際動向】
最後に、ご自身も有機農業の生産者である恵泉女学園大学の澤登早苗先生から、世界の有機農業をリードしてきた国際NGO「IFOAM(アイフォーム:国際有機農業運動連盟)」のオーガニック基礎基準による有機認証制度の歴史が紹介されました。
IFOAMは、1980年に各国の有機農業団体のオーガニック基準と有機認証に関する現場で豊富に蓄積された経験をベースに「IFOAMオーガニック基礎基準」を策定しました。以来、「IFOAM基礎基準(有機基準を作るための基準)」は、世界各国の政府や有機認証団体による基準や検査システムを構築するための国際ガイドラインとして尊重されてきました。EUのオーガニック基準や「有機認証制度(EEC/2092/91)」を構築する際には、IFOAMのメンバーが中心的な役割を果たしました。また、「コーデックス(CODEX)食品規格委員会」が国際的なオーガニックガイドライン(国際基準)を策定する際にもIFOAM基礎基準が原案として採用されました。
一方で、オーガニックの検査認証にかかる手間や有機認証料は開発途上国の小規模生産者には経済的な負担が大きすぎて、その仕組みに参加できないという問題が起きていました。その対応として最近注目されているのが、生産者と消費者の協働による「参加型認証制度(PGS)」です。このPGSが、インドや南米、アフリカなどで広がっている状況について報告がありました。![]()
<IFOAM基礎基準をめぐる近年の動き>
1980年 「IFOAMオーガニック基礎基準」作成⇒“基準のための基準”
(オーガニック基準を作る際に参考にする基準)
1992年 「IFOAM認証団体認定指標」承認⇒“認証の同等性を確保”
(有機認証団体を認定するための指標)
1997年 「第3者認定組織 (IOAS) 」設立⇒“団体間の同等性”
(有機認証団体を認定する組織)
1998年: IFOAM基礎基準の対象を拡大
「有機生態系」、「養殖」、「繊維製品の加工」、「森林管理」
<開発途上国の農民支援>
2000年:「I-GOプロジェクト(IFOAM Growing Organic Project)」
アフリカに代表される開発途上国の有機農業支援のために、欧州の
開発援助団体から大型助成金を得て実施
2003年:「ローカル市場プロジェクト」
アジアやアフリカ等開発途上国を中心として有機農産物や有機食品
のローカル市場、マーケティング開発を推進。その延長として「参加認
証制度(PGS)」の導入を検討。
2004年:IFOAMがラテンアメリカ・カリブ有機農業運動団体と共催で代替認証
システムに関する国際ワークショップを開催
①開発途上国の小規模農家が国際的なオーガニック市場にアクセス
するためのグループ認証制度の整備
②ローカルマーケットの開拓:第3者認証不要な地域では利害関係者
による「参加型認証制度(PGS)」による質と信頼の確保を推進
<「参加認証制度(PGS:Participatory Guarantee System )」導入の背景>
・有機農業が持つ他面的な側面を評価できる
・生産者と消費者の協働による確認方法
・小規模農家、地域流通における認証経費の削減
・途上国では文盲率の高い(識字率の低い)国でも可能
・FAO(国連食糧農業機構)もPGSを推奨(2009年7月)
「参加認証制度(PGS)」:定義(2008年イタリアIFOAM総会で決議)
:PGSとは地域に焦点を合わせた品質保証制度である。PGSは利害関係者の積極的な参加に根差している生産者を認証する制度であり、信頼、社会的ネットワーク、知識交流の基盤の上に成立する。
<参加認証制度(PGS)のまとめ>
①国際流通のオーガニックビジネスの拡大
IFOAM有機農業運動における基準、認証、保証システムの変化
オーガニック基準・認証制度など第3者認証の普及(欧米先行)
⇒ 生産者保護のはずが生産者負担の増大
⇒ 有機農業の豊かさが伝わらない
⇒ PGS(参加型認証制度)への移行
②「地産・地消」、「ローカルマーケット」、「CSA(地域が支える有機業)/TEIKEI
提携)」への関心の高まり
⇒IFOAMがもうひとつの保証システムとしてPGSを普及。PGSは有機
農家や消費者の教育を通じた普及、有機農産物市場の拡大に有効。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・文責:Radixの会 郡山昌也
http://organic.no-blog.jp/
【10 からだをほぐす こころをゆるめる】
2010-05-31
からだをほぐす こころをゆるめる(第5回) 『腰のはなし③』
さて、東洋医学では腰のどこが痛むかによって、それぞれ腰痛を引き起こす原因が違ってくると考えます。
たとえば腰の右側が痛いのなら肝臓の疲れからくるもの、左の腰が痛いのなら胃腸の不調からくることが多いと考えます。
では、左右の腰が同じ様に痛むのなら原因は?というと、泌尿器の疲れまたは免疫系のトラブルと疑います。
仙骨といって、おしりの真ん中の平らな骨が痛いという人も多いものです。
その仙骨が痛い場合は婦人科の不調、あるいは自律神経の乱れからくる腰の痛みと考えます。
前の物を取ろうとしてかがんだ時に痛いのは何かというとストレスからくるもの、体が後ろに反らないのなら内臓の疲れからくるものと考えたりもします。
何か思い当たることはありますか?
この肝臓の疲れとか胃腸の不調という言い方をすると「えっ、病気なんですか?」と受け取られる方も中にはいらっしゃいますが、そうではありません。
他の臓器と比べて疲れている、がんばっているという程度のことで、病気なのでお医者にすぐに行かなければならないということではありません。
もちろん、肝臓の病気を実際にお持ちの方が左の腰から背中の痛みを訴えたり、腎臓の病気を持つ方がやはり腰全体の痛みを訴えることは私の施術所でもよくあることです。
東洋医学では体の内と外、つまり内臓と筋肉や骨格が密接な関わりをもつと考えています。ですからどちらかにトラブルが起きると関係のある所にサインが出てきます。
特に内臓の不調で筋肉や骨格に影響を与え、コリや骨格の歪みを引き起こし、体の痛みにつながると考え治療を行います。そこで東洋医学の治療では腰の痛みに肝臓の調整をしたり、免疫系の力を高める操作をすることがあります。
逆に実際に内臓にトラブルや病気を持つ方は、筋肉をゆるめて骨格の乱れを整えることによって内臓の病気を改善しようとも考えます。
では、少しでも腰の痛みを具体的に改善させるにはどうするのか?
それは次回にお話しさせていただきたいと思います。
(開音堂 姿勢保健均整師 中野史朗)
【01 農産活動報告】
2010-05-25
第39回日本農業賞 特別賞 受賞 参加レポート
4月15日、群馬県甘楽町有機農業研究会を訪問しました。
(甘楽町有機農業研究会は、会長の新井俊春さんを筆頭に、21名の会員さんが所属している生産者団体です。事務局は甘楽町役場にあります )
甘楽町有機農業研究会は第39回日本農業賞 特別賞 第6回『食の架け橋賞』 優秀賞を受賞し、22年度総会の後にその祝賀会も行われました。
総会が始まる前に、らでぃっしゅぼーや農産課の神保さんが生産者さんの農場の視察を行い、Radixの会もそこに同行してきました。
上は集合場所の甘楽ふるさと農園。民間の方が農地を借りて野菜作りが実践できる農園です。
左の写真は生産者と仕入れ担当の出荷計画についての大事な打ち合わせ。真剣そのものです。
圃場に出る前に神保さんからの連絡等行っています。今年は2・3月から気温、日照不足でタマネギやキウイ、好評だったオタフク春菊などへの影響が懸念されます。とはいえ、甘楽町有機農業研究会は出荷数も安定していて返品率も低く、文句の付け所がないそうです。すぐに打ち合わせも終わり圃場に出かけます。
まずは若き期待のホープ、野口さんの施設、圃場を見に行きます。 野口さんは後を継いで1年目の甘楽町有機農業研究会にも入ったばかりの新規就農者。
まずは原木シイタケを視察に。 ビニールハウス、栽培施設などを神保さんがチェックしていきます。 ![]()
原木にはドリルで穴を開けて、菌を植えつけている。写真はムカデ伏せと呼ばれる状態で、このときに木の中でシイタケ菌を繁殖させている。
野口家の愛犬。人類の友。
次は野口さんのタマネギの圃場へ。
1月に植えたそうだが葉先の枯れが目立ち、色も薄くなっている。全体的に育ちも悪いようだ。研究会会長の新井さん曰く、色が悪いのは苦土が足りていないのが原因。 ![]()
新井さんからアドバイスを受ける野口さん。まだ持ち直すこともできるかもしれないとのことでした。
2番目は会長、新井さんのハウスへ。 ![]()
病気の原因となるものは主に虫と雑草。ハウスの入り口に雑草が生えていればそこを通ったときに虫が自分の足に付き、それをハウスの中に持ち込んでしまう可能性があるためハウス周辺に抑草シートを敷いています。最低でもハウスの入り口には抑草シートを敷いたほうがよいとのことです。
ハウスのネットは網目の細かさが場所によって違っていて、側面は0.4mm、上部は0.8mmとなっています。トマト黄化葉巻病を媒介するタバココナジラミ対策にもなっています。
どれも立派に育ってます。上の黒いネットは出荷の前日に張ることで出荷時の野菜の温度を下げるためのもの。 細かい工夫で品質を上げています。 収穫で場所が開いたらすぐに次の作物を植えて回転率を上げます。 ![]()
ハウスの中にも防草シートで雑草を防いでいます。そうしてできたわさび菜は生でもおいしく安全に食べられます。
依田さんのタマネギの様子
1・2月は寒すぎるので、3月に植えつけをしたそうです。小さめの苗を南側に植えることで大きさのバランスを整える。チッソが多すぎたり、乾燥しすぎるとアブラムシがでるのでそこにも気をつけ、細かい気配りで大変元気に育っています。 ![]()
下仁田ネギ。生で見たのは初めてでした。
今年は苗の出来が悪いといっていたが、新井さんいわく苦土が効いていないとのことです。硫マグは水溶性で即効性があるので、苦土が効いてないときは使ってみるといいそうです。 ![]()
ここで圃場視察は終了。
総会、祝賀会の会場へ移動します。
夕方になってから甘楽町有機農業研究会総会が開催されました。 ![]()
事業報告、会計報告等が行われ、滞りなく総会は終了。
すぐに次の祝賀会へと移ります。 ![]()
日本農業賞は、JA全中、NHKが主催して、地域社会の発展に貢献している農業者と営農集団を表彰しています。その中でも食と農との距離を縮める生産者や団体の取り組みを「食の架け橋賞」として表彰しています。
祝賀会には甘楽町町長や教育委員会役員なども参加して『食の架け橋賞』 優秀賞の受賞を祝い、盛大な祝賀会となりました。
文章を書かせていただいた、研修生の高橋です。
今回圃場を見せてもらって一番気にかかったのはやはり新規就農者の野口さんでした。今年のタマネギは失敗だったみたいですが、すぐに新井さんや年上の生産者から助言がもらえる、大変良い環境にいるのではないでしょうか。さすがに同年代はいないようですが、東京から来たという新規就農者の方もいらっしゃいましたし、農村にありがちな(ような気がする)若い人や外から来た人たちを受け入れることができない、閉塞的な場所ではないのかと感じました。
こんな場所があればまだ人がいなくなってしまうということもないんじゃないでしょうか。新規就農者がいるというだけでなんとなく希望がもててしまいます。
甘楽町有機農業研究会は今年は残念ながら食の架け橋賞大賞を逃してしまいましたが、新しい若者たちを迎えてまたがんばってほしいと思います。
【01 農産お知らせ】
2010-05-24
小祝塾(北海道編)、北海道ブロック会議 開催のお知らせ
小祝塾(北海道編)、北海道ブロック会議開催のお知らせ
7月2日(金)~3日(土)、小祝塾(北海道編)と北海道ブロック会議を開催します。
2日の小祝塾では、午前に富良野の圃場視察、午後に視察をふまえての座学をおこないます。
3日の北海道ブロック会議では、らでぃっしゅ農産課による基準改訂の話や販売状況の話、Radix事務局からは今年度の活動報告、そして当日参加の皆さんとの意見交換など、盛りだくさんの内容です。
小祝塾とブロック会議がセットとなりますので、できるだけ多くの皆さんのご参加をお待ちしています。
※昨年の北海道ブロック会議の概要は → 北海道ブロック会議 報告
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開催日: 2010年7月2日(金) ~ 3日(土)
集合: 中富良野市 ふらのラテール前 9時集合
会場: ふらのラテール
住所: 北海道空知郡中富良野町東1線北18号 TEL 0167-39-3100
【7月2日(金)】
9:00~ 小祝塾 圃場視察編 (富良野の生産者の圃場視察をおこないます)
12:00~ 昼食
13:30~ 小祝塾 座学編
(圃場視察をうけて、小祝さんから具体的なアドバイス等をいただきます)
18:00~ 懇親会 (小祝塾終了後、ふらのラテールにて開催)
【7月3日(土)】
9:00~ 北海道ブロック会議
らでぃっしゅぼーや農産課より販売状況説明・基準改訂の話、
Radix事務局からの報告、参加者からのご意見・ご要望・
意見交換など
12:00 終了・解散
申込〆切: 6月11日(金)
参加費: Radix会員の方は無料、 Radix非会員の方は3000円
お問い合わせは・・・
Radix事務局(TEL:03-4334-3067、FAX:03-43344-3089) 成田・高橋まで
【01 農産アンテナ】
2010-05-24
農水省「有機JAS規格に関する意見交換会」
だいぶ時間が経ってしまったのですが、委員として参加させてもらった農水省主催の有機認証制度に関する会議についてご報告します。2010年2月9日(火)の14時から17時まで、農水省の第2特別会議室において「有機JAS規格に関する意見交換会」が開催されました。http://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/yuuki_iken_100209.html
日本には、有機食品の表示に関する有機認証制度(有機JAS制度:2000年~)があります。この法律により、国内で有機野菜・有機加工食品・有機畜産物等のオーガニック食品を生産、製造、販売する場合には商品に「有機JASマーク」を貼付しなければなりません。このマークを貼付するには、オーガニック食品の生産、製造、小分け(販売)、輸入に関わる事業者が有機認証団体(農水省の登録認定機関)による検査・認定を受ける必要があります。そして、有機食品を生産する方法を規定している生産基準は「有機JAS規格」に規定されています(以下は登録認定機関「JONA」の有機JAS情報へのリンクです)。http://www.jona-japan.org/laboratory/organization02.html
日本では、今年が「有機JAS法」施行から10年になります。「日本農林規格(JAS規格)」は少なくとも5年に1度は見直しを行うこととされていますので、「有機JAS規格」も見直しが実施されています。僕が参加させてもらった「意見交換会」には、消費者団体、マスコミ、有機認証団体、有機農家、小売や流通業者などの関係者が委員として参加しました。もうひとつの「有機JAS規格の格付け(検査認証)方法に関する検討会」には、有機農業や有機畜産に関わる生産者団体や加工メーカー、専門流通、有機認証団体など現場で有機生産と有機認証業務に関わる団体の関係者が参加して、有機資材のことや認証業務のあり方について数ヶ月ごとに議論を続けています(格付け検討会の議事録)。http://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/yuki_kentokai.html
■ヨーロッパ有機認証制度の歴史
日本では、2000年に有機JAS法と呼ばれる「有機農産物及びその加工食品に関するJAS規格」が施行されて、2001年に有機食品の検査認証制度が実施されました。2005年には「有機畜産物及び有機飼料のJAS規格」が制定されました。これは、1999年の国際的な「オーガニック基準(有機食品の生産、加工、表示及び販売に係るコーデックスガイドライン)」の制定を受けてのことです。「コーデックス(国際食品規格)委員会(本部:イタリア・ローマ)」とは、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が設置した、消費者の健康を保護し、食品の公正な貿易を確保するための政府間組織です(※以下はコーデックス有機ガイドラインの農水省による邦訳です)。
http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/codex/standard_list/pdf/cac_gl32a.pdf
ヨーロッパでは、1980年代からEU加盟各国の有機農業団体が自ら有機認証団体を作って、有機農業が環境に優しい農業であることや有機農産物やオーガニック食品の優位性に関して、自らの有機認証マークの宣伝活動を通じて消費者にアピールしてきました。代表的な有機認証団体は、イギリスのソイルアソシエーション(英国土壌協会)やドイツのビオランドやデメター、フランスのエコサートなどが挙げられます。これらの有機認証団体が有機農産物やオーガニック食品の安全面・健康面・環境面での貢献を消費者に対してPR活動やマーケティング活動、普及啓発活動を積極的に展開してきたことが原動力となってヨーロッパのオーガニック食品市場を盛り上げてきました。
まずは民間のオーガニックセクターが有機認証制度を通じて有機食品の普及啓発と市場開拓の努力をしてきたのです。そしてヨーロッパを中心とした有機農業団体の連盟として1972年に設立されたIFOAM(本部:ドイツ・ボン)は、上記のような構成団体のオーガニック基準と有機認証に関する現場で豊富に蓄積された経験をベースに、1980年に「IFOAMオーガニック基礎基準」を策定しました。 その後、オーガニック市場が発展するにつれて、有機表示のある商品が高く売れる状況になると、有機食品の偽装表示が横行するようになりました。そのような事態を受けて、消費者と生産者を守るために、EU加盟各国において法律で検査認証を義務付けるオーガニック食品の表示規制が導入されました。
このことは、1990年代に入ってEUレベルでも実現しました。それがEUオーガニック基準に基づいて1992年に施行された「農産物の有機的生産ならびに農産物及び食品の表示規則[EEC/2092/91]」です。この法律により、商品の生産過程がオーガニックであることを検査し、認証された生産物しか有機農産物と表示できないことになりました。そして、この有機認証制度による生産工程の保証が消費者のオーガニック食品に対する信頼を獲得して、オーガニック市場の急成長の後ろ盾となったのです。このオーガニック食品の表示規制の導入にはIFOAMが大きな役割を果たしました。そして、EUのオーガニック基準も上記の「コーデックス有機ガイドライン」もIFOAMの「オーガニック基礎基準」を参考として策定されました。IFOAMはコーデックス委員会の公式なオブザーバー資格を持ち、有機ガイドラインの策定過程からその後の定期的な改訂にも関与しています。
http://organic.no-blog.jp/weblog/2008/09/ifoam_8e4d.html
■有機JAS規格に関する意見交換会
前置きが大変長くなりましたが、検討会には、農水省から消費・安全局 表示・規格課長小川良介さん(当時)、同有機食品制度班課長補佐の島﨑眞人さん、有機農業推進法を担当する生産局の農業環境対策課から有機農業推進班 課長補佐の堀川昌昭さん(当時)と畜産部畜産規格課の野方博幸さんが参加されました。オブザーバーとしてオーガニックコスメやコットンを担当する経経済産業局繊維課の方なども参加されていました。また傍聴席には、有機農業に関わる生産者や加工メーカー、マスコミ関係者や研究者、有機認証団体の方などが列席されていました。
今回、検討会への参加の打診をいただいた時には、通常の会議のように「委員」という名前でしたが、より多くの人に参加をしてもらい、会議を公開のものとするために、意見を聞かれる委員は「パネリスト」という名称(位置づけ)になったようでした。この手の会議には関係者が傍聴できるパターンが多いのですが、今回は関心の高いテーマだけにかなりの応募があったようで、知り合いの有機農家の方は、「事務所の5人で応募してやっとひとり参加できた」と話されていました。何倍の競争率だったかはわかりませんが、マスコミの取材を含めて100人弱の参加者があったと思います。検討会に参加されたパネリスト皆さんは以下の通りです。
【パネリスト】
(社)栄養改善普及会 理事 粟生美世氏
消費科学連合会 井岡智子氏
(財)自然農法国際研究開発センター 認定事務局長 今井悟氏
(独)農林水産消費安全技術センター(FAMIC) 規格検査部長 植木隆氏
クレヨンハウス 代表 落合恵子氏
IFOAM(国際有機農業運動連盟) 世界理事 郡山昌也氏 (※Radixの会)
毎日新聞生活報道部 編集委員 小島正美氏
光食品株式会社 代表取締役社長 島田光雅氏
JA加美 よつば有機米生産部会長 沼太一氏
(特活)日本オーガニック&ナチュラルフーズ(JONA)協会 理事長 松本憲二氏
(特活)日本オーガニック検査員協会(JOIA) 理事長 丸山豊氏
主婦連合会 会長 山根香織氏
ワタミ株式会社 代表取締役会長 渡邉美樹氏
今回の「有機JAS規格に関する意見交換会」のテーマは以下の4つでした。
【課題1】「世界の先進国に比べ、日本の有機生産が伸びない理由は?」
【課題2】「2005年に導入した有機畜産物がほぼ生産されない理由は?」
【課題3】「有機JAS規格の名称の表示の規制は充分か?」
【課題4】「同等性認定について、今後どのように実施するか?」
検討会では冒頭に消費・安全局 表示・規格課長の小川良介さんから会議の趣旨の説明がありました。小川課長は、ヨーロッパなど海外のオーガニック事情にも通じていて、この間はEUとの「同等性認定」に関して尽力されてきました。それに続いて有機食品制度班課長補佐の島﨑眞人さんから、配布資料を使って①「有機JAS制度を巡る現状について」②「有機JAS制度における課題」について報告がありました。主な内容は以下の通りです。詳しい報告内容については、配布資料を以下のページから見ることができます。http://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/yuuki_iken_100209.html
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①有機JAS制度の現状については…
・日本の有機食品市場が非常に小さい(※以下、1ユーロ=160円で市場規模を計算:日本約150億円、ドイツ約8500億円、アメリカ約2兆1300億円、ヨーロッパ約2兆6000億円)。
・日本の有機圃場面積は非常に小さい(※全農地の0.18%:日本約9万ha、中国155ha、ブラジル177ha、アルゼンチン220万ha、ヨーロッパ776万ha)
・外国産の有機農産物が多い (※格付け量=輸入量ではない)
・外国産の有機農産物ではサトウキビの割合が高い(約7割)
・オーガニック加工食品は外国産と国産が同程度の量
・国内の有機畜産の現状(有機牛、豚、鶏)
・日本が有機農産物に関する有機農業認証制度を同等と認めている国
②有機JAS制度における課題については…
○2008年度の有機農業総合支援対策による「消費者調査報告書」から。
・消費者の有機JASマーク認知度はまだ低い。
・有機農産物を購入している消費者は、「値段が高い」「品揃えが少ない」と考えている。
・有機農産物を購入していない消費者も、「価格が高い」「どこで買えるかわからない」と考えている。
○2007年度「有機農業や環境保全型農業に関する意識・意向調査」から。
・流通加工業者は、有機農産物を「安全な農産物」、「消費者が求めるもの」と考えている。
・5割の農業者が有機農業に取り組みたいと思っている。
・農業者は有機農業を「環境に優しい農業」、「安全な農産物を生産する農業」とイメージしているが、「リスクが高い農業」とも考えている。
・農業者は、有機農業に取り組むには「生産コストに見合う販路の確保」と「収量、品質を確保できる技術の確立」が必要と考えている。
③それ以外の課題としては…
○有機畜産における認証と飼料に関する課題
○有機JASマークが付されていなくても『有機』の名称を表示できる
(規制の対象となっていない分野の商品について)
○外国との有機認証制度の「同等性認定」について
以上が報告の概要です。
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■パネリストたちからの意見
「有機JAS制度に関する課題」を簡単にまとめてしまうと、有機JAS制度が導入されて10年が経つが、リスクやコストが高く手間もかかることから有機JAS認証を受ける生産者がほとんど増えていないこと。当然、有機農業の農地も世界的に見てかなり少ない(全農地の0.18%:2008年)し、有機畜産も5年経ってもほとんど増えていないこと。その結果、オーガニック食品市場も、ヨーロッパやアメリカに比べると極端に小さいままであること。これが大きな課題です。この現状を受けて「では、どうすればこの状況は改善されるだろうか?」ということが、この検討会のテーマでした。そして、この課題について、それぞれのパネリストが意見を求められました。パネリストの発言は、栽培技術の研究のことや、認証制度のテクニカルな面での提案などを含めて多岐に渡りました。さすがに日本のオーガニックの第一線で活躍されている皆さんの説得力のあるものでした。詳しい内容は、リンクの議事概要にあります。以下には、僕が重要だと思ったことをご紹介します。
http://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/pdf/yuuki_iken_100209e.pdf
【消費者は有機JAS制度のことをよく知らない!】
パネリストたちからの意見のなかで、まず一番共通の認識として、有機認証制度が消費者によく理解されていないという声が大きかったように感じました。具体的には「有機食品の意味を知らない人が多い。」「有機(JAS)より無農薬栽培(や特別栽培)のほうがいいと思っている消費者がたくさんいる。」「有機認証制度(有機JASマーク)についてよく理解していない消費者が少なくない。」「有機JASマークには「有機」という文字がないから意味が伝わらない。」「有機JAS法と有機農業推進法では定義が違うから混乱が生じている。」などの声が上がりました。
委員からの意見には、「なんで有機が伸びないのでしょうか?ではなくて、国として本当に有機食品のマーケットや有機農業を広げる気があるかどうかが問題なのではないか?」とか、「民間として長年に渡って有機農業やオーガニック食品のよさを伝えてきているが、国は何をしてくれたのか?」という厳しい意見も出されました。つまり、“食品規格の表示規制”として違反した場合には罰則規制のある「有機JAS規格(有機JASマーク)」を導入しただけで、その表示(マーク)のついた商品のよさや有機認証制度の広報、有機農業のもつ価値などの普及啓蒙活動をほとんどしてきていないのではないか?ということです。
【国としても有機JAS制度の広報を!】
僕も、有機農業の業界で足掛け18年ほど働いていますが、オーガニック食品の生産を増やして有機農業を広げるためには、その価値を理解して買ってくれる消費者を増やすことが最も重要なのではないかと思っています。なので検討会の議論の中では、オーガニック市場を発展させたければ、国として導入した「有機JAS制度(有機JASマーク)」の積極的な広報と、美味しくて栄養価が高いオーガニック食品の普及・啓発やマーケティング活動を行って、消費者の理解を増進して需要拡大を図る必要があるのではないかと提案しました。それと同時に、有機農業の持つ「土壌や地下水・自然環境を汚染しない、地球温暖化の緩和、生物多様性の向上」など環境への貢献度、多面的価値を知ってもらうことの重要も付け加えました。もちろん、冒頭にご紹介したEUの事例ように民間のオーガニックセクターによるいっそうの普及啓発の努力が必要なことは言うまでもありません(以下は2009年に開催された有機農業推進委員会の報告です)。http://organic.no-blog.jp/weblog/2009/07/4_aa9d.html
僕が調べたり、友人たちに聞いた限りでは、ヨーロッパ各国では、1990年代に導入された有機認証制度の運用に際して、政府は検査認証制度による表示の規制を強化するだけでなく、消費者に対する制度(国の有機認証マーク)のPRを通じて有機農業やオーガニック食品の安全面・健康面・環境面での貢献を啓蒙してきました。政府機関が有機認証機関を運営するデンマークやオランダ、EUの有機農業をリードしたスウェーデンやドイツなどでは、国が予算をつけて、民間の有機認証団体とも協力して有機農業やオーガニック食品のPR活動やマーケティング活動、普及啓発活動を積極的に展開してきたことが、有機認証マークの認知度を高め、オーガニック食品市場を盛り上げてきたのです。(右側のマークはドイツ連邦消費者保護・食糧・農業省大臣が認定する「有機認証マーク(ビオ・ジーゲル(Bio Siegel):2001年~」。
【生産者を支援する環境直接支払い】
消費面では消費者の啓蒙が大切ですが、生産面では手間とリスクとコストが高い割には経済的な見返りのない有機農家を、財政的に支援することも大事です。今回のパネリストや傍聴者からも「環境への負荷を減らすために収入の機会を失った有機農家に対して、有機認証を条件に“環境直接支払い”で経済的に支援するべきだ」という意見が出されました。この点については、僕もこのブログでもずっと主張してきていることですが、改めて「EUの農業環境政策」と同じようにエコファーマーや特別栽培農家と有機農業を別に分けずに「環境への貢献度が高いほど補助が大きくなる環境直接支払い制度」の導入を提案したいと思います(これは検討会では時間が足りずに言えませんでしたが…)。別の言い方をすれば、これまで実施されてきた「農地・水・環境保全向上対策」を個人も対象とした、より環境への貢献度が高い農業により手厚い支援が行われる環境直接支払いに組み変えるということでもあります。
そうすれば、有機JAS認証を受けた有機農家だけでなく、「提携」や「宅配」などで有機認証を受けていないが有機農業に取り組んでいる農家や特別栽培農家の支援にもつながり、日本の環境保全型農業を大きく推進することになると考えるからです。環境保全型農業である無・低農薬野菜や減野菜(特別栽培農産物)の生産量が増えることは、全体で見たときに農薬や化学肥料の使用量を総量で減らすことができるからいいことだと思います。一方で、環境に対して最も負荷が小さく、地球温暖化の緩和や生物多様性の向上に最も貢献できる有機農業にも、もっと発展して欲しいと強く思っています。
※農業環境政策「環境保護と田園の景観維持のための要件と両立する農業生産方法に関する規則[EEC/2078/92]」この政策で、農薬や化学肥料の使用過多による地下水汚染や野生動物に対する悪影響などの環境問題を改善するために、生産者が休耕や粗放化生産や環境保全プログラムに参加することを条件に生産者に環境財を生産する為の費用を市場から切り離して直接補償金として支払うことを決めた。この環境直接支払い制度では被ったコストと放棄した所得が補償される。
【グリーンでオーガニックな産業の育成】
そして、IFOAMの最新の統計(2010年)によれば、2008年のヨーロッパのオーガニック市場規模は推計で約2兆6千億円を超えたといいます。アメリカも2兆3千億円を超えて、世界のオーガニック市場は5兆円に達したといわれています。このようにEU並みの約3兆円規模の市場が育てば、そこから潤沢な税収も期待できます。その意味では、例えば日本版「グリーン・ニューディール政策」などの一環として、環境にやさしい有機農業をグリーンなオーガニック産業として育成するという視点で、「環境直接支払い制度」の導入や「有機認証制度(有機JAS規格)の普及啓発活動」を産業政策として支援して欲しいと思っています。このようなことを検討会の最後に生意気ながらも提案させていただきました。
【2011年の有機農業発展を祈って】
会議に参加させてもらってうれしかったのは、日本の有機農業の発展の鍵を握る「有機JAS制度」の見直し検討会に、様々な立場で現場で汗をかいている関係者を呼んで、政府に対する批判も含めた意見を聞いてくれたことです。そして、この後も地方で4回も意見交換会を開催すること。有機JAS規格のわかり易い解説本を作ること。更に来年度からは原案作成過程を透明化して、政策形成をしていきたいと語ってくれたことです(以下はJONAの報告ページ)。 http://jona-japan.org/organic/organicnews/760
有機JAS制度ができて11年目の来年、できれば有機JAS規格に関する情報がこれまでよりも多くの消費者に伝わって、日本の有機農業とオーガニック食品市場が発展することを期待して報告を終わりたいと思います。大変な長文を最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
文責:Radixの会 郡山昌也
http://organic.no-blog.jp/


