農産畜産Blog

【01 農産活動報告】

2010-01-18

谷先生勉強会in札幌 開催報告 『家畜糞尿や堆肥を活かした土づくり』

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2009年11月22日、札幌にて北海道ブロックの土づくり勉強会を開催しました。
講師は大牧農場の五十川さんよりご紹介いただきました、帯広畜産大学の谷昌幸先生。

谷先生のご専門は土壌学・肥料学・農畜産環境保全学で、北海道各地の圃場で穴掘りをしながら
土壌中における有機物の機能や土づくり
などを詳しくご研究されています。
(※谷昌幸先生のプロフィールなどは帯広畜産大学の下記ページを参照 ↓
               
http://www.obihiro.ac.jp/ichiran/tani_masayuki.html

谷先生は生産現場の情報を大切にしています。
『現場で生産者の試行錯誤、トライアルを見させていただいて、そこからいかに科学的な根拠を持ち出そうということを常に考えています』
『次の世代にどのようにつたえていくか、経験や知識が頭にあってもなかなか次に伝わらない、皆さんの取り組みがどういう科学的な根拠、そのようなデータに裏付けられているかをクリアにして、わかりやすく組み立てていくのが我々大学側の使命と感じています』
このように生産現場からの情報を科学的にまとめあげて、わかりやすく現場にフィードバックしてくれる穴掘り大好きな先生です。
(日本はもちろん、世界各地で穴掘りをしながら土を調べているそうです)
 

それでは、勉強会の概要をお伝えいたします。

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「家畜糞尿や堆肥を活かした土づくり」 

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【谷先生】
堆肥の
発酵は水分含量だけではなく、酸素がきちんと通ることの方が重要。
(特定の微生物で発酵させることはあまり意味がない)

堆肥づくりには、「適切な酸素」+「土着の微生物」できちんと発酵させることが一番大切。

堆肥化するとミネラルを効かせることが可能となる。 
リン酸の肥効も上がる。
堆肥にくるまれたリン酸は植物に吸収されやすい。
堆肥中のリン酸の肥効は100%といってもさしつかえない。

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水分の高い原料だと好気発酵しないので温度は上がらない。
嫌気発酵して硫化水素などが発生して臭くなる。

水分調整(※水分75%)したら、発酵が進み温度も上昇。
ポッド試験では水分調整して発酵させた堆肥施用した方が生育が良い(※生堆肥を入れた方は生育が悪い)

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北海道では生堆肥が圧倒的に多い。
生糞の処理はどうにもならないのが現状。
どうにかするのをやめて、そのかわり土の上に撒布する。
生糞を土の中にはいれないで活用し始めたのが「土ごと発酵」。
(※「土ごと発酵」の取り組みは現代農業の記事になっています)

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硝酸態チッ素は微生物の反応をうけていろいろ変化する。
畑の場合は硝酸化成によって硝酸態チッ素になるのが自然。 
作物の中にはアミノ態チッ素を吸収できるものもいるが、基本的な植物は硝酸態チッ素が大好き。
硝酸態窒素を取り込んで光合成産物とあわせて、アミノ酸やタンパクを合成する。

畑の中ではほっておいても硝酸になるのが自然の摂理。
忘れてはいけないのが硝酸菌も生きていると言うこと。
硝酸をつくることでエネルギーを獲得し彼らも生きている。
彼らを土の中から排除する必要はなにもない。

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硝酸が悪いと説明される方が増えている。
糞尿だろうが魚粕だろうが化学肥料であろうが(最後に硝酸になるのは)一緒。
有機態チッ素やアンモニア態チッ素がだんだんと硝酸化成作用をうける。
できた硝酸を作物が吸収する。なにも悪くない。

アミノ酸を吸収できる作物もあるが多くはない。
昨年フィンランドに行って森の土の調査をしてきた。
真っ白な土で、ロシアにもある酸性の砂。
そこでりっぱな作物が生育している。かれらはアミノ酸を吸える。
なぜアミノ酸を吸えるようになったか?
アミノ酸が無機化するのを待っていたら他のものに取られてしまう可能性がある。だから戦略的にアミノ酸を吸えるようになったのかもしれない。

糞尿中のタンパク質(腸内細菌のかすなど)がだんだんとアンモニアになり、亜硝酸になり、硝酸になるというのが普通の流れ。
糞尿を入れることで出てくる硝酸は悪くない。 
土の中にはいろいろなタイプの有機物がある。
これが大事。

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土壌微生物が硝酸やアンモニアなどを取り込んだバイオマスチッ素がある。
有機栽培圃場のバイオマス(※微生物量)は慣行区よりも圧倒的に高かった。
バイオマスがチッ素や養分の貯蓄源になっていることがポイント。
土のもともともっている機能は「ものを蓄える」こと。
「保持する力」だけではダメで「離す力」も必要。

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バイオマスがないと、一方通行でおわってしまう。
バイオマスがあると、土壌中にプールされてぐるぐると回る。
バイオマスチッ素のプールがあって、かつ窒素が取り出せるプールであることが大事。
これが「土づくり」だと思っている。

良い土は「貯める力」と「出す力」を両方持っている。
良い土というのは何もしなくても上手にやってくれる。
その機能を高めることが一番大事。

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「腐植」は大事な成分。
この堆肥はどんな成分を含んでいるのか、どんな機能をもっているのか、どんな土に入れるのか、どんな土にあうのかを明確にする必要がある。
なんとなく堆肥を使うだけでは後世に伝わっていかない。

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日本の黒土(黒ボク土)と世界の黒土(チェルノーゼム) 
チェルノーゼムは非常に肥沃土が高く、肥料なしで小麦をつくれる。
黒ボク土は本来はやせた土。

同じ黒いのに何が違うのか?
土壌有機物は両方とも高い、土壌生産性も両方とも高い。
しかし土壌肥沃度がまったく違う!

黒ボク土は安定化した腐植物質を多量に含む。
含まれているコロイド成分(腐植・アロフェン・イモゴライトなど)によるリン酸固定力がきわめて大きい。
一番の問題は化学性で、微量要素の含有量や供給量が低い。
植物が吸える状態になっていない。

十勝もほとんどが黒ボク土。
何が問題になるかというと、やはりリン酸。
土壌にリン酸が固定化されて効かないリン酸となりやすい。 

黒ボク土になぜリン酸がくっつくのか。
アロフェンなどとイオン吸着しているうちはいいが、配位子交換反応によって固定化されるとちょっとやそっとで植物が吸収できない。
化学的にがっちりと吸着されてしてしまっている。

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燐鉱石の枯渇と高騰の問題。
日本はほぼ100%輸入に頼っている。
50~60年たつと今の技術で掘り出せる燐鉱石が枯渇するとも言われている。

1990年半ばからアメリカが燐鉱石の輸入をストップ、中国も出さなくなってきている。
輸出する国が少なくなり、燐鉱石の質も悪くなっている。
(※リン含有量が少なくなる、カドミウムの含有量が高くなる、
     リン酸肥料のカドミウム含量が高くなる、さらに放射性元素も増えてくる) 

根に定着するようなリン酸溶解菌。
土全体に入れるのではなくて種に付着させる、あるいはポットに入れる。
根面に定着させるか、ポットに入れるか、微生物を効果的に利用するにはそうするしかない。

もう一つの考え方は、土の中のリン酸溶解菌の活用。 
土の中にいるリン酸溶解菌をなるべく選択的に増やした方が、外から良い菌を入れるよりもよい。

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どうしても堆肥にならない生糞を、土の微生物の餌にしてしまおうと考えた。
生堆肥は絶対に土の中にすき込まないというのがポイント。 
大事なのは酸素がある状態で微生物の餌にしてしまうこと。
微生物が糞の中に入っているタンパク質や繊維をどんどん分解していく。
その過程でアミノ酸、硝酸、各種有機酸ができる。

いろんな微生物が増える中で、有機酸を出す微生物が絶対に増えてくる。
特定のリン酸溶解菌を増やすのではなく、土着微生物を増やしたほうがいいんじゃないかという発想。

表面に、糞とエン麦と麦かん、森の土層に似たようなものをつくって、雪解け水と一緒に(有機酸を)土中に流す、これが「土ごと発酵」。 
大事なのは土の表面でやること。

森の中では糞が土中に入っていることを見たことがない。
全部土の上にある。自然
はとてもうまくできている

生糞をただ入れればいいというわけではない。
有機酸や機能性成分をどのようにうまく使うかである。

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硝酸態チッ素があるところに炭素が入ってバイオマスとなり、硝酸態チッ素がバイオマスを通じてぐるぐると回ることが重要。
硝酸態チッ素ができて終わりではなく、バイオマスチッ素となってぐるぐるとまわっている状態が普通。
動的な平衡となっている。

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耕地以外の自然界では有機体のリンがぐるぐる回っている。
葉っぱなど有機物から溶けたリンがぐるぐる回っている。

不足しているリン酸は土壌の鉱物から溶け出てくる。
自然界では土壌中の鉱物中のリン酸が徐々にでてくる。

しかし畑の中のリン酸と比べると圧倒的に少ない。
可給態リン酸を測定してもほとんど入っていない、検出できないぐらい少ない。
(検出されないが)実際は有機体リンという形でぐるぐる回っている。 

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キレートの再確認、キレートとはギリシャ語でカニのハサミのこと。 

大学院生の時、森の中の有機酸の研究をずっとやっていた。
森の中に有機酸がどれぐらいあるのか、どういうふうに変化していくのか。
(有機酸を外部から投入するより)有機酸を増やす米ぬかを入れたり魚かすを入れた方がよい。
それをえさにする微生物が発酵することでキレート物質が出てくる。
 
土にカビが生えることがよくないと考えている生産者が多い。
一時的に生えるカビはは全く問題ない。
キレート物質、クエン酸、リンゴ酸といったものはカビが作る。
畑の土というのはカビが少なく細菌が多い。
森の土はカビが多く細菌が少ない。

土ごと発酵、春になるとどうなるかというと、カビでびっしりになる。
カビが有機酸をつくってくれる。
カビがある程度繁殖したあとに、カビを分解する放線菌、さらに放線菌を分解する細菌が繁殖し、そしてまたもとにもどる。
カビをはやすことは有機酸類をつくることに有効。 
 
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おなじ場所の森と畑では、森の方がキレート力が高い。
畑の土はものを溶かしだしたり運ぶ力が弱っている。
堆肥を連用している圃場の方がキレート力は高い。
キレート力は畑でも変えられる。

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アロフェンにリン酸が吸着しているところに、シュウ酸などがあるとリン酸と置き換えてリン酸を溶かし出す働きがある。
シュウ酸で溶かし出すという働きを持っているのがソバという植物。
だからソバは痩せ地でも育つ。
同じような機能をもつ作物としてアブラナ科の一部の作物がある。

外部からシュウ酸を入れる、クエン酸を入れる、これは効果の薄いやり方。
土の中に入れるとほとんどのシュウ酸、クエン酸、あっという間に分解される。
根っこまで届かない可能性がある。
シュウ酸やクエン酸を増やす土作りをちゃんとやったほうがいい。
 

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土壌中にリン酸とクエン酸を同時に入れると、リン酸だけの時に比べて土壌吸着が半分ぐらいに抑えられる。
クエン酸があるとリン酸が土にくっつきにくくなるので、それだけ植物が吸いやすくなる。少ないリン酸でも効率よく吸収させることができる。

先にリン酸を入れてからクエン酸を入れてもリン酸は土から離れない。
先にクエン酸を入れてからリン酸を入れた方が吸着が少なくなる。
土中にキレート物質がたくさんある状態の土のところに施肥をするからリン酸の効きがよくなる。
あとからクエン酸をまいてどうにかしようと思っても遅いし、効果もうすい。

有機酸を出す菌を入れるのではなくて、土の中にもともといる菌を増やす方法を考えた方が早いし楽。
カビをはやすような土作りをして有機酸をだすような方法も一つの方法。
もっと簡単な方法として、堆肥を活用することでリン酸を吸わせることができる。

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チッ素をカリを十分に与えて、リン酸を徐々に入れていくとリン酸施用量が多くなるほど生育がよくなる。リン酸が少ないと生育しない。 

リン酸は入れた量の10%ぐらいしか吸収されていない。
残りの8~9割は土に吸着されている。 

堆肥中には溶存腐植酸という物質がたくさん入っている。
これらがリン酸を守ってくれる。
少量のリン酸を堆肥でくるんでいれた場合、同量のリン酸だけを入れた時に比べて圧倒的に生育が良くなる。リン酸の吸収効率も格段にアップする。

リン酸を守ってくれるキレート物質が土中に大量にある条件をつくっておくこと。
それができない場合、堆肥にリン酸を入れることで使えるリン酸源として使うこと。

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日本の土壌のように鉱物表面にアルミが露出していると、銅・亜鉛・鉄イオンなどがくっつく。
アルミがマイナスの電気をもっているので、プラスの電気をもったマグネシウムイオン(交換性マグネシウム)がイオン結合する。
亜鉛とか銅とかは配位結合、リンと同じでがちっと結合してとれなくなる。
亜鉛や銅などのミネラルを挟み込んでとれなくする。入れても効かない。

水に溶ける腐植と亜鉛がキレートをつくるとアルミにくっつかなくなる。 
ミネラルは、いかに効かせるかが大切。
ミネラルが効くような土の状態をつくる方法を考えた方が合理的。
自然界もそのようになっている。
たんに入れるのではなく効かせる形でいれることで、ミネラルの吸収も大きく変わる。

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小麦に銅欠乏がでる場合、硫酸銅の施用がすすめられる。
しかし硫酸銅をそのまま入れても効かないということは実験でわかっている。
(土に入れて1時間以内に99.9%の銅が土に吸着されてしまう。黒ボクの場合、  1時間
以内にくっついて、かつイオン交換できる形でくっついているのは5%しかない。残りの95%は配位結合でがちっと結合している)

そこで堆肥の中に硫酸銅を入れて、堆肥に守ってもらう。
結果は堆肥と銅を一緒にいれた方がきちんと生育する。

堆肥をつかうと銅だけでなく亜鉛の吸収も抜群によくなる。
普通は拮抗作用が認められるが、マンガンの吸収も上がる。鉄は微妙。
なおこの実験ではきちんと発酵させた堆肥を使用した。
この点が先ほどの土ごと発酵とはちがうところ。 
(※きちんと発酵させることで腐植物質の含量が多くなっている)

堆肥の中に黒い腐植物質が含まれている。
水にとける腐植物質。ここがすごく大事なところ。
水に溶ける腐植物質がすごく大事だということが最近わかってきた。

堆積1ヶ月後と12ヶ月後の堆肥の水抽出物の比較では、12ヶ月後の方が真っ黒。 この黒い水の正体は腐植酸。すごい機能性成分をもっている。
良い堆肥をつくることはすごく大事。

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(成田注:堆肥の
機能性についての詳細な説明が以下に続きますが、堆肥の機能性についての部分は未発表データも含まれていることもありブログ上では割愛させていただきます) 
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良い土とはほうっておける土。
ある程度、環境変化に対して自立性の高い土をつくっていくことが本当の土づくりかなと思う。
いろんなところを科学的に証明していきたいので、皆さんから現場のヒントをもらえれば助かります。

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以上が谷先生の勉強会の概要です。
「家畜糞尿や堆肥を活かした土づくり」 の話、とてもわかりやすい内容で新しい知見が多く、参加者もおおいに刺激になったと思います。
特に良い堆肥が持っている水溶性腐植の機能性についての話は驚きの内容でした。あらためて堆肥のすごさを再認識しました。
堆肥の活用と土づくりに役立つ谷先生のご研究、これからも成果発表を楽しみにしたいと思います。

(Radix事務局 成田)


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