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【02 畜産活動報告】
2009-06-18
〔02 畜産活動報告】 第4回畜産合同会議 in 四賀 開催報告<ダイジェスト版
近年、畜産飼料用穀物の価格高騰や鶏インフルエンザへの対応など、畜産業界を取り巻く環境は大変厳しいものとなっています。また、2005年に制定された有機畜産JAS認証への対応、non-GMO飼料の代替生産国開発や国産飼料(飼料米)への取り組みなど、今後の畜産業界を考える上で早急かつ継続的に取り組まなくてはならない課題も山積みの状況です。このような背景がある中、長野県松本市四賀地区(旧四賀村)にて第4回・畜産合同会議は開催されました。
本会議には、かつて村長として四賀地区の地域循環型農業実現に尽力された、会田共同養鶏組合の中島理事長を筆頭に、安心・安全を軸とする畜産業の礎を築いてきた、そうそうたるメンバーが集結。四賀地区の視察に始まり、日本農業に各種提言をされている株式会社農林中金総合研究所特別理事・蔦谷栄一氏のセミナー、関係者による原状報告・意見交換などが行われました。ここでは、その様子をかいつまんでご紹介します。
※会議の詳細につきましては報告書を作成し、関係者全員に配布の予定です。
会議参加者以外で報告書(A4版24P予定)をご希望の方は、Radixの会・後藤までご連絡ください。
<会議概要>
◆開催日:2009年6月5日(金)~5日(土)
◆会場:長野県松本市四賀地区(旧四賀村)
◆参加者:65名 ※スタッフ含む
◆主催:Radixの会、らでぃっしゅぼーや株式会社、会田共同養鶏組合![]()
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1-四賀地区(旧四賀村)・視察 ----------------------------------------------------------
本会議の舞台となったのは長野県松本市四賀地区。四賀地区は2005年に松本市に編入されましたが、それ以前より「エコビレッジ四賀」をスローガンに掲げ、有機、地域循環型農業を官民一体となって実践してきた地域です。その取り組みは全国の農村が抱える問題を打破した具体的事例として注目され、視察依頼も後を経ちません。1998年には財団法人あしたの日本を創る協会からふるさとづくり大賞・内閣総理大臣賞を、2004年には農林水産省有識者会議による「立ち上がる農山漁村」に選定されるなど、数々の受賞歴からみても、その先駆性は歴然。本会議のテーマのひとつに、「畜産農家が地域循環型農業の一端として潤滑に機能するために、何をすればいいのか?」という課題もあったことを考えると、まさに四賀地区は今回の舞台にふさわしい地であったといえます。
“ゆうきの里・四賀地区”の取り組みが凝縮された、
JAS認定の畑で、もぎたてキュウリに感動。
最初にお邪魔したのはアルプス自然農場のハウス。四賀地区の地域循環型農業の一端を担う存在です。当日はちょうど初なりキュウリの出荷日。「どうぞ、遠慮なく召し上がってください。除草剤や農薬は使っていませんから、そのままどうそ。」とアルプス自然農場のスタッフさん。そのみずみずしさと濃い味に感嘆の声を上げる人も。キュウリのお供にと味噌も用意されていましたが、むしろ何もつけずにキュウリ本来の味を味わいたいと思わせる出来は、お見事の一言に尽きます。このように、四賀地区で有機農法を実践する農家は決して特別な存在ではありません。駆け足での見学となった水田には当然のように合鴨の小屋があり、忙しく泳ぎ回る合鴨の姿が見られました。聞くと四賀地区で合鴨農法に取り組む農家は49件もあるとのことでした。
キュウリを間近で見ようと、思わずしゃがみ込む人も。
連綿と続く水田には、風にそよぐ苗が並びます。
自分たちが使う堆肥は自分たちで作る。
“ゆうきの里・四賀”を支える、松本市四賀堆肥センター。
松本市四賀堆肥センターは四賀地区の畜産農家などから出される厩肥や生活汚泥を集め、良質な堆肥へと転換するための施設。有機を柱とする四賀地区の農業には必要不可欠な存在です。敷地面積は16,000平米、1日の処理能力は40.5トン、1年に生産できる堆肥の量は3,224トンにもなります。堆積発酵方式で作られる堆肥は、1次発酵に30日、2次発酵に60日、さらに熟成に30~60日、トータルでは120~150日という長い時間を要しますが、土が柔らかくなり、糖度が増しておいしい作物ができるとして、四賀地区の農家だけでなくクラインガルテンの利用者からも愛用されています。厩肥をいかに有効活用するかは、畜産農家なら誰もが気になるところ。質問も次から次へと飛び出していました。ちなみに「福寿有機1号」という商品名で販売されているこの堆肥。長野県堆肥共励会『優秀賞』を2年連続受賞も果たしたというから驚きです。
日本版・滞在型市民農園の先駆けとなった
緑ヶ丘・坊主山クラインガルテンへ。
四賀地区の代表的施設と言えば、滞在型市民農園・クラインガルテン。休憩や宿泊のできる小屋(ラウベ)で過ごしながら、小屋と共に提供される畑で花や野菜の栽培を楽しめるため、自然や農業に興味を持つ層から注目を集めています。四賀地区のクラインガルテンは日本における先駆けとして有名で、現在は坊主山に53区画、緑ヶ丘に78区画があり、募集のたびに応募が殺到するそうです。その人気を支える理由のひとつに、地域住民が利用者に農作業などのアドバイスを行う「田舎の親戚」制度というものがあります。この制度は利用者に好評なだけでなく、地域住民と利用者の交流のきっかけとなり、地区の活性化に一役買っているのだそう。また、花や野菜の栽培は有機農法で行うというルールも。地区外から招き入れた人も、地域循環の中に取り込む仕組みの在りようは、今後の循環型農業を考える上での重要なヒントとなるだろうと予感させるものがありました。
クラインガルテンの説明を行う会田共同養鶏組合の中島理事長。
三角屋根の建物(ラウベ)を拠点に利用者は四賀地区での時間を過ごします。
大型自家配合飼料施設の規模とシステムは圧巻。
non-GMOトウモロコシ配合実演に驚嘆の声も。
視察のトリを飾ったのは、本会議の主催にも名を連ねている会田養鶏共同組合でした。一番の見所はなんといっても、日本でここにしかない大型の自家配合飼料施設。当日は、non-GMOトウモロコシを使った飼料の配合実演も行われるとあって、参加者のテンションも自然と高まっていたようです。降りしきる雨の中、大型トラックの荷台から配合機械へと流し込まれるトウモロコシ。その瞬間を捉えようと、思わず近くへと走りよる参加者も。1976年に開設したこの施設は、100トンサイロ10本を擁し、月産1000トンの稼動にも対応。トウモロコシだけでなく、飼料米の配合も可能です。現在、Radixの会を中心にチャレンジが進んでいる、アジア(ミャンマー)産non-GMOトウモロコシを使った配合飼料のテスト生産も、この施設で行われる予定となっています。
大型トラックから機械に移されるトウモ視察の様子を長野放送さんが取材に来られました。
2-蔦谷栄一氏セミナー 「食と農・畜産の再生戦略」-----------------------------------------
今回の畜産会議の目玉企画であったのが、株式会社農林中金総合研究所・特別理事である蔦谷栄一氏のセミナーです。講演のテーマは「食と農・畜産の再生戦略」。蔦谷氏は持続的循環型地域社会形成論、特に環境保全型農業、都市農業、地域資源といった分野を専門に執筆や各地での講演活動を精力的に展開。国内・海外問わず農業の現場に積極的に赴く、自らの手で自然農園を営むといった、フィールドワークをベースとした独自の活動を行っておられます。その理論と提言には現場を知る人だからこそ導き出せる鋭さと深さあるとして、多くの農業・畜産関係者が注目。セミナーには参加メンバーのほかに、会場となった会田共同養鶏組合スタッフも詰めかけ、大盛況となりました。
<蔦谷栄一氏・プロフィール>
1948年生まれ。宮城県出身。1971年に東北大学経済学部卒業し、農林中央金庫に入庫。数々の役職を務めた後、1996年に株式会社農林中金総合研究所の基礎研究部長に就任。農業部副部長、常務などを経て、現在、特別理事職。同時に早稲田大学非常勤講師、国際農林水産センター顧問なども務める。
◆著書
持続型農業からの日本農業再編(日本農業新聞)、エコ農業~食と農の再生戦略~(光の家協会)、海外における有機農業の取り組み動向と実情(筑摩書房)、日本農業のグランドデザイン~地域社会農業のネットワークで田園都市国家をつくる~(農林漁村文化協会)他多数
畜産農家が切実に感じている厳しい現実と
日本農業に対する蔦谷氏の憂いが重なった、1時間半。
「日本の農政・農業を思うと、鬱々とした気持ちになる」セミナーが挨拶から本編へと移行した時、蔦谷氏からこのような言葉が飛び出しました。日本の農政には具体策がない、あらゆる施策が対処療法的だと。特に蔦谷氏を憂鬱にさせる3つの原因として語られたことは、畜産農家が常日頃感じている不満・不安と驚くほど重なっていました。
1つめは、日本農業の全体像が見えてこない。この背景には行き過ぎた消費者重視があるのではないかと。2つめは、消費者と生産者の関係を再構築する時期であるにも関わらず、地方への目線がかけているのではないかと。そして3つめの憂いは、大手町主導の政治。紋切り型に数字で物事を決め、自らの利権を守ることを優先する官僚の在りようが、畜産業界、日本農業の発展を阻害しているのではないかと。蔦谷氏の言葉に、深くうなずく人、目を閉じて蔦谷氏の言葉を反すうする人も。会場を包み込んだ真剣な空気は、畜産業界がいかに切迫した状況に置かれているかを、如実にあぶり出したのかもしれません。
セミナーはさらに、中国やヨーロッパの国々の実情、蔦谷氏が考える農業の要素と日本農業のあるべき姿、動物福祉の重要性、グランドデザインを描くことの大切さなどへと発展。このセミナーから、多くの気づきを得られた参加者も多かったのではないでしょうか?
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会場は満員御礼。セミナーに対する期待の高さが伺えます。
3-畜産会議(参加者による原状報告と意見交換)-------------------------------------------
視察、セミナー、そして懇親会。盛りだくさんのイベントに追われた畜産合同会議1日目。2日目は前日のハードスケジュールをものともせず、朝8時からの畜産会議で幕を開けました。懇親会終了後も遅くまで論議を戦わせた参加者も多い中、皆さん元気いっぱい。朝からハイテンションでの報告と意見交換が繰り広げられました。
この会議で元々予定されていた報告は3つ。Radixの会と生産者がタッグを組んでトライしている、アジア地域でのnon-GMOとうもろこし輸入代替国開拓に関する進捗報告。現在、有力候補として名前が挙がっているミャンマーへの視察結果を中心に、パシフィックトレードジャパンのペイソー氏にご報告いただきました。また、制度との距離感をどのように保つか生産者によって意見の分かれることも多いオーガニック畜産の実情については、オーガニックチキンの商品化実現などを通じて、この分野を牽引してきた共栄ファームの中村氏が発表。自らの豊富な体験から導き出した方法論と信念は、さすがパイオニアと思わせる説得力に満ちたものでした。また、らでぃっしゅぼーやからは、上原食品課長が登場。飼料を取り扱う大手商社の動向、関係者間でのコミュニケーションのあり方、さらには自社、商品のブランド価値を高める際に自分たちがとるべき戦略などについて、熱く語られました。
さらに、参加者から原状の取り組みや目指したい方向、どのようなスタンスで消費者や農政と対峙していくかといった意見が次々に出され、情報共有と同時に大いに刺激しあえる会議となりました。
データや写真を中心としたスライドを交えて報告を行うペイソー氏。
共栄ファームの中村氏。オーガニック畜産を切り開いた立役者だ。
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でぃっしゅぼーやからは上原食品課長が代表として報告。
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「家畜は生き物だから常に目を離せない。たった一日現場を離れることさえ難しい仕事です。だからこそ、これだけ多くの畜産農家が集まれたのは、本当に画期的で凄いこと。」と語った、ある生産者。畜産業界の重鎮と呼ばれる面々が一堂に会した今回の畜産合同会議は、常に新たな方向を模索し続ける畜産農家の強い想いが大盛況という結果を引き寄せました。楽にやり過ごす道があると分かっていながらも、自分の信念を貫き通そうと、あえて厳しい道を歩み続ける畜産農家と共に、らでぃっしゅぼーや、Radixの会といった生産者と消費者をつなぐ組織が担わなくてはならない役割は決して小さなものではないはずです。また、消費者も商品を享受するだけでなく、日本の食糧事情と真剣に向き合う時期に来ているのではないかと、改めて痛感させられた2日間でした。
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※取材 ライター 小川 恵
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