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【01 農産活動報告】
2008-12-15
第3回 『めだかの学校』 ~新井塾~ 開催報告
11月14日(金)、群馬県甘楽町(かんらまち) のJA甘楽富岡甘楽支所2F会議室。
70名を超える参加者の視線は、病気になった野菜の写真などに注がれていた。
写真の傍らで熱心に説明するのは、地元で有機農業を営む甘楽町有機農業研究会会長の新井俊春さんだ。
― トマトに“青枯れ病”が発生したがどうしたらよいか? という質問に対して ―
「病気が発生する要因は3つあります・・・」
「青枯れ病が出ているということは、土の中の病原菌(=細菌)密度が非常に高いということです。しかし、病原菌の密度が高くなっただけでは青枯れ病にはならないのです・・・(以下略)」
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Radix農産部会では、昨年から『めだかの学校』~新井塾~ を開催している。栽培技術に定評のある新井さんを講師に迎えた勉強会(技術交流会)だ。
日頃から生産者同士の技術交流を深めたいと考えている新井さんも、自身の持つ有機栽培技術や栽培上のノウハウなどを惜しみなく公開。
そのお陰で、地元群馬県はもちろん、近県からも新規就農の若手生産者が多数参加するほどだ。
新井さんの話は多岐にわたり、その内容も非常に濃い。
ぼーとしていると話についていけなくなるので、参加者も真剣そのものだ。
(らでぃっしゅぼーやの潮田さんのブログにも書いてあるとおり、居眠りしている人がいない!)
ちなみに、今回も『ゆうき伊賀の里』の福広博敏さんと研修生達が参加されている。
福広さんは、三重県名張市で中部・関西地域の生産者を対象とした生産者技術交流会「福広塾」の講師をしていただいている、西の代表生産者だ。
新井さんと福広さん、実は東西でお互いに刺激しあっている生産者仲間だ。
(福広さんは、現代農業2009年1月号の巻頭特集「2009年堆肥栽培元年」にも紹介されている。)
新井さん自身は、トマト・キュウリ・野沢菜・その他葉菜類などを有機栽培しながら、農薬を使用せずに高品質の野菜をつくるには、どうしたら良いのか?と常々考えている。
もちろん、消費者にとっては「おいしい」ことも必要条件なので、そのあたりのさじ加減も忘れていない。
今回、新井さんは「おいしくて、病害虫に強い野菜づくりをめざして」という切り口で資料のテキストを作成した。
資料の準備をしながら「栽培作物にあった土づくり」と、「問題になりそうな病害虫について詳しく知る」ことが第一歩であると考えたのだが、同時に栽培者の何気ない作業上の習慣(=癖)の見直しも必要だと感じたそうである。
まさに孫子のいう「彼を知りて己を知れば、百戦して殆(あや)うからず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆うし」の世界だ。
圃場条件を知らず、野菜の生理も知らず、病虫害の生態も知らず、その上この作業は何のためにやっているのかをも考えないようでは、「おいしくて、病害虫に強い野菜づくり」にはほど遠いのだと思う。
さらに気象条件など栽培環境も常に変化しているので、それにあわせて自分のやり方も変化させていかなくてはならないという警鐘も、この勉強会には込められていた。
また今回の勉強会では、らでぃっしゅぼーや農産課の意向もあり、各センターや会員さんに届けられる時点での品質・鮮度維持にも焦点が絞られていた。
そこで新井さんは講義の中で、「栽培をしている作物のどこを食卓にのせるのか?」という根源的なところも参加者に問いかけている。
その部分が豊作になることを考慮すれば良いわけであり、肥料成分(特にチッソ)がそれほど必要ではない時期の多肥(=人間で例えるとメタボな状態)が、様々な問題に発展すると考えている。
そんな意志の込められた資料には新井さんが撮りためた写真や、先進的な農業関連団体や研究者から借りた写真や図表などが、項目ごとにまとめられている。 参加者にとって非常に有効な資料である。
聞くところによると、新井さんが日々の農作業後にビール片手に脳作業をした成果とのこと。
農業とは脳業に通じるものだと、あらためて感じた次第である。
新井さんの講義は3部構成になっていて、それぞれのタイトルは次のとおりだ。
「土づくりを改めて考えてみる。」
「病害虫防除について考えてみる。」
「作物の変質防止を考えてみる。」
ここで上記のすべてに「考えてみる」がついていることに注目。
考えないで習慣(癖)のごとく自動化された農作業が多いことに新井さんが気づいている証だ。
トヨタでもニンベンのある自働化にしろ!とうるさく言われているように、自分の頭で仮説を持ちながら考えてみて、その仮説が正しいかを実際に検証しながら改善・工夫し続けることの大切さを伝えたいということだ。
(トヨタ生産方式では「異常が発生したら機械がただちに停止して、不良品を造らない」ことをニンベンのついた自働化という)
まずは、土づくりについての講義。
過去2回の「新井塾」のおさらいも兼ねている。
土の3相構造を知り、働きを知り、なぜ土づくりが必要なのか?
栽培作物に合った土づくりとはどのようにしたら良いのか?
堆肥や緑肥などの使いこなしも重要だ。
堆肥は原料の配合割合によって、肥料的にも土壌改良材的にも活用できる。
新井さんは、圃場の土質(粘土粒子の有無・腐植の含量の多少等)に応じて、また栽培作物の特性などによっても、使い分けることが大切であると強調する。
土壌酸度(土壌pH)も、作物の収量や品質を大きく左右する。
作前に石灰や苦土石灰などを習慣のようにふっていることはないだろうか?と問いかける。
石灰を入れてなくても、土壌pHをあげやすい資材・堆肥も多いので、知らず知らずのうちにpHをあげてしまい、作物によっては病気の発生を助長することもあるからだ。
特にジャガイモの場合、土壌pHがあがるとソウカ病が発生しやすくなるので要注意だという。
(ソウカ病の病原菌である有害な放線菌はアルカリ土壌を好む)
植物生理にあわせた施肥量とタイミング、これが収穫物の品質や耐病性などに影響する。
ダイコンの場合、初期肥効を抑え気味にして、後半に窒素を効かせると良いダイコンづくりのコツとなる。
これが逆になるとダイコンの葉ばかりが大きく育って、利用する大根の部分が伸びにくく、大きく垂れた葉により株元への日当たりが悪くなるため、病害虫が発生しやすい状態となる。
レタスの場合は、後半まで窒素が残りすぎるとトロケが出やすくなるそうだ。
作物の吸肥特性にあわせた施肥管理を、皆さんは気をつけてやっているでしょうか?
多量要素、微量要素の利用特性や生理障害について一通りの説明をした後、新井さんは施肥タイミングについての技術を披露。
作物に出始めている軽い生理障害(肥料の欠乏症状)や、果菜類などの生長点の様子から追肥タイミングを計るやり方だ。
新井さんの場合、ミディトマトの下葉(老化葉)にカリウム欠乏が出始め、生長点の一番上からすぐ下の花までの距離が縮まってきていると感じた場合に、追肥の判断をするという。
もちろん有機質肥料の場合、肥効が出るまで少し時間がかかるので、症状がそろそろ出始めたかな?というタイミングで追肥開始。
新井さんのミディトマト栽培体系では、カリウムが先に欠乏しやすく、その後で窒素が欠乏するということが経験上わかっているためできる技である。
それぞれの生産者が、自分の栽培ではどのように関連するのかを観察・自問し、自分なりの追肥タイミングなどの指標をみつけることが大切だと感じた。
次に病虫害の講義。
病気については被害症状などから原因を予想し対処する方法などを学んだ。
病害を引き起こす原因となる糸状菌(カビ)、細菌(バクテリア)、ウイルスなどについての説明をいただいた。
害虫についてはアブラムシ類を筆頭に、ダニ、アザミウマ、コナジラミ、ヨトウムシ、コナガ、ハモグリなどの被害と農薬に頼らない防除法。
新井さんの経験から、粘着トラップは初期防除にかなり効果的とのこと。
定植してすぐに黄色の粘着トラップをしかけておくと、ハモグリにはきわめて有効であると強調されていた。
(ただしハモグリの発生密度が高くなってから設置しても、効果はあまり期待できないとも…。)
見逃しやすい点として、害虫類は圃場周辺の雑草を経由して入ってくることが多いので、播種・定植前にはこれらの雑草を除去することが必要であること。
特に、アブラムシ、アザミウマやコナジラミなどはウイルスを媒介するので、注意が必要だ。
虫の生態を知ることの重要性が再認識できたといえよう。
収穫後の作物の変質防止について、らでぃっしゅぼーやの神保さんより現状の問題点とクレーム数の多い品目(レタス・大根など)の説明をいただいた。
その中で課題となったのは、収穫後の品温管理である。
出荷後の輸送途中で品温が大きく変化する場合もあり、改善に向けて協力をお願いした。
新井さんは品温管理についてはもっと調査・研究した方がよいかもしれないとアドバイス。
さらに品温が急激に変化した場合(温度差が大きくなった場合)の品質に与える影響も調べた方がよいともコメント。(※キュウリのように低温障害を受けやすい品目もあり)
収穫後の変質防止については今後の検討課題として残された。
今回参加者の記憶にすり込まれたキーワードは、「作物ごとの施肥パターンの研究」、「窒素過多と水分過多を避ける」、そして長年のトラクター耕起によりできた硬盤に亀裂を入れ、水はけ等を改善する「プラソイラーの活用」及び「緑肥(保護)作物の有効利用」だと思う。
上記の窒素過多+乾燥状態がアブラムシなどの害虫を呼び寄せ、窒素過多+水分過多が多くの病害要因になるからである。
収穫後の品質も劣化しやすくなるので、「百害あって一利なし」とはこのことだろう。 (さらに窒素多肥はコストアップや肥料流亡で環境汚染にもつながる!)
『めだかの学校』 ~新井塾~、本当に盛りだくさんの内容で、一日ですべてを理解することは難しいかもしれないが、立ち止まって考えるきっかけになったのではないかと思う。
「おいしくて、病害虫に強い野菜づくり」に一歩でも、いや半歩でも近づいてくれること期待したい。
次回の『めだかの学校』での参加者報告が楽しみである。
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