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【01 農産活動報告】
2010-03-01
経営塾in札幌 開催報告
2009年11月21日、北海道ブロック会議にてご要望の高かった農業経営塾を
札幌にて開催しました。
講師は、野菜くらぶの澤浦社長。
(※澤浦さんは当時Radixの副会長、2010年3月1日より会長に就任)
2008年の経営勉強会でも講師を引き受けていただき、事例を交えた具体的なお話で多くの方からご好評をいただきました。
今回の経営塾では3つの内容でお話をいただきました。
1.野菜くらぶの成り立ちと出来事
2.農家の規模別管理のポイント
3.生活面から見た経営計画の立て方
それでは、当日の経営塾の概要を以下にお伝えいたします。 (※長文です)
(野菜くらぶさんのHPは → http://www.yasaiclub.co.jp/ )
(Radix事務局:成田)
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【菅野理事より開会挨拶】
ご要望の高かった農業経営に関する学習会をなんとか開催したいと思い、
野菜くらぶの澤浦社長にお願いして来て頂きました。
私も有機農業に携わって20年ほど経過するのですが、まわりの農家さんの話を聞くと経営や後継者問題などの課題が多い気がします。
そのような経営に関するお話や、若い人たちを育てている野菜くらぶの取り組みなども聞いてみたいと思っています。
それでは澤浦さん、よろしくお願いいたします。
【澤浦さん】
今日の話は三部構成です。
最初は野菜くらぶの成り立ちから。
野菜くらぶは3名の仲間で立ち上げた生産者団体で現在は56名。
どういう問題があり、どう解決してきたのかをまずお話しさせて頂きます。
次に農家の規模別管理のポイントの話。
グリンリーフも家族3名で始めた会社です。
(※農業生産法人グリンリーフ株式会社 http://www.akn.jp/index.htm)
家族経営からスタートして現在は70名弱。
今に至るまでの規模別の管理ポイントについてお話ししたいと思います。
規模は大きくなればいいというものではなく、効率よくやることが一番。
大きくすることがすべてではないと思います。
農家の規模別管理のポイントをしっかりおさえて、家族経営でやるにはどういうやり方が一番効率的で、どのような方法をとるのが一番幸せなのかという視点で聞いて頂ければと思います。
最後は生活面からみた経営計画の立て方。
私自身が考えている経営計画の立て方というのをお話ししたいと思います。
■野菜くらぶの成り立ちと出来事
(創業から現在まで)
野菜くらぶは平成4年に3人の仲間で創業しました。
平成になってコンニャク相場と野菜相場が暴落。
自分で値段をつけられる農業をしようと始めたのがコンニャク加工です。
コンニャク加工品の営業をしているときに、あるご縁で、らでぃっしゅぼーやさんを知り、無農薬コンニャクの取引から始まりました。
当時、らでぃっしゅぼーやが自社仕入れを始めようというタイミング。
開発担当者にコンニャクを見に来ていただいた際、野菜も無農薬で生産できないかということで野菜くらぶがスタートしました。
始めるにあたって仲間に声をかけたんですが、当時私は24~25歳ぐらいだったこともあり、集まったのはたったの4人。(※野菜くらぶは3名でスタート)
少数精鋭でいきますと説明して始まったのが野菜くらぶです。
3人というのは非常にいい数字。
5人までのときに、今後この組織をどうしていきたいのかをとことん話し合うとぶれません。
平成7年にMOAの認証を取得。
平成8年にモスフードサービスと取引開始。秋に会社としてスタート。
平成10年に最初の社員を採用。十分な報酬が払えない状況だったこともありどうしようかと思ってみんなに相談し、翌年は売上げが伸びると予想できていたので採用を決めました。
平成13年に独立支援プログラムをスタート。
農業をしたいという人を育てようとプログラムをつくり研修をして、独立させてあげようということです。
最初の1人は食べるものと寝るところを与えて何もない状況でしたが、その人の独立ではずみがついて今では何人も独立しています。
平成14年に株式会社化して冷蔵庫を増設。
平成17年に社員研修を本格化。管理方法とか心理学、哲学、組織論などの具体的な内容を研修で取り入れ始めました。
平成18年にサングレースというトマトの生産農場を設立。
平成19年に青森と静岡に集出荷場を建設。トマトの選果施設も建設。
平成20年に関連会社のグリンリーフが天皇杯を受賞させていただきました。
■創業から現在までに起きた様々な問題点
(創業時)
野菜くらぶの創業は平成4年。
いち早く農業経営でだめになった3人が野菜くらぶをスタートしました。
生産したものがちゃんと売れない、換金できていない点がうまくいかなかった理由です。採算にあう価格で売れていれば経営危機にならなかったんです。
3人で話をしたのが、自分たちが農業を続けられるように自分たちで値段をつけられる農産物を売っていこう、組織は組合ではなくて会社でやっていこうと話し合いました。自分たちが考えている有機農業や、自分たちで値段を決められる農業をやろうという点を理解してくれる方を仲間にいれていこうと話をしました。
平成8年に7人ぐらいになりました。
当時若かったこともあり信用もありません。声をかけても集まってくれませんでした。 信用がないということは逆によかった。信用がなくて自分が思うようにできる時期というのは今から思うとすごく良かったなと思います。
当時の農家って自分のものが売れればそれでOKだったんです。
売れる背景には買ってくれる人との信頼関係であったり、コミュニケーションであったり、どう作っているかというアピールであったり、そういうものが必要。
しかしなかなか理解してもらえない時期が長く続きました。
その人たちに「東京に種を蒔きにいくぞ」といつも言ってるんですね。
畑に種を蒔くばかりでなく、東京に種をまかなくてはお客さんが育たないから、買ってくれる人がいなくなるという話です。
「東京に種を蒔きにいくぞ」という言葉を合い言葉にひっぱりだしてきました。
それで取引先の信用が高まってきたような気がします。
(社員雇用)
平成10年に今の事業本部長を社員として雇用しました。
雇用できるような売上ではなかったのですが、うちの女房が当時の受注と連絡のやりとりをしていたんですね。長女が平成7年に生まれて、女房がやるには限界があるなと思ったわけです。
最初の社員を採用する際に生産者が17名ぐらいいました。
会社にするときに一気に増えましたので、社員をいれることになかなか理解を示してくれなかったんですよね。今はそうではないですけど。
組織が変わるときにだいたい抵抗するんです。
「社員を入れたってしょうがない」「社員を入れて手数料が高くなったらいやだ」とかですね。
うちの女房も子供が泣き泣き、家事をしなければならない時間に生産者と電話をしなくてはならないので大変なわけです。主婦としてご飯の用意をしなくてはならないし・・。そうでなくてもパートさんに毛の生えたぐらいの給与しか払えなくてですね、続けられないということで社員を入れたいという話になりました。
平成9年に新農業人フェアで今の事業部長と出会い、時間をかけて口説き落として来てもらいました。
当時とことん話をしましてその通り進んできているわけですが、将来会社をどのようにしていきたいのかということが彼の心を動かしたのかなと思います。
彼が入社することで給料はどうするのかということで、(手数料を)3%から4.5%に上げました。売上が3億でしたから、1.5%あげることで彼の400万ぐらいの給料分はでると見えていましたので、1.5%あげることにしたんです。
3%から4.5%にあげるのにも反対がありました。そんな人のためになんで金を払わなくちゃいけないんだと言うわけですよ。でもボランティアでやっているわけじゃないんです。
数年後に4.5%から6.5%にしました。また大反対がありました。
自分は野菜くらぶからずっと給料をもらっていなかったんです。
役員ももらってなかったんです。
それで初めて役員報酬がでたのが平成13年ぐらい。
創業したのが平成4年だから10年近くゼロなんですね。
そんなことで手数料が活きたわけです。
(設備投資の資金)
野菜くらぶとして設備投資もしてきました。
事務所とか冷蔵庫とか、真空冷却機とかいろいろつくってきたわけですが、大きな補助金は最初の冷蔵庫とトマト農場をつくった際の補助金をいただいたほかは補助金はいただいていません。
野菜くらぶの設備に対しては、ほとんどは補助金なしでつくっています。
みんなからお金を出して頂いてし元手にし、それだけでは足りないので公庫から資金を借りて集出荷施設とか冷蔵庫とかをつくってきました。
真空冷却機を導入したことが取引先から評価をいただき取引先も増えました。
設備投資をするときに必ず増資をすると言いましたが、これは大事な事です。
野菜くらぶの株主は52名ぐらい。その筆頭株主がグリンリーフですが、株は27%しかもっていません。私個人が2%ぐらい。
オーナー会社として仕切っているように見えますが、民主的に運営されるようになっています。
株式を持つと言うことはその会社のオーナーになるというわけですから、やる気もでてきますし、生産者も一組合員じゃなくて経営にちゃんと参画している意識が生まれますので、まったくやる気が違ってきます。
そのため何かを作るときには増資をして、みんなでお金を出し合ってやっています。
(欠品と過剰生産対策)
栽培したものは全部収穫したいというのが農業やっている人の性というか、収穫しないですきこむというのは非常にいやな思いをします。
欠品を続けるとお客さんの信頼をなくしてじり貧になっていきます。
生産はたくさんしなければいけないなと思うわけです。
うちの場合は100の注文に対して120作付けをしようと話をしています。
20%を余分に作付けして、その20%はあらたなところに販売する努力をしたり、最悪の場合は20%すき込んでもいいと思って栽培してくださいとお願いしています。 実際にすきこむこともあります。
今年の7月のレタスはかなり過剰になりすき込みました。
過剰生産でものが余って売れなくてレタスもすきこんで、秋の反省会では将来考えていかないといけないなと話をしています。
過剰の時に一番つらいのは事務局なんです。生産者のはけ口なんですよね。文句を言うはけ口なんです。もっと売ってくれとか、もっと出せないのかとか・・。
それを聞いた事務局は、販売先には「もう少しなんとかなりませんかね」とやわらかく言うんです。そうするとだんだんとストレスがたまるわけですよ。
その人が認められないで強制的に指示・命令とかマイナスになる言葉を受けていると、負の感情がどんどんたまっていくんです。それをどこかで抜かないと、たとえばちょっとしたことでも事務局を認めてあげるとか、そういう行動を生産者がとれないと事務局はやめていってしまうんです。
事務局スタッフがやめてしまうと困るのは生産者なんですね。
そこでうちでは事務局から事業部に名前をかえたんです。
事務局という名前だとどうしても生産者の手足になって動くというイメージがあったので、生産者が強い口調で言うんですよね、「おめぇたちは俺たちが食わしてやっているんだ」とか言うんですよ。
事務局は生産者の手足になって働くものと思っていると事務局スタッフの心がすさんでくるんですね。同じスタッフが営業の現場に出て行くわけです。
それはまずいということで、名前をかえて事業部という名前にしたんです。
事業部という形にして生産者も事業部も対等だという形にしました。
事業部に対して、生産者が「俺たちが食わしてやっているんだ」というような見下したような言葉を言えないような環境をつくったり、事業部も「買ってやっているんだ」とか「売ってやっているんだ」とかの態度にならないようにいろいろと工夫をしています。
特に過剰生産のときに問題になります。
生産者同士でも疑心暗鬼になります。
たとえば声のでかい人の方が出荷が多いような雰囲気になっていますよね。
また役員の方がいっぱい出荷しているように錯覚されるんですよ。
このときに重要なのは情報をオープンにすることなんです。
それで、だれにどれだけ発注しているのか全員がわかるようになっています。全部見えるようになっているわけです。
だれだれに100発注して、だれだれに200発注してというのが全部の生産者にわかるようになっています。誰が多い少ないがわかりますから、そういうことを疑心暗鬼にならなくなりますよね。
これはすごく大事なことで、こうすることで疑わなくていいように、疑えないようになってきています。
生産物が余ってくると振り分けが一番悩みます。
事業部の鉛筆1本で生産者の収入が決まるわけですから、そのルールづくりをどうしようかということで生産者同士で話し合って、そのルール通り事業部がすすめています。
1週間に1回、部会をひらいて必ず数量調整とかを生産者同士でやる形をとっています。できるだけ事業部に負担がかからないようにしています。
それをやるようになってから事業部も非常にやりやすくなって、生産者のものをどんどん売っていこうということで積極的な流れになってきたと思います。
世の中が平和であるためには食べ物が100%以上ないとだめですよね。
105%とか110%とか食べ物が余って捨てられる状態でないと安心ができない状態なんです。
食べ物を捨てるというのは罰があたっていいことではないんですけど、余る状態でないと安心してられないというのが人間だと思うわけです。
そういう世の中を作っていくことが農業者の役割だと自分は思っています。
ものが余っている状態、120%になったときにどうなるかというと価格が暴落するわけです。過剰にものがあれば価格は暴落するわけです。
農産物は価値をうちだしていかないとだめだと思うわけです。需給だけでない価値をだすために安定供給というのはすごく大事なことです。安定供給するために一つは余分に作付けすることが絶対になるわけです。
生産者が畑に余剰に捨てていける状態は、ある意味でいい状態だと認識しないとだめだよと常に話しをしています。
ただ事業として見れば生産者がつくったものすべて、作付けした物を全部売っていこうよという話は常にしています。
今年は余剰で廃棄するものがでたんですが、これは本当に稀な年で、ほとんど圃場で廃棄することがない状態でやってきました。
冷凍野菜もやらせていただいているわけですが、冷凍野菜をなぜやりはじめたかというと、コマツナって1日に4cmも5cmも伸びちゃうんですよね。
朝ちょうどよくても、夕方出し遅れてしまって出荷できないなという状態になってしまいます。
せっかく有機で育てても畑で廃棄するのはもったいないということで、冷凍して外食用に販売しています。今は外食用だけじゃなくて一般の家庭で食べるような冷凍品もつくっています。
余剰になったものに付加価値をつけるということも今後大事かなと思っています。
農産加工は農場運営とはまったくちがうノウハウが必要となります。
補助金をつけて安易に始めるのは危険だと思います。
こじんまりとしても設備にあまりお金をかけない加工がかならずありますから、どこにもないものを作っていった方が私は得策だと思います。
補助金をもらってもタイムリーにスタートしないとお金がなくなるんです。
補助金もらってラッキーではなくて、それだけ危険だということですね。
加工場もまったく同じで、ノウハウのない人がまったくゼロからはじめるリスクは大きいです。ここをしっかりおさえて頂いた方がいいかなと思います。
(人の問題)
野菜くらぶの事務局は、生産者からいろいろいわれていましたから、以前は暗い事務局でした。
みんなからも暗い暗いといわれて、明るい事務局を目指そうということになりました。たまたま女の子がたくさん入社してくれて・・、女性が増えると明るくなるんですよね。
そうすると生産者が事務局から帰らなくなるんですよ。
そんな関係ができてくるといいなと思っています。
生産者団体、産直団体などいろんなところを見ていますと、だいたい50人から100人の間で分裂するような問題が起きてきます。
分裂するところはだいたい50人から100人。その間で分裂してきます。
これはひとつはワンマン経営、不透明な経理、不公平さなどの不満などが原因で分裂しているようです。
野菜くらぶは56名でその中に入ってきているので、自分は経理はオープンに、意志決定はワンマンでなく取締役会で決めていくようなマネジメントにどんどんかえてきています。
自分一人で決めることは極力さけていますし、決まらないような仕組みになってきています。
野菜くらぶの正社員は7名いますが、スタッフの社員教育に力を入れています。社員教育費として年間800万から1000万ぐらい使っています。
講師を招いたり、教育会社で社員研修をしたり様々なことをやっています。
(組織運営)
組織運営では地域より理念を重視します。
ここはすごく大事で、3人でスタートした時、地域でまとまるのはよそうと話をしました。それまで地域でまとまって、地域に住んでいる人は仲間に入れようとやってきたんですが、それよりも自分はこういう農業をしていきたいんだと、自分はこういうふうにやっていきたいんだと、そういう考え方の方が大事だと思います。
同じ理念、考え方、方向性が一つのグループになるから力が発揮できるわけですね。同じ地域に住んでいるからといって、柔道をやっている人も剣道をやっている人もサッカーやっている人も、相撲やろうぜといってボール持ってくる、竹刀もってくる、そんなに集まっても何もできないわけです。柔道をやろうぜといったら柔道ができるわけですし、野球やろうぜといったら野球をしたい人が集まるわけで、これと同じでこういう農業をやろうぜと集まった来る人と一緒にやっていくことが大事かなと思います。
組織を守る上で数字を公開しないと守れません。
数字を公開すると社長も楽になります。
なぜかというと、数字で説明できると根拠になるわけです。精神論ではなくなるわけです。
酒を飲んで話をしているとだんだん精神論になってくるわけですね。
精神論ではなくて具体的な数字でどうしていくんだと、具体的なところで話を、特にマイナスの話をシビアにした方がよいと思います。
具体的な問題解決などの場合には数字で追っていくことが重要です。
自分は農業って野球と同じだと思うんです。
それぞれのポジションの人がいてがんばるからチームが勝っていくということです。これまでは生産するだけが農業だったわけですが、生産するだけの人しか集まらなければ、みんなピッチャーをやりたい人ばかりでキャッチャーやる人がいないんですね。だからキャッチボールしかできなくて野球の試合にならないと思えちゃうんです。
でもキャッチャーする人がいたり、センターとか外野手、内野手がいて、それで野球のチームができて、それだけじゃなくて相手チームがいて、それでゲームができて、見に来る観客がいてビジネスになる。
それと同じように農業も生産する人、売る人、届ける人、資材を調達する人、経理をする人、社長がいて監督がいて、そういう人が全部そろって農業が活性化してくるんじゃないかなと思っています。
究極のマネジメントというのは人の管理、仕事の管理なんだそうです。
仕事の管理というのは進捗管理です。
計画がどういう状態にあるのか、その進捗管理。
これは農家の人は結構できているし生産者団体もできていると思います。
もう一つの人の管理というのはメンタル面にまで踏み込んでいきます。
人ですから暗く落ち込むこともありますし、家族になにか事故があると暗くなりますし、そんなときの心のメンテナンスをどうしていくかです。
この2つができないと組織として維持できないなと感じています。
中小企業家同友会というものがあるんですが、北海道が組織率が一番高いですよね。北海道は農家さんが一番多く入っています。
中小企業家同友会、ぜひ入って頂けるといいと思います。
平成6年に会社にしてから私もずっと入っていますが、とても勉強になります。
中小企業家同友会でいろんな話を聞いて勉強をさせてもらっている状況です。
■農家の規模別管理のポイント
規模別・人数別でどんなことが起きるかということをお話ししたいと思います。
(3人までの家族経営の場合)
単独、夫婦二人、あるいは両親と長男という家族構成で生産、親のどちらかと夫婦という形での経営です。収穫の時に外部雇用があるぐらいの規模です。
家族のがんばりがそのまま業績に結びつき、家族の夢がそのまま仕事に生かせるということで、ご飯を食べている時もいろいろと話ができるわけです。
ああしたい、こうしたい、将来家を建てたいとか、そんな夢がそのまま仕事に反映できる、仕事でがんばった分だけ夢に近づけるということが家族経営の長所です。
災害などの厳しい環境の中でもがんばりがききます。
災害にあった時、法人経営だと外部にお金を払わなくてはならない。でも家族経営だと外部にお金を払う出費が少ないですから、がんばりがきくんですね。
だから家族経営というのは法人経営よりも持続性・継続性といういう意味で自分は強いのかなと思います。
短所は、組織化した販売グループに入らないと安定した販売ができないということ。3人までの家族経営、あるいはもう少し大きな家族経営の場合、生産と販売の両方をすることはほぼ不可能なわけです。
生産に特化して、できた農産物を誰かと一緒に売っていくようにしないと、経営として成り立たないです。
販売組織がいいか悪いかがその人の経営を大きく左右します。
組織化した販売グループに入らないと安定した販売ができない。安定した販売組織、例えばらでぃっしゅさんとか安定した販売組織でないとしっかりできない。 安定した販売組織に入って販売がしっかりできるような形になっていれば、家族経営が私は一番農業をやるのに魅力的だと思うんですね。
現在グループ全体で130名ぐらいの方が働いていますけど、もし私が普通の一農家であれば、野菜くらぶに入って女房と両親のどちらかとレタスとかコマツナ、ホウレンソウとかを生産して野菜くらぶに出荷すると思います。
それが一番いい暮らしができると思います。
本当にそうなんですよ。家族ともずっと一緒にいられるじゃないですか。
販売組織がしっかりしていれば3人の家族経営というのはすごく魅力的な経営体なんですね。
独立支援プログラムで独立した生産者が青森と静岡にいて、野菜くらぶで販売しているんですけど、売上げが3000万ぐらいあります。
彼の場合はタイの研修生を2名雇用しています。奥さんはまだ子育てのため、畑には出ていません。彼と研修生2人と朝だけパートさんを雇ってレタスを栽培しています。
彼の家族年収がだいたい500万円ぐらいです。
仮に奥さんが畑に働ける状態になれば家族所得が700万とか800万とかになります。そうすれば3人の家族経営ってすごく魅力的です。
だれか(野菜くらぶの)社長を変わってくれないかなと・・。
そんなふうに思います。
家族構成の変化で経営規模が大きく変化するとは、奥さんが妊娠したりするとその分経営面積を減らしたりとか、病人がでると面積を減らしたりとそういうのが直接結びつくのが欠点です。
成功のポイントとして、家族が仲良くして生活のための同じ目標を持つ事です。
将来どうしたいと家族仲良くしていくことが大事だと思います。仲良くどういう農業をやっていきたいのかが大事だと思います。
農業後継者が残る農家ってどういう農家かなと見ていると、小さい頃から親が農業に対して誇りを持って話をしているところはほとんど後継者が残っています。農業はダメだダメだと愚痴を言っているところでは後継者は残っていません。農業はいいぞと言っている農業経営というのは農業高校とか卒業して入る時に規模を早めに大きくして準備しているんですね。
その人が活躍できる場を準備しているというのは重要だと思います。
農業後継者が入ってくると、その分規模も大きくなり売上げも伸びるので給与もきちんと払えます。実際に払っている農家は後継者が残っています。
うまくいっていない農家は、農業後継者が入ってきても規模を大きくしないで、親が楽をしているところはあまり・・・。
結局規模は変わらず人数だけ増えて後継者が働いても、その分親父さんが楽をしてというところは、うまくいっていないように見えています。
(3人から5人までの家族経営の場合)
家族に数名のパートさんが入った経営です。
両親と息子、あるいは夫婦2人とパートさんが働いている規模です。
奥さんは無報酬で働く場合が多いです。
人を雇用し始めた時には奥さんは無報酬になってしまうことが多いんですね。外部の人にお金を払い始めるときは家族が一時的に報酬が下がるんですよ。外部の人をいれても大きくした分だけストレートに売上げに結びつくとは限らないので、少しタイムラグがあります。
来た人がすぐに一人前の仕事ができるかといったらそうではありませんし、一時的に無報酬で働くことが多いんです。
パートさんをお願いしていると、その分規模が大きくなるので先ほどの家族経営の時よりも可処分所得は増えます。販売組織に入っていることが前提ですけど、可処分所得は増えます。
知り合いの人や気のあった人と仕事ができるので、緊張感もあるが楽しく仕事ができます。全然知らない方を雇用するのではないので、仕事自体も楽しいんですよね。
短所としてパートさんの急な休みなどで、その穴埋めを家族がすることが多くなることです。子供が熱出したり、おじいちゃんが入院で付き添いでとか、けっこうあるんですよね。
パートさんも本人が風邪をひいたから休むとか朝になって電話してくることもあったり、パートさんに振り回されることが増えてきます。
そういうわけですから家族の中から意見の相違がでてくるんですよね。
人が入ってくると、もう少しこうした方がいいんじゃないか、ああした方がいいんじゃないかとか、採用した人が思うように動かないとですね、おまえの採用の仕方が悪いとか、相違がでてくるんですよね。
成功のポイントは家族の中で食事や休み時間に打ち合わせを密にすることです。他人が入ってくるとどうしても他人と会う機会が多くなるので家族と話をする時間が少なくなってしまいます。
ですから意識的にそういう時間をつくっていくことが私はいいかなと思っています。
数名のパートさんが入ってきたときには、口だけでなくてできるだけ文章でも伝える訓練をすることも大事だと思っています。
コミュニケーションというのは難しくて言葉では27%しか通じないんです。
伝わらないですよね。
話をしていても相手が情報を得るのは態度や目つきなんです。
目を見ていても態度が悪ければ、例えば腕を組みながら「何々をやってください」と言っても、言葉では指示を受けても態度から相手は「この人は今日何かあったのかしら」というような事に関心が向いてしまうんですね。
本来やらなくてはならない指示命令を聞くよりも相手の態度から「私に対して何か面白くないことがあるのかしら」とか、そんなところに神経が回って本来やらなくてはならない指示命令をきいていないんですよ。
復唱してくださいと言っても今日何をやるのかをだいたい言えないんです。
でも言った人はわかっているものと思っているんですよ。
ここで錯覚がおきるんです。言ったのにやらないとか、そこで感情のもつれがでてくるんですよね。だから工夫が必要なんです。
自分の話というのは27%しか相手に伝わっていないと自覚して言葉で伝えたあとに相手にもう一度言ってもらう。言葉にすると自分で行動しますから意識の中に落とし込めるんですね。
インプットしたことをアウトプットさせてあげると相手の方はああなるほどなとミスが少なくなる。そして文書化して紙に書いて渡してあげるとミスがなくなる。
ミスがなくなると、お願いしたことが夕方もどってきてできていると褒められるわけです。ところが伝え方がまずくて、伝えたことができていないと、「そんなこともわからないのかー、ばかやろー」となってしまうんですね。
外部の方が入ってきたとき、相手に復唱させる、文書化することはすごく重要になります。パートさんでもだれでも仕事はできるんですけど、指示命令とか確認作業がうまくいかなくて、コミュニケーションがうまくいかなくて仕事がうまくできないことがほとんどです。
そういうことを意識的にやることですこしづつ良くなると思います。
3人から5人までの時に入ってくれた方は、後々のキーマンになります。
グリンリーフのパートさんだった方は、今は漬物工場の工場長です。
コンニャク工場でアルバイトしていた方は、コンニャク工場の工場長になっています。 その人が伝道師となって同じようにやってくれるようになります。
(5人から10人までの農業経営の場合)
5人から10人になってくると家族3人で全部の仕事をするのではなく、パートさんに袋詰めをまかせたりするようになります。
畑に出ながら仕事をして、人の管理もしている段階です。
長所として家族中心の経営で可処分所得がそれなりにとれること。
可処分所得が一番増えるのは5人から10人の規模かなと思います。
家族3人と7人ぐらいのパートさん、または研修生や社員でやるのが一番いいのかなと思います。
野菜くらぶの生産者でも5人から10人ぐらいで農業経営をされている方が一番可処分所得が多いと思います。
外部の人に払う給料はまだ多くないんです。
社員の場合、給料をきちんと払っていかなくてはならないので大変ですが、この時期は家族が中心となって指示命令をすればいいので、一番バランスがいいかなと思います。
5人から10人ぐらいの場合、野菜くらぶで売上げが5000万~7000万ぐらいです。家族の可処分所得が1000万から2000万ぐらいになります。
そうすると家を建てることができたり子供の教育ができたり、夢が実現するような規模になります。
私はこの人数が一番バランスがいいのかなと思います。
経営者の目が作物に行き届き、作業のこまかいところにも目が行き届き、作業効率が高く、品質の良い物が生産できます。
この規模はいいものを出荷します。
経営者が病気になっても維持できる規模になっています。
短所は責任を任せた外部の人の能力によって成績が左右されることです。
社員さんが作業をしっかりできるかどうかが非常に大きなポイントになってきます。
栽培作物や経営によっては資金管理などの管理業務が必要になってきます。
野菜は播種して現金化されるまでそんなに長くかからないもですが、コンニャクの場合は3年以上かかります。
規模が大きくなるとお金を寝かせないとだめなので、資金管理が必要になってくるんです。働いている方にも毎月給料を払って行かなくてはいけないので、ためておくことも重要になります。
このような管理業務が増えてきます。
成功のポイントは、計画書を作成して実践することです。
作業の見える化を行い、働く人が何をしたらよいかわかりやすくすることです。
また家族の姿勢が働く人に大きく影響を与え始めるので、華美にならないようにすること。お金が入ったらといって華美になると働く人は怠慢になります。
この規模で外車にのったり華美になると、働いている人が変わってきます。甘くなってきますし、採用する人の質も変わってきます。
注意すべき点です。
(10~20人までの農業経営の場合)
家族以外の人から正社員を雇用し、担当部署を持って組織としての機能をし始めている段階です。
この段階になると正社員は必要になります。
1人が見られる限界というものがあります。どんな優れた人でも1人で10人までの部下です。10人を越えて部下をもつと目が行き届かなくなり、指示命令、仕事がまわらなくなります。
能力がない方はもっと少なくなります。外部の人をしっかり正社員にして、その人に部下をもたせることができてきます。
社会保健や就労規則などの労働環境の整備が始まります。
10人を越えると就労規則をつくる責任がでてきますし、会社になれば社会保険とかに加入しなければいけなくなります。
このように労働環境の整備がはじまります。
長所は、やったことがそのまま売上に結びつき利益も出やすい規模になってきたということです。
法人化することで生活と仕事を分けて考えられるようになります。
法人化すると決算書ができてきますので、会社経営としての夢と、生活の夢がそれぞれもてるようになってきます。
短所は天災が経営に大きな影響を与えるようになることです。
今年のように長雨が続くと、家族経営の場合は家族でがんばって乗り切ろうと出費をおさえていけますけど、10~20人になると今年のような天候で収穫がなくても、働きにきている方に給与を払わなくてはなりません。
収穫がないから作業もなしということはないです。
片づけや準備などがありますから、必ず人件費は発生します。
この規模以上になりますと会社として蓄えがないと1回なにか災害が起きたときに大きな赤字を抱えることになります。
華美な生活になってしまうと災害に耐えられなくなってしまうわけです。
うまくいかなくて給料が支払えなくなるとどんなことが起きるかというと、社員さんから「社長はいい生活をしているけど、俺たちに給料を支払わないのか」、そういう話がでてきたり、重要な人がやめてしまったりします。
華美にならないことと、天災ということは非常に深く結びついています。
家族の頑張りだけでは生産ができなくなり、家族以外の数名の頑張りが業績を左右します。 家族のがんばりだけではどうしようもなくなってくるんですね。
雇用した方が一生懸命がんばってくれる環境をつくってあげないとなかなかうまくいかない。
成功のポイントとして、経営指針書を作成して従業員と夢を共有するようにすることです。
家族がなぜ自分の仕事に夢中になれるのかというと、それは自分の仕事だからですね。自分の仕事というのはどういうことかというと自分の人生と一体化しているからなんです。生活と仕事が密着しているから一生懸命できるんですね。
仕事でうまくいったら家が建てられる、たくさん収入があったら車を買おうとか、家族で旅行に行こうとか、仕事と夢が結びついているからがんばれるんです。
赤の他人が経営に一生懸命になれるかというと、だんだんいやになってしまうんですね。経営の中に自分の夢も重ね合わせてくるようになると、他人の農業であっても自分のものになってくるんですね。
だから経営理念、経営方針というのは重要になってくるんです。
働く社員さんが自分の仕事として会社の仕事をするようになる、そういう環境をつくるわけです。それが経営指針書になるわけです。
北海道の中小企業家同友会で経営指針書をつくる会というものがありますので、そこで学んで頂くのが一番いいと思います。
経営指針書の中に経営理念というのがあるんですけど、社員の幸せというのが必ず入っています。社員の幸せが経営理念の中に入って入れば社員も一生懸命になれるわけです。
経営している社長さんも社員の幸せを考えていけば、社員さんも自分の仕事として一生懸命取り組んでくれるわけです。
今年は儲かったから賞与はこれだけにしようねとか、1000万儲かったから300万円は賞与を出そう、300万は会社に内部留保で残しておこう、残りの400万は将来のために積み立てておこうと、来年働く環境をよくするためにこのようにつかっていこうとすれば働く人は一生懸命がんばれば自分の給料もよくなるし、働く環境も良くなるんだなと言うことがでてくるわけですね。
そこがすごく大事なところになります。
10人から20人になってくると必ず経営指針書が必要になってきます。
組織管理、組織という考え方で農業をやっていく時期だなと思います。
(20人から30人までの農業経営の場合)
パートさんから社員になる人が現れ、経理や管理専門の人がいる、外部から社員を雇用するだけでなく内部からも社員を登用しはじめる時期にあたります。
数人のリーダーシップで組織を運営している段階です。
社長の指示命令が一番届きやすい人数で、数人のリーダーシップであれやこれやがんばろうということで組織が運営できています。数人のリーダシップ、数名がどのようにいるかで組織がきまるような規模です。
長所として、組織的に動けるようになり利益が出やすい規模、全員に目が行き届き人間関係もアットホームで上手く行く規模です。
30人くらいまでが一番利益がでやすいので人間関係もうまくいきます。
数名の方ががんばろうと率先垂範も効きますから、社長も現場にでてます。
私も30名ぐらいまで現場に出ていまして、トラクターにのったり一緒に収穫したりして、「今日はいっぱい収穫できたな、焼き肉でも食べに行こうぜ」とか、そういう感じでみんなで行ったりすることができる人数です。
30名ぐらいの時は旅行も行きました。
会社を休んで旅行に行こうと言うことで、一泊二日でいろんなところに泊まりにいって、本当に楽しい規模だったなと思います。
短所は、トップの意見がすべてを決めてしまい、トップが現場から離れて情報収集が出来ないと尻つぼみになるということです。
現場に張り付いてプレイングマネージャーでどんどんやっていくのはいいんですが、それに没頭していると販売先の方針や要望などの情報を集めず毎年毎年同じ物をつくっていたら、ジャガイモが売れなくなってきたのでタマネギにしてくださいと言われてジャガイモの注文がいきなり減ってしまったりとか、そういうことがあるわけですね。
そういう情報収集にでる時間というのは非常に重要になってくるころです。
成功のポイントは、会議制度や朝礼の充実、トップ面談による社員からの意見収集ということで、この時期は朝礼とか会議とかを定期的に開いてみんなの合意形成をつくっていく必要がでてきます。
組織を大きくするか、現状維持で行くかの意志決定をする時期ということで、30名というのは一つの区切りだと思います。
30名を越えると管理の仕方はまったく異なってきます。変えていかなくてはいけないんですね。
本当に変えなくてはいけないのが50人以上なんです。50人以降になってもワンマン経営をやっていたら、だいたい会社はなくなります。
兆候がでるのがこの30人で、30人以上になってきたぐらいに経営を大きくしていくのか、この規模で内部を充実していくのかを決める時期だと思います。
私もこの30人の時期が一番利益がでました。
ひとつは人件費がまだ高くないということ。
自分ですべて仕切れるから指示命令が明確にすとんと落ちるし、創業してワンマンでやっていくのに一番バランスがよいのかなと思います。
(30から50人までの農業経営の場合)
特徴として加工事業など農業生産部門だけでない業務をしているところが多くなってきます。家族以外の人が経営幹部になってきます。
長所は売上は頑張り次第で伸びる規模です。
能力ある人を登用する事が出来るようになるということです。
外部から雇用した人を他と遜色のない給料が払えるようになる規模です。
短所は、人間関係のトラブルが起き、経営者は仕事のことよりも人間関係のことに奔走され始めることです。人間関係のトラブルがあると売上が伸びても生産性が下がり始めます。
30人をこえてくると人間関係のトラブルってすごくでてくるんですよね。
あの人が嫌いだとか、あの人と一緒に仕事をするんだったらやめるとか・・。
それから突然無断欠勤をするとか。
50人近くなってきますと幹部社員の部下の人が不満を言い始めるんです。
うちは幹部社員が何人かいましたから、幹部社員が自分のところではなくて人のところに口を出したり・・。
あっちのあそこはどうなっているのとか、こっちのここはどうなっているのとかね、おまえ人のことより自分のところはどうなっているんだって言いたくなるんだけどね。言われた方も面白くないから、あんな人になんで言われなきゃなんないのとか、他人批判とかどんどんでてきて、あいつが嫌いだ、こいつはいやだとかそんなことばかりでてきて、人間関係のトラブルに巻き込まれることがこの時期に非常に多くなります。
実は人間関係のトラブルがコストをすごく上げているんです。
人がやめて新しく採用すると、なれていない人がやるからミスが多くなるし作業性は下がるし、能率が悪いと言うことは非常に良くないですよね。
この30人から50人までの時はこういうトラブルが非常に多くなります。
マネジメントの方もトップダウンでやっているとそういうふうになりますよね。
成功のポイントとして、経営指針書を全社員で作成したり、社員教育の実施をしていかないと、この時期になるとうまくまわらなくなります。
新卒社員の募集、組織作り、リーダーシップの転換点ということで、一つは社員教育というのはこの時期に始めないといけないなと思っています。
仕事とは何かとか、組織とはどのようにしていけばいいのかとか、幹部社員の役割とか、新入社員であれば新入社員研修であるとか、しっかりやっていく必要うがでてきます。
この時期になると中途社員ではなく新卒社員を入れていくのが大事だなと思っています。
最初に立ち上げた時はぜんぶ中途社員です。
30人とか50人になってきたころになってくると中途社員さんって色を持っているのでなじめなくて組織を壊していくんですよ。そういう人が良いとか悪いとかではなくて、やはり新卒社員の方がなじんでくれるので、スタートは時間がかかるんですけど1年ぐらいしてくると非常にうごきが変わってくるわけです。
うちも最初は中途の方をたくさん採用していましたけども、30人を越えたぐらいから新卒に切り替えて、農場を転々としてきた人を採用するのをやめました。
そうしてから内容も良くなってきて、人が辞めなくなったんです。
3年ぐらいで会社をやめている人は3年するとやめていくんですよ。3年しなくてもやめちゃうかもしれない。
人が辞めていく時、その人が辞めていくだけでなくて回りにも非常に悪い影響を与えるんですね。ですからこの新卒の社員募集にこの時期は切り替えていく必要があるのかなと思います。
他の業種の方もおなじような事を言っています。
同友会で他の経営者とよく話をするんですけど、新卒に切り替えて会社がのびているところがいっぱいあります。中途採用のところは会社はなかなか伸びていきません。
ただ言えるのは立ち上げのとき、2~3人の時は中途採用の人しか力になってくれないことも事実です。2~3人のときに新卒の人を採用しても・・。中途採用の人も重要なポジションがあるんですね。30人をこえたあたりから採用の仕方を変えていく必要があるなと思います。
社長のトップダウンはそろそろやめていかないといけない時期です。
トップダウンだけでやると現場のことがわからなくなってくるんですね。ですから間違った判断をして現場が混乱してうまくまわらないということがでてきます。
(50人以上の農業経営の場合)
特徴は、社長が現場へ出られなくなる、現場の責任者の能力がそのまま業績に繁栄されると同時に給与も高くなるということで、現場責任者が一農業経営者と同じレベルが求められるようになります。
自分もよく言っているんですけど、農場長は一農家と全く同じ能力を持ってくれと言う話をするんですね。そうでないと一人前の給料を払えないぞと。将来自分が幸せになりたいと思ったら、それぐらいのスキルをつける心構えをもっていろという話をします。
それが伝わるかどうかは人間関係にもよりますが、そういう段階にはいりつつあります。
長所は分業化が進み、組織作りが進むと同時に生産性が上がり始めることです。これは人材育成ができていての話。人間関係のトラブルがあるようだとなかなかうまくいきません。
安定した生産が出来るようになり、顧客からの要望が高まる、生産が安定してくるのでお客さんからの注文が多くなってくるんですね。
そういった意味で付加価値がついてくるようになります。
それからそれなりの地位が出来て採用がしやすくなります。
短所はトップマネジメントが変わらないと破綻へと向かうことで、50人を越えてですね、社長が指示命令であれしろこれしろとこまかいところまで口を出していたら、まず組織は機能せず破綻します。
今うまくいっていない会社はみんなそういった会社です。
今うまくいっているユニクロとかですね、すべて現場に決裁権があるんですよ。店長とかそういったところに決裁権があり現場が意志決定できるようになっているんですね。
それからダイソーの社長はお店にはでないですね。見に行かないって言っていますよね。見に行くとスタッフが萎縮して本来の業務ができなくなるから行かないって言っていますね。
現場の人が働けるような環境作りをしてトップが指示命令をしてこまかく言うのではなく、現場の意見を聞くようなスタイルに変えていかないと、現場で起きていることを吸収して意志決定してマネジメントに変わらないと破綻へと向かいます。
企業が破綻するのが5億から10億の間が一番多いそうです。これも同友会の人から教えて頂いたんですけど、そのぐらいの規模が多いそうです。
資金管理や業務管理の重要性が高まるが、その教育が出来ないと業績が上がらないということで、資金管理とかも重要になってきます。
成功のポイントは幹部社員の教育を中心とした人材育成、資本政策と付加価値の高い商品開発づくりになります。この時期になりますと組織として取り組めますから、いろんなところからいろんな要望がでてきます。
実はこれは生産組織でも同じ事で、30人を越えたあたりから生産が安定してくると、「こういうものができませんか」というように先方から依頼が増えてくるんですね。これがある程度安定してくると強みが出てくるのかなと思います。
以上、規模別の管理ポイントについてお話をさせていただきましたが、規模が大きいからいいとか、規模が小さいからダメだとかそういう話ではありません。
家族経営なら家族経営、3人なら3人でやるやり方があるということです。それぞれの規模に応じたやり方があるということです。
それぞれの規模に、それぞれの課題・問題点もあるということをおさえておいてもらえればと思います。
一つだけ言えることは、規模が大きくても小さくても販売組織がしっかりしていないと農業がなりたっていかないということです。
有機農業をやっている方は個人で走りたがるんですけども、俺は俺、あいつはあいつという考え方は私は嫌いなんですね。あいつのものと一緒にしてくれるなというのは、野菜くらぶの中でもあったんですよ。
「たしかにあなたのものとあの人のものはレベルは違うけれども、物流をくんだり、協力・協同ができるでしょ、それをやっていくことであなたのものも売れていくんだし、あなたのものもお客さんのところにちゃんと届くようになるでしょ」
一人だけだったら何にもできないんです。物流もくめないし、販売もできない。俺のものとあいつの物を一緒にするなとか、あいつはまだできていないから仲間にいれるなとか、入りたい人を阻害していたら孤立していくだけなんですよ。
そこはすごく大事だと思います。
個々の経営として追求していかなくてはならないけども、団結するところを組織化して協力しあうところはしっかり仲間と協力しあう関係性が大事だと思います。 個人と組織の関係というのはすごく大事なことで、組織というのは個人を活かす場所なんですね。
個人は組織に対して忠誠心を持たないといけません。
忠誠心、ロイヤリティーです。
組織に対してロイヤリティを持たないと個人を守ってもらえないから、結果的に一匹オオカミになるんですよね。
野菜くらぶに入ってくる人がなぜうまくいっているのかというと野菜くらぶに対してロイヤリティというか、この組織でがんばっていかないと自分はいけないんだという気持ちがあるからやれると思うんです。
その気持ちがなくて、野菜くらぶに出荷すれば儲かるから出荷するだけして、あとは知らないという人が一人でもいたら、やっぱり乱れるんですよね。
そういった人が一人でもいたらどういうことが起きるかというと、販売先の担当者がくると気分を害するんですよね。そうすると不信感が生まれてくるんですよ。だからよくないですよね。組織に対してロイヤリティを持つべきだと思うし、ロイヤリティがなければ違うところにいけばいいんです。私はそう思っています。
■生活面から見た経営計画の立て方
(計画を立てる順序)
計画のところを駆け足でやっていきたいと思います。
資料2というのがあると思うんですが、それを見て頂きたいと思います。
計画をたてる順序がかいてありますが、これは野菜くらぶがスタートして間もない頃ににどのようにしたらよいかを考えたものです。
農業はなんのためにやるのかというと、生活のためにやるわけです。
自分たちが夢のある生活をするために、どういう農業をしなければならないんだという、そういう発想でこの計画をつくるようにしています。
まず1年に必要な生活費を算出する。
次にその生活費を生み出すための売上金を算出する。
その売上を達成するための作物の栽培面積を算出する。
栽培品目と栽培面積の妥当性を確認して、そのあとに実行計画を作成して栽培方法と管理のポイントを作成し実行していくという考え方でやっていきます。
独立支援プログラムというものをやっていますが、独立支援プログラムの人たちはこの考え方で計画をつくっています。
1年目でレタス約5haの作付けを一つの目安にしています。北海道の方にとってはそんなに少しと思うかもしれませんが、関東近辺でいきなり5haというと、「おまえ、無茶なことをするな。単位が違うんじゃないか、5反じゃないか」と言われるんですよね。
5反でレタスをつくって栽培は成功しても経営は失敗なんですよね。
全部出荷できたとしても結果的には5反では生活できないんですよ。
長く農業をやっている方で後継者がいない人はまず5反でやれと言います。
それで5反に見合う機械をそろえてしまうんですよね。
でも5反にあう機械と5haにある機械はまったく別物なんですよね。再投資しなければならないんです。
最初から失敗する経営を一生懸命勉強してもしかたないわけですよ。
最初から成功するための経営って何だろうと考えたとき、生活できるのが農業経営だと自分は思っています。
最初に1年に必要な生活費を算出するということで、資料に簡単にまとめてあります。生活費にあたるもので住宅費とか食費とか月額と年額で書いてみるんですね。まず書いてみて交際費とかを記入していくわけです。
この中で重要と思うのは積立金だと思います。
この積立金より上の部分は生活に最低限必要なものです。
積立金というのは自分が将来こうしたいという夢に対するものなんですよね。
家族で将来こうしていくからこれだけ必要だという、そういうお金なんです。
例えば何年後に結婚して子供ができるとしたら、結婚資金、子供ができたらどうしよう、住宅はどうしよう、いろいろでてくるんですよね。
そういう夢に対する積立金です。自分の将来に対するお金という考え方で、生活費が1年間にどれだけ必要かを算出するわけです。
その次に、生活費を生み出すための売上金を算出するということで、資料は損益計算書をわかりやすく分解しているので少し変則的になっています。
左に売上があって、右側に経費が書いてあります。ここに計算した経費を入れるわけですよね。生活費、利益、栽培経費、返済金などを右側にかいていくわけです。それをまかなう売上が左側に必要になってくるわけです。
経費を除いた以外の、返済金とか栽培にかかる経費を除いた以外の残ったお金を付加価値と定義づけると、それが売上に対して何%あるのか、というのを過去の実績から割り出してみるんですね。たとえば売上が1000万円あって、年間の生活費を計算したら400万円だったら40%ということになるんです。
経費比率が60%ということになるんですね。
1年が終わったときに借入の返済ができて肥料代が払えて生活ができていれば黒字ですからその比率を書いてみるわけですね。
栽培面積の算出ですが1500万円の売上になれば600万円の生活費が出る。
売り上げのところに1500万と書いて、次に単価、たとえば大根だったら1本100円だったら、100と書く。あるいは、ケース単位で計算をするのだったら1000円と記入する。
1500万÷1000=15000ケース。
10aあたり500ケース出たとすると3ha。
被害リスクも考える。たとえば大根を1年間作っていると1割くらいは虫にやられちゃう、それから1割くらいは台風でダメになるという被害リスクを予想し1.1掛けてあげると必要面積は3.3haとなる。
面積が出たら、その妥当性を検討します。
栽培計画に伴う栽培面積の確保は大丈夫か?
作業機械、設備が十分か?
作業員、人員は十分か?
資材の調達は出来るか?
農産物の販売先はあるか?
これは、非常に重要です。
一番重要なのは来年600万円の生活をするために3.3haを作るんだというときに、販売先の担当者がいらっしゃったときに、こういう計画だから1.5倍に増やして下さい、と根拠を持った話をすると説得力がありますよね。
将来は、こういった計画でそして後継者を育てたいからという計画を話していく。そうすることによって、他の仲間の売り先のところを紹介していただけることがあります。それには、根拠が必要です。
そこまで計画ができたら、次は実行計画の作成に移ります。
これはカレンダー形式で前年実績、播種圃場名、播種面積品種、収穫圃場名などを書き込んでいくと去年この時期に播種して、いつ出荷できたかということがわかるので、それをもとに今年の播種計画などを書いていきます。
このメリットは、パートさんとか外部の方が入ってきたときに、こういった形にしておくことによって相手からの信頼を得ることが出来ることです。
播種計画、管理計画、施肥計画などはすぐに書けますが、資金計画になると説明に時間がかかりますので今回は省略します。
この資金計画も重要な部分ですので、独立支援プログラムで新しく農業を始める方は全てこれに記入します。お金がどこで足りなくなるか?などといったものが分かるようにしています。
これも重要なことですが皆様は当たり前にやっているものを形にしたものです。栽培方式と管理の向上を図るためのものです。
パートさんがいらっしゃるならば一緒に書き込んでいくことが一番望ましいです。パートさんなどが良いアイディアを持っているときがあるからです。
うまくいったときのものから分析を始めるのが良いです。次に今年の反省点へ進んだ方が、脳に良いそうだからです。今年の作付けで良かった点などを挙げるときにうまくいかなかったなかでも良かった点を挙げることが良いのです。
たとえば、長雨が続いていたのにあの時期にこれだけ収穫できたとか、播種がうまくできたとか必ずあると思います。そして、その要因を次に欄に書きます。
たとえば、播種機を交換したことやトラクターのクローラーを交換したとなどといった要因を書く。それで来年の強化点としてこの部分をどうしていけばよいのかと作戦を練ります。
播種機のメンテナンスを毎日やるとか、クローラー式を改造してみるとか、トラクターに屋根をかけて雨の日でも播種が出来るようにするとか、そのような強化点として書いていきます。
それが、終わったら次に反省点を書きます。
たとえば、ロータリーがかけられなかったところはどうしたら良いか?
それには収穫したらすぐにロータリーをかけるようにすると決め、収穫時にトラクターを持っていき、すぐにロータリーをかけられるように準備するというような事を具体的に書きます。
すると、一緒に働いている人と今年のうまくいった点とうまくいかなかった点とが整理できるので主体的に働く人が行動できるようになります。
農業支援プログラムを卒業した子がこの手法でうまくやってきています。
有機で作ったホウレンソウの畑が2haあるんですが、そこを管理しているのは今年で4年目になる女の子です。
去年は、草だらけであまりよくなかったのですが、この要因分析で効率的な作業体系に自ら変えるようにしてからうまくできるようになり、ホウレンソウの収穫量は非常によくなりました。
農業している人、経営している人は、頭では分かっています。
しかし、頭の中のものは相手に伝わりません。
そこで一緒に考えると反応し合う。同じ事を考えているからということは、仕事のなかで何が問題で、何がいいんだということを皆で考え共有しあう。
その人が納得すると行動に移せるようになり、自分で言ったことは責任を持つようになります。
逆に他人から言われたことは忘れることもあり責任を負わないという心理学の理論があります。ですからコーチングというコミュニケーションの方法があるのです。
これは相手の中からあるもの引き出すことがメインで、ティーチングというものは自分の持っているものを相手に教えるというもの。だいたい農家さんは自分が知っているので相手に教えたがります。それは技術的な面などですごく重要なことです。
作業のやり方までがティーチングの役割です。
あとの作業の流れや段取りはコーチングになってきます。
これはコーチングの要素を取り入れた分析方法で人が育っていくな、と思い私も参考にしています。この方法は実際に成果が出ていると思います。
このように来年への強化点、来年への改善点を書いていくことにより、1つか2つ、多くて3つくらいのものを解決することによってほとんどのことが解決に結びつくのです。
来年への管理のポイント(方針)ですが、その書き出した中から、たとえば草が多いということを強化点に取り上げた場合、収穫後の片付けが遅いとか草の管理がなってないなど色んな理由が挙げられます。
それだと、草刈りの人員を増やすとか、常に収穫のあとは草を刈って帰るようにするとかやり方が変わってくると思います。
今度は、その中から重要なものを取り出し3つ方針を決めます。たとえば草のない畑にするという方針を決める。そのために3つの目標をつくります。
①収穫後のロータリーをすぐ行う
②太陽マルチを敷いた1週間後に播種をする
③施肥管理の設計をする
などの目標を立てることにより次第にクリアされていきます。
これは、家族でやっている農家では当たり前のことだと思いますが、他人が入ってくると頭で考えていることは相手には分からないので見える化してあげるということが大切です。
この手帳は社員さんが全員持っていて、先ほど何回も出てきました経営指針書、組織図や全社方針などを社員さんと全員で作っています。
たとえば、全社方針というものは中期・短期・今年度というものがあって
①増収増益
②整理整頓
③顧客満足の基軸商品開発
④全員参加の組織体制の確立
この4つの方針について、それぞれの部門ごとが2つ以上目標を決めて取り組んでいます。そして、毎月ごとに個々人が目標達成出来たか?ということを書き込み、翌月の目標を立てます。
毎週行う月曜日の会議では、売り上げ報告、会議記録などを書き留めています。この資料の内容があればパートさんが入ってきても、パートさんたちの動きが全く変わります。
日本人は経営に参加したいと思う人が多いです。仲間に入りたい、という所属意識が高いので話をしてパートさんの力を発揮できるようにします。
自分の頭の中を見える化していくことが農家の重要なところだと思います。
我社もこの手帳を使い始めて5年くらいで、本格的に指針書などを作り始めて今年で3年目です。この計画は皆で作るので、一生懸命取り組みます。
しかし社長が作ってこれをやれといってもやらない。これはどうしてだろうと思うと、計画作りは夢があって結構楽しいからだと思うのです。
たとえば、家の間取りの設計を考えるのは楽しい。しかし、建ち終わるとつまらない。この間取りの設計を考える部分が、計画の部分に当てはまると思います。一番楽しい仕事を皆で計画することによって、社員さんと一緒に夢が叶えられる農業経営体になり良い野菜ができればいいなと思います。
********************************
■質疑応答
(質問)
新規就農し独立して9作目が終わったところです。
澤浦さんは3人からスタートして今の56人の仲間を持つにあたって、一般の慣行栽培で作ってきた方を仲間として受け入れる際、技術的な面でクリアしていかなければならない問題もあるかと思います。
どのようにして仲間を受け入れてきたのかを教えて下さい。
(澤浦さん)
野菜くらぶに入るためには、有機農業をやっていないと仲間に入れないというのは一切ないです。
なにが一番重要な事かと申しますと「正直なこと」です。正直ならば、慣行栽培でもいいと思います。
実例がありますが、慣行栽培している方がいて、その人は正直な方です。その方が、仲間に入りたいと申し出があり、そのときに有機農業をやっていない人がなぜ仲間に入るのか、というような波紋がありました。しかし次第に有機農業に変わっていけばいいじゃない、正直な方だからということで仲間に入れました。その方の農産物の出荷を始めました。販売先から毎月・毎週、農場を訪れて「このキャベツ美味しいですよね。どんな風に栽培されているのですか?」と聞かれるようになり、徐々に有機農業に変わってきました。
そして、その方が言うには有機農業はコストが掛からないですねと言います。もう一歩で、らでぃっしゅぼーやさんとお取引できる基準になってきました。
やはり、お客さんに会うのが一番の効果だったと思います。だから、有機農業や特別栽培をやっていないからといって仲間に入れないというような芽を摘むことはしません。
野菜くらぶのお取引先で基準が一番厳しいのはらでぃっしゅぼーやさんで、そこにお取引できるようになるのが1つの目標で、まだ到達できない仲間もいます。その仲間達にも裾を広げて対応出来る販売先の道筋を作ってあげることで、頑張ってステップアップしていければいいなと思っています。
独立支援でスタートした方たちにも初めは有機じゃなくてもいいといいます。その土地のことを知らないのに有機でやれと言うのは、自殺しろというのと同じです。その土地の有機農業者に教わって始めるならば別の話ですが、技術がないので、まずはそこの地域で行われている方法を取り入れてやることを第一にしています。まずは、そこの地域の方法で作って出していかないと生活していけません。それをやりながら有機に変えていこうよという流れで青森では去年から、らでぃっしゅさんに出荷できるようになりました。
そういった意味で 正直さ というものが一番大切ではないしょうか。
(質問)
農業は目先のコスト削減で成り立つとは思わないのですが、何を意識したら良いのでしょうか?
(澤浦さん)
コストを下げることは、良い作物を作ることです。経営や経理の面からみてもそう言えます。だから、土作りや小祝さんの勉強会などは非常に重要です。
たとえば、草のない畑にホウレンソウがあるならば収穫が凄く速い、そしてクレームも少ないのです。目先のコストといってもそういう意味でのコスト削減というのは凄く大事だと思います。
長期的にみると人の教育と思います。 家族経営でいくと自分の息子だと思います。現実的なことを考えると自分の息子を育てる必要があると思います。他に優秀な人がいれば当然ナンバー2で働いてもらう必要性もあります。自分の息子や社員さんなどを育てることが一番大事かなと思います。
もう少し中期的に見れば、自分の農業をどうしていくべきか?という夢を持ち、方向付けをしていく必要があると思います。たとえば、有機で農業をやると決めたらその方法をどんどん考えていくと良いと思います。
(質問)
独立支援プログラムの話で青森など行かれたときに農業委員会の方が簡単に農地を貸してくれたのかというような話をもう少し掘り下げて聞きたいと思います。
(澤浦さん)
ちょうど青森は耕作放棄地がありました。
いろいろ問題がありましてやめようかなと思っていたころに、ナチュラル農究の故原田さんが相談に乗ってくださって市長をご紹介していただきました。
この方も粋な人で「本当にここに来るのか?あそこから逃げ出す人はいるのに、来るのは本気か?」と言われて「本気です」と答えると市長さんが色々と動いて下さって、その市長さんの力で場所が見つかったのです。農業委員会を動かすことは本当に難しいです。自分たちでは動けないのです。たとえば、土地を持っていないと農家ではない。農家でないと土地を貸せない。卵が先か、鶏が先か?の関係です。そこは、事務局として当然の課題です。外部から入ってきて、まして関東から来るということは怪しい業者だと思われてしまいます。逆の立場でも、自分もそう思います。だから、資料など持っていき、テレビに出演したビデオなども送り、本当に農業をやっています、と信用してもらい市長さんからあそこの土地があるから良いよという了解を得ることができ借りることができました。そして、一旦耕作が始まって実際に畑で働く作業を見て信用してもらうことができ、その後は色々と話が来るようになりました。やはり、新しいところに行くことは色々と疑われますから、もし逆の立場でも同じようなことをしますからそこは粘り強くやることです。そして静岡も同様でした。
(質問)
澤浦さんは日々スタッフの方とどんなコミュニケーション方法で取られているのですか?大半は出張されている澤浦さんが普段スタッフの方たちとどんなやり取りをしているのか、宜しくお願いします。
(澤浦さん)
毎週月曜日に会議をやっていて、野菜くらぶではそこで業務報告などを受けています。何かあれば、電話ですぐに対応しています。それから、グリンリーフでも毎週月曜日に営業会議、幹部会議があり、そこで全部情報収集をしています。
これはグリンリーフの掲示板です。工場の売り上げの報告や、クレームのあった内容や、独立支援プログラムの研修生の人たちもここに書き込んでいます。
静岡などの離れている人たちのことは日々の状況が分らないので、役員の人たちがこれを見てすぐに連絡などをしています。
あとは、重要なことはメールや電話などで対応しています。日々の数量の調整など自分は聞いていないので、野菜が余っている、クレームがあるなどの状況は月曜日の会議で聞いています。
*******************************
【01 農産活動報告】
2010-01-20
丸山塾in千葉 開催報告【講義編】
丸山塾in千葉 開催報告【宮城さん堆肥場・圃場見学編】に続いて、あゆみの会の丸山さんの講義と蒸気除草機実演の概要をお知らせいたします。
*********【講義内容からピックアップ】**********
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(当日資料より)
【丸山さん】
土壌分析では重量法(慣行法)と体積法(Dr.ソイル)の差異があり、簡易型の土壌分析と何百万もする分析機械と比べてどれぐらいの信憑性があるのかややわかりにくいところがありますが、私たちのグループではDr.ソイルでデータをとりながらやっていきましょうというのが今のスタンスです。
Dr.ソイルの分析で苦土の下限値を切っている土壌でも、農協さんの機械分析では上限値を超えていることもありました。その際、たまたまかもしれませんが、苦土欠のような症状が見られたことがありました。
分析数値だけを見て一概には言えないこともあるのかなと思います。
美味しい野菜、感動的な野菜ができて初めて売りになるので、土壌分析結果はあくまで「指標」として確認してくださいという位置づけで考えています。
土の取り方でも、Dr.ソイルだと2ccのマスで土壌を採取するので、どこまで正確なのかはっきりと言えないこともあります。
分析結果はあくまで「指標」として活用するのであって、作物の観察を重視するほうが正解かなと思っています。
土壌pHはpHメーターで分析しています。
また試験管の数と作業性の面から、塩分測定は行っていません。
代わりにECメーターでECと塩分を測定をしています。
(ECメーター)
有機栽培の場合、ECがどこまで活用できるかよくわからない面があります。
ECが高いと硝酸値が高くなる傾向があるので、その部分は参考にしています。
(カリイオンメーター)
土壌分析ではカリイオンメーターも活用しています。
Dr.ソイルのカリ測定では白濁の程度が目視で読み取りにくいという現場の声があります。そこでカリイオンメーターを導入しました。
カリイオンメーターの数値はDr.ソイルの数値よりも若干高い数値がでるようです。その差が極端にある場合、目視の数字が少しおかしいのではないかという指標になると思います。
Dr.ソイルデジタルも出ていますので、それも併用しています。
Dr.ソイルデジタルでは苦土の測定だけが特殊で、Dr.ソイルに付属の試薬ではなくてDr.ソイルデジタル用の試薬を使って発色させる方法をとっています。
Dr.ソイルデジタルの場合も目視の数値と違うときがたまにあったりするので、経験の中でおかしいなと思うときは見抜いていくしかないのかなという感じがします。
(あゆみの会の土壌分析セット)
あゆみの会では写真のような感じで土壌分析をしています。
上記写真の場合、6検体が一度に分析できます。
Dr.ソイルデジタルでは、カリ・カルシウム・苦土の三点だけやっています。
残りは目視でやっています。(※目視の方が作業が早いため)
気になるところだけをピックアップしてデジタルでも測定して目視の精度を高める方法もとっています。
Dr.ソイルの場合、2ccの土を採取して測定するので、適切な場所で土壌をとったかに左右されることがあります。
追肥の際の土壌分析は吸収根のある部分の土を取らないと意味がないことも。基本的に吸収根があるところの土を採取すること。その部分を間違えるといくら分析をしても活用できるデータにはなりません。
基本的に根を観察しながら土を取ってくださいとお願いしています。
根がどこまできているのか、これからどの方面に根を張らしていくのか、どのように吸収させていくのかイメージできるようになりますし、追肥前の土壌分析の土もうまくとれるようになります。
土の取り方では畑の五カ所ぐらいからという話をするんですけど、経験上から五カ所もいらないかなと思います。
施肥後、圃場の中で生育のばらつきがでたりします。
畑の中で優劣がでてきたら、その時に分けて土壌分析をして土壌改良をしたり、作をかえたりするのが適当かなとも思います。
有機質肥料を使用する場合、有機質肥料の特性を把握しないと、初期肥効がでないまま作物に悪影響を及ぼしてしまうこともあるので、肥料については水にとかして観察してみたり、畑の一部に入れてみて観察してみたりししてみてください。
土壌pHの高い畑に、pHの高い資材、例えば水酸化苦土肥料などを入れると、さらにpHが高くなって肥料が効かなくなります。
苦土ばかりでなく鉄やマンガンなども効かなくなるので、土壌pHを確認しながら、土壌pHが高くなりすぎないような肥料設計が必要です。
堆肥や腐植をうまく活用することで土壌pHが下がってくるケースも見受けられます。宮城さんのように緑肥を活用することも土を軟らかくすると同時に土壌pHを下げる働きがあるのかなと思います。
化学性で注意したいのは土壌分析はあくまで指標であってそれを絶対と思わないでほしいという点です。
作物をよく観察してどのような状況なのか推測しながらやっていくことです。
宮城さんのように新鮮で活動的な放線菌が多い堆肥を堆肥舎にもどしながら、新鮮な生糞に種菌を混ぜて活用する場合、生糞の状態も大きなポイントのひとつとなります。
納豆をつくる場合でも雑菌がつくまえに納豆菌をつけると思うんですが、堆肥も同じです。新鮮なうちに目的の菌をつけてあげて、菌が活動しやすい条件をつくってあげることです。
堆肥の発酵温度は62度とか65度までがよいとか聞きますが、発酵の初期段階では70度近くまで上がってしまいます。生産者の話を聞くと最終的には70度近くまで上がっているようです。
最初の発酵ではそれぐらいになるけれども2回目の発酵では60何度、3回目の発酵ではもう少し下がります。
最後の切り返しの時に鉄などを入れると温度が確実に上がるようなので、最後に温度を少し上げると同時に鉄の補給をしてあげることも有効なのかなと感じていますがまだ未知数なところもあります。
(当日資料より)
堆肥管理のポイントの一つが水管理です。
1週間に1回切り返してというのが理想的かもしれませんが、作業面から一ヶ月に1回切り返していくパターンが多いです。
宮城さんは原料が来てしまうので切り返しは頻繁に行っています。
発酵熱で水分が少なくなってくると温度も下がってしまいます。
堆肥の温度は微生物が活動しているエネルギーです。
微生物が活動すれば温度が上がります。温度が下がると言うことは微生物が活動していない、活動自体が弱くなってしまったといえます。
これは餌がないか、水分がないなどの原因があります。
水分がなくて発酵が止まってしまうというケースも。
発酵熱が出ていると言うことは、その分蒸散も激しいということです。
発酵をスムーズにすすめるためにも切り返しが不可欠と言われています。
有益な菌をまんべんなく堆肥に行き渡らせるようなイメージで切り返しを行ってください。その際、水も供給して発酵がスムーズに行われるようにしてあげてください。エアレーションをつけると乾燥しやすくなるので注意が必要です。
ミネラル欠乏と思ってミネラルをあげてもなかなか改善しなかったりすることがありますが、有機物が未分解のために悪さをしていることも多々あるのかなと感じています。
その際には、地面を掘って根っこの状態を見たり、作物の状態を確認したりして、どこに原因があるのかを観察して対応していくのが現実的にはいいのかなと思います。
あゆみの会では、Dr.ソイルによる土壌分析が主力ですが、つち博士、RQフレックス、みどりくんなどもあります。
土壌分析を依頼する場合、用紙(※上記写真)に必要事項を記載して頂いてからやりますが、あくまでも土壌からくる情報も大きなものがあるので、水はけや前作の肥料などの情報は分析・施肥設計をする際の重要な情報となります。
Dr.ソイルではアンモニア態窒素や硝酸態窒素がでないというか、わかりにくいというのが現状です。
宮城さんのカブの圃場でも、硝酸態窒素やアンモニア態窒素がほとんどでない状況で、(有機質肥料の)8-5-3を2袋だけ、つまり窒素で3.2kgを施肥しただけであのような立派なカブができています。みやま小カブでは窒素過多状態、窒素が先行している状態が見受けられるほどです。
この地域ではカブを育てるのに化成肥料で窒素16kgぐらいをいれますので、畑で作物を作りながら確認しながらやっていくしかないのかなという感じもします。
以前、分析結果にあわせて窒素を入れた際にカブのおしりが丸まらずとがってしまい辛さが目立つことがあったので、地力があればDr.ソイルで窒素成分が検出できなくてもそれなりに抑えていくしかないのかなと思います。
一方で有機でやっていても硝酸態窒素の数字が高くなることがあります。
傾向的に圃場が乾燥すると硝酸態窒素が高く出るようです。
水分過多にするとベト病がでることがあるので、作物を見ながら対応していくしかないのかもしれません。
今回の勉強会で一番のポイントと考えているのが「裸のミネラルか、裸でないミネラルか」です。
ミネラルを効率的に効かせるため、発酵をかけることでミネラルをキレート化します。(→裸でないミネラルにする)
宮城さんの圃場もリン酸は下限値ぐらいですし、他の生産者でもリン酸が一桁台の方もいますが、その場合でもリン酸欠乏が見られません。
その中でピーマンをつくっても花芽がきちんとつくし、障害もでない。
有機態にリン酸がくっついて(キレート化することで)、畑で鉄やアルミに固定化されにくい。だからリン酸が少ない状態でもリン酸の欠乏症がでないと考えています。
分析数値は分析数値として、それに見合った肥培管理をしますが、作物がどのようになったのかがより重要で、その情報を次の作の施肥設計などに活かしていくことです。
対応していかないと片手落ちになってしまったり、同じ誤りを繰り返してしまうことにもつながります。次の作物に活かせるようにしてほしいです。
産地としての課題は苦土がたまっていること。
自分の中で気をつけているのが、ク溶性の苦土の施用です。
苦土が残りやすい傾向がでています。
チンゲンサイの例では、初期の頃に苦土欠のカリ過剰がでていたので毎作苦土を入れて頂いていましたが、途中から苦土が高くなったため施用を止めても、止まらずにまだ上がっていって、しばらく高止まりして、それから下がってきてはいますが下がり切れていないのが現状です。
苦土肥料は2~3年はまったく入れていません。
それでも苦土が高めの状態になっています。
苦土に関しては要注意ですが、その苦土が過剰だからといって何か障害があるかというと、現状では何もありません。
現在はミネラルよりも圃場の団粒構造の改善の方を進めた方がいいのかなと思っています。
これが宮城さんのニンジン畑の太陽熱処理の写真です。
太陽熱処理で除草作業はかなり軽減できます。
太陽熱をしても効く・効かないと聞くことがありますので、どのような条件で効くのかを確認していきたいと思います。
来年あたりからpFメーターを入れてデータ取りしながら見ていきたいと思っています。
太陽熱処理では1反あたりマルチ代で1万ぐらいしますが、除草の手間などを考えると安上がりかなと思います。
写真のキャベツ畑では一部だけ虫害がひどく、その他はほとんど問題になっていません。
ひょっとしたら、虫害のひどい部分に肥料がたくさん入ってしまったのかもしれません。過剰窒素だったのか、圃場によっては水がたまりやすい場所で発酵がうまくいかなかった場所だったのかも。
虫たちは子孫を残すために必要な成分があるところに来るのであって、べつにキャベツを食べにきているのではありません。同じキャベツであっても養分がなければ食べ物ではないと判断するのが虫たちではないかと、この写真からふと思います。
いちご生産者の菅谷さんは、こ じんまりしながら良いイチゴをつくっています。
写真は地温を測っているところですが、40cmぐらい下で20何度、冬場でも18度ぐらいです。
菅谷さんは今年は少しやりかたを変えていますが、昨年まで1反あたり30tぐらいの堆肥を入れてイチゴを作っていました。
堆肥場でも話をしたとおり、微生物が活動するとそれだけ熱を出すので温度が下がらないんです。
菅谷さんが研究したところ、13度前後がイチゴの低温障害がおきる温度で、22~23度が高温障害にあたる温度帯にあたるそうで、堆肥の発酵熱を活用することで手ごろな温度帯になっています。
菅谷さんは200坪ぐらいある敷地の中で堆肥をつくっています。
菅谷さんのところは屋根もなく、エアレーションもなく年間30~40回ほど切り返してつくっています。切り返すたびに何かをいれて作っています。
堆肥の中の微生物の世代交代、生活環境をちゃんとイメージしながらやっているのかなと思います。
菅谷さんも去年までできあがった堆肥の半分ぐらいを残して翌作の原料として使っていました。昨年までは90%まで土手草を使ってやっていまして、1年間で土の状態まですすみます。
大葉を栽培している吉田さんの圃場の土です。
ハウスとハウスの間の土手の土ですが、団粒になっています。
手で簡単に掘れるほど軟らかい土です。
大葉自体が加温しながら灌水も常時やっているので、その水が土手に流れてきて微生物が生息できる状態になっているためそうなっているのかなと考えています。ちなみに吉田さんの圃場も団粒化しています。
水の管理をきちんとおこなうと土の管理がしやすいのかなという感じがします。
堆肥づくりは火をおこすことと似ていると思います。
宮城さんの種菌堆肥ように、ある程度大きな種火があるところでは火をおこしやすくて、ちょっと湿った薪をいれても回りの熱で水分がとんで燃えてくれます。
それが小さな種火でこれから火を少しずつ大きくしようとしているところに濡れた木をガンガンいれたら種火もろとも消えてしまいます。
それと同じで最初は種火を増やしていく感じで堆肥づくりをやっていくと良い堆肥がつくれるんじゃないかと思います。
種火となる種菌堆肥をしっかりとつくっておけば天候にあまり左右されない堆肥づくりにつながると思います。
【質問】
宮城さんの放線菌の多い堆肥を見せていただいて本当に良かった。
放線菌ではなくて納豆菌で堆肥づくりをされている事例などをご存じなら教えて頂けないでしょうか。
【丸山さん】
納豆菌は小祝さんの勉強会でもよくでてきますが、興味がある方が実際にやったという話は聞きますが、それが続いているかというと続いていないような感じもします。その菌だけを増やすポイントがつかみきれていないこともあるのかもしれません。納豆菌を安定して活用するまでいっていないのかなと思います。
あゆみの会では、活性水や乳酸菌などを拡大培養して活用することで食味向上につながるかと期待していますが、堆肥場に入れて面白い結果がでているので、まず自分たちのグループで確認していきたいと思います。
(以上で丸山さんの講義は終了です)
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【つち博士の紹介】
土壌分析機「つち博士」の開発メーカーの麦島さんより、つち博士を簡単に紹介をいただきました。
【麦島さん】
「つち博士」は本体にLEDを組み込んだ、いわゆる分光光度計です。
測定には試験管ではなく充填式のカートリッジを使用しています。
土壌分析で絶対値を求めようとするとかなり無理があります。
10万円~20万円そこそこの機械で絶対値を求めようとするのは所詮は無理だと考えています。そこで(つち博士などの分析では)相対比較で活用します。
これが一番手っ取り早いと思っています。
現場では圃場で良いところと悪いところの土を取って頂いて、その化学特性を見ましょうと説明しています。
絶対値を求めてどうこうではなくて、良いところと悪いところを見て化学性で差があるかないかをまず調べてみる、これが最初じゃないかなと思います。
化学分析をする前に皆さんにぜひやっていただきたいことはpHとECです。
pHとECを測定すればおおむね検討がつくだろうと思います。
最近出版された「土は生きている」という本、これをぜひ読んで頂きたいと思います。
この中に腐植という言葉が出てきます。
腐植と同時に熟土という言葉が出てきます。
熟土というのが私どものこの土壌分析の将来目指す測定項目なんです。
土がどの程度熟土になっているのかを調べたいということで、これから測定できるようにしていこうと考えています。
ご関心のある方は電話にてお問い合わせください。
これまで10年近くかけて全国の堆肥を分析してきました。
そのデータを見て頂きます。
全国の約80点の堆肥を分析してわかったことは、皆さんよく誤解するんですが、微生物の数というのは堆肥の分解能力を左右する要因にはなっていないということです。
なにが要因になっているかは本当のところはわからないんです。
微生物の世界というのはわからないんです。
人間がつかんでいるのはバチルス菌、放線菌、糸状菌ぐらいですね。
あとはいろんな微生物がいるんですが、そこまで見るにはものすごい労力とお金がかかるわけです。
私どもは微生物がなんであれその分解能力が高いか低いかを評価していこう。総合的に見ていこうと考えています。
何の菌の分解能力が高いか低いかということは別に評価しないんです。
それが何であろうが、分解能力が高いか低いかがわかれば、土の中にそのような堆肥を入れても少なくても土の中の微生物分解能力はそれなりに確保できるだとうという想定のもとやっています。
そのような観点でまずは堆肥の分析をしようとしてはじめました。
棒グラフが高いのが、我々の言う分解能力の高い堆肥という位置づけをしようと考えています。
グラフの低い堆肥が菌体数がいないのかというと、菌体数はいるんです。
実はこのグラフは炭水化物とタンパク質の分解能力のバランスを見て評価したグラフなんです。
これまで見た中で一番良い堆肥というのは保育園の食物残さだったんですよ。
なぜならば保育園の子供が食べる食べ物というのはすごく健康でほとんど問題のない良い材料だったんですね。それが今までの最高のレベルです。
そのほかは似たり寄ったりです。
堆肥が良い悪いと議論をするんですが、もし定量的に評価するのであれば分解能力はどうであるか、炭水化物・タンパク質の分解能力はどうかということを客観的に数値に置き換えて評価していこうと10年近くやっています。
最近は全国から分解能力を調べてくれと言う依頼が増えてきまして、だまっていてもデータが蓄積しています。
またご関心があればご連絡ください。
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【蒸気除草機実演】
【蒸気除草機 動画】
蒸気除草機のメーカーの丸文製作所さんに、乗用蒸気除草機のデモンストレーションをしていただきました。 (※上の画像のボタンをクリックすると動画が再生します)
写真の自走台車に載っているのが、ボイラー・軟水機・エンジン・貯水タンクなどで緑色のフードの中から高温蒸気がでてくるようになっています。
ボイラーで高温蒸気がつくられて、ホースを通じて緑色のフードの中が100度前後の蒸気に満たされます。
動画のスピードで表面の数mmが処理されます。
20秒以上おなじ場所に止まると5mmから1cmぐらいの深さで処理されます。
実際の圃場ではそんなに止まっていられないので、ある程度大きくなった雑草や芽がではじめている雑草など、初期の雑草を抑える使い方がおすすめとのことです。畝たてした10日後ぐらいに蒸気処理した場合に一番効果ありとも。
蒸気処理後、晴天が一日でもあれば雑草は枯れ上がってきます。
雨の場合は枯れるまで少し時間がかかるそうです。
写真の水タンクで1反分、約2時間半ぐらいで処理できます。
自走台車も含めて300万円少々、自走台車がない場合は220万円前後のお値段。(詳しくは丸文製作所さんへお問い合わせください) ![]()
燃料は灯油で水があれば蒸気が出始めるまで5分から10分ぐらい。
メンテナンスは40時間に1回、軟水機の掃除が必要となります。
丸文さんで研究されているのが作が終わった後、トラクターで耕運する前に蒸気除草機で圃場の中を走って次作の雑草を抑制すること。
たとえば夏の間に落ちてしまった種子を耕運する前に一度煮てしまうので、次の春の雑草の発生抑制が期待できるということです。
すでにこの冬から各地で実証実験を積み重ねているとのことです。
参加者も興味津々で、育苗土の殺菌とかのアイデアもでました。
参考までに昨年6月24日(水)、あゆみの会事務所にて開催されました丸文製作所さんの新型除草機のお披露目会の模様などもご参照ください。
これが新型蒸気除草機だ! (※動画付き)
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以上が丸山塾in千葉 開催報告【講義編】です。
(Radix事務局 成田)
【01 農産活動報告】
2010-01-18
谷先生勉強会in札幌 開催報告 『家畜糞尿や堆肥を活かした土づくり』
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2009年11月22日、札幌にて北海道ブロックの土づくり勉強会を開催しました。
講師は大牧農場の五十川さんよりご紹介いただきました、帯広畜産大学の谷昌幸先生。
谷先生のご専門は土壌学・肥料学・農畜産環境保全学で、北海道各地の圃場で穴掘りをしながら土壌中における有機物の機能や土づくりなどを詳しくご研究されています。
(※谷昌幸先生のプロフィールなどは帯広畜産大学の下記ページを参照 ↓
http://www.obihiro.ac.jp/ichiran/tani_masayuki.html
谷先生は生産現場の情報を大切にしています。
『現場で生産者の試行錯誤、トライアルを見させていただいて、そこからいかに科学的な根拠を持ち出そうということを常に考えています』
『次の世代にどのようにつたえていくか、経験や知識が頭にあってもなかなか次に伝わらない、皆さんの取り組みがどういう科学的な根拠、そのようなデータに裏付けられているかをクリアにして、わかりやすく組み立てていくのが我々大学側の使命と感じています』
このように生産現場からの情報を科学的にまとめあげて、わかりやすく現場にフィードバックしてくれる穴掘り大好きな先生です。
(日本はもちろん、世界各地で穴掘りをしながら土を調べているそうです)
それでは、勉強会の概要をお伝えいたします。
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「家畜糞尿や堆肥を活かした土づくり」
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【谷先生】
堆肥の発酵は水分含量だけではなく、酸素がきちんと通ることの方が重要。
(特定の微生物で発酵させることはあまり意味がない)
堆肥づくりには、「適切な酸素」+「土着の微生物」できちんと発酵させることが一番大切。
堆肥化するとミネラルを効かせることが可能となる。
リン酸の肥効も上がる。
堆肥にくるまれたリン酸は植物に吸収されやすい。
堆肥中のリン酸の肥効は100%といってもさしつかえない。
水分の高い原料だと好気発酵しないので温度は上がらない。
嫌気発酵して硫化水素などが発生して臭くなる。
水分調整(※水分75%)したら、発酵が進み温度も上昇。
ポッド試験では水分調整して発酵させた堆肥施用した方が生育が良い(※生堆肥を入れた方は生育が悪い)
北海道では生堆肥が圧倒的に多い。
生糞の処理はどうにもならないのが現状。
どうにかするのをやめて、そのかわり土の上に撒布する。
生糞を土の中にはいれないで活用し始めたのが「土ごと発酵」。
(※「土ごと発酵」の取り組みは現代農業の記事になっています)
硝酸態チッ素は微生物の反応をうけていろいろ変化する。
畑の場合は硝酸化成によって硝酸態チッ素になるのが自然。
作物の中にはアミノ態チッ素を吸収できるものもいるが、基本的な植物は硝酸態チッ素が大好き。
硝酸態窒素を取り込んで光合成産物とあわせて、アミノ酸やタンパクを合成する。
畑の中ではほっておいても硝酸になるのが自然の摂理。
忘れてはいけないのが硝酸菌も生きていると言うこと。
硝酸をつくることでエネルギーを獲得し彼らも生きている。
彼らを土の中から排除する必要はなにもない。
硝酸が悪いと説明される方が増えている。
糞尿だろうが魚粕だろうが化学肥料であろうが(最後に硝酸になるのは)一緒。
有機態チッ素やアンモニア態チッ素がだんだんと硝酸化成作用をうける。
できた硝酸を作物が吸収する。なにも悪くない。
アミノ酸を吸収できる作物もあるが多くはない。
昨年フィンランドに行って森の土の調査をしてきた。
真っ白な土で、ロシアにもある酸性の砂。
そこでりっぱな作物が生育している。かれらはアミノ酸を吸える。
なぜアミノ酸を吸えるようになったか?
アミノ酸が無機化するのを待っていたら他のものに取られてしまう可能性がある。だから戦略的にアミノ酸を吸えるようになったのかもしれない。
糞尿中のタンパク質(腸内細菌のかすなど)がだんだんとアンモニアになり、亜硝酸になり、硝酸になるというのが普通の流れ。
糞尿を入れることで出てくる硝酸は悪くない。
土の中にはいろいろなタイプの有機物がある。
これが大事。
土壌微生物が硝酸やアンモニアなどを取り込んだバイオマスチッ素がある。
有機栽培圃場のバイオマス(※微生物量)は慣行区よりも圧倒的に高かった。
バイオマスがチッ素や養分の貯蓄源になっていることがポイント。
土のもともともっている機能は「ものを蓄える」こと。
「保持する力」だけではダメで「離す力」も必要。
バイオマスがないと、一方通行でおわってしまう。
バイオマスがあると、土壌中にプールされてぐるぐると回る。
バイオマスチッ素のプールがあって、かつ窒素が取り出せるプールであることが大事。
これが「土づくり」だと思っている。
良い土は「貯める力」と「出す力」を両方持っている。
良い土というのは何もしなくても上手にやってくれる。
その機能を高めることが一番大事。
「腐植」は大事な成分。
この堆肥はどんな成分を含んでいるのか、どんな機能をもっているのか、どんな土に入れるのか、どんな土にあうのかを明確にする必要がある。
なんとなく堆肥を使うだけでは後世に伝わっていかない。
日本の黒土(黒ボク土)と世界の黒土(チェルノーゼム)
チェルノーゼムは非常に肥沃土が高く、肥料なしで小麦をつくれる。
黒ボク土は本来はやせた土。
同じ黒いのに何が違うのか?
土壌有機物は両方とも高い、土壌生産性も両方とも高い。
しかし土壌肥沃度がまったく違う!
黒ボク土は安定化した腐植物質を多量に含む。
含まれているコロイド成分(腐植・アロフェン・イモゴライトなど)によるリン酸固定力がきわめて大きい。
一番の問題は化学性で、微量要素の含有量や供給量が低い。
植物が吸える状態になっていない。
十勝もほとんどが黒ボク土。
何が問題になるかというと、やはりリン酸。
土壌にリン酸が固定化されて効かないリン酸となりやすい。
黒ボク土になぜリン酸がくっつくのか。
アロフェンなどとイオン吸着しているうちはいいが、配位子交換反応によって固定化されるとちょっとやそっとで植物が吸収できない。
化学的にがっちりと吸着されてしてしまっている。
燐鉱石の枯渇と高騰の問題。
日本はほぼ100%輸入に頼っている。
50~60年たつと今の技術で掘り出せる燐鉱石が枯渇するとも言われている。
1990年半ばからアメリカが燐鉱石の輸入をストップ、中国も出さなくなってきている。
輸出する国が少なくなり、燐鉱石の質も悪くなっている。
(※リン含有量が少なくなる、カドミウムの含有量が高くなる、
リン酸肥料のカドミウム含量が高くなる、さらに放射性元素も増えてくる)
根に定着するようなリン酸溶解菌。
土全体に入れるのではなくて種に付着させる、あるいはポットに入れる。
根面に定着させるか、ポットに入れるか、微生物を効果的に利用するにはそうするしかない。
もう一つの考え方は、土の中のリン酸溶解菌の活用。
土の中にいるリン酸溶解菌をなるべく選択的に増やした方が、外から良い菌を入れるよりもよい。
どうしても堆肥にならない生糞を、土の微生物の餌にしてしまおうと考えた。
生堆肥は絶対に土の中にすき込まないというのがポイント。
大事なのは酸素がある状態で微生物の餌にしてしまうこと。
微生物が糞の中に入っているタンパク質や繊維をどんどん分解していく。
その過程でアミノ酸、硝酸、各種有機酸ができる。
いろんな微生物が増える中で、有機酸を出す微生物が絶対に増えてくる。
特定のリン酸溶解菌を増やすのではなく、土着微生物を増やしたほうがいいんじゃないかという発想。
表面に、糞とエン麦と麦かん、森の土層に似たようなものをつくって、雪解け水と一緒に(有機酸を)土中に流す、これが「土ごと発酵」。
大事なのは土の表面でやること。
森の中では糞が土中に入っていることを見たことがない。
全部土の上にある。自然はとてもうまくできている。
生糞をただ入れればいいというわけではない。
有機酸や機能性成分をどのようにうまく使うかである。
硝酸態チッ素があるところに炭素が入ってバイオマスとなり、硝酸態チッ素がバイオマスを通じてぐるぐると回ることが重要。
硝酸態チッ素ができて終わりではなく、バイオマスチッ素となってぐるぐるとまわっている状態が普通。
動的な平衡となっている。
耕地以外の自然界では有機体のリンがぐるぐる回っている。
葉っぱなど有機物から溶けたリンがぐるぐる回っている。
不足しているリン酸は土壌の鉱物から溶け出てくる。
自然界では土壌中の鉱物中のリン酸が徐々にでてくる。
しかし畑の中のリン酸と比べると圧倒的に少ない。
可給態リン酸を測定してもほとんど入っていない、検出できないぐらい少ない。
(検出されないが)実際は有機体リンという形でぐるぐる回っている。
キレートの再確認、キレートとはギリシャ語でカニのハサミのこと。
大学院生の時、森の中の有機酸の研究をずっとやっていた。
森の中に有機酸がどれぐらいあるのか、どういうふうに変化していくのか。
(有機酸を外部から投入するより)有機酸を増やす米ぬかを入れたり魚かすを入れた方がよい。
それをえさにする微生物が発酵することでキレート物質が出てくる。
土にカビが生えることがよくないと考えている生産者が多い。
一時的に生えるカビはは全く問題ない。
キレート物質、クエン酸、リンゴ酸といったものはカビが作る。
畑の土というのはカビが少なく細菌が多い。
森の土はカビが多く細菌が少ない。
土ごと発酵、春になるとどうなるかというと、カビでびっしりになる。
カビが有機酸をつくってくれる。
カビがある程度繁殖したあとに、カビを分解する放線菌、さらに放線菌を分解する細菌が繁殖し、そしてまたもとにもどる。
カビをはやすことは有機酸類をつくることに有効。
おなじ場所の森と畑では、森の方がキレート力が高い。
畑の土はものを溶かしだしたり運ぶ力が弱っている。
堆肥を連用している圃場の方がキレート力は高い。
キレート力は畑でも変えられる。
アロフェンにリン酸が吸着しているところに、シュウ酸などがあるとリン酸と置き換えてリン酸を溶かし出す働きがある。
シュウ酸で溶かし出すという働きを持っているのがソバという植物。
だからソバは痩せ地でも育つ。
同じような機能をもつ作物としてアブラナ科の一部の作物がある。
外部からシュウ酸を入れる、クエン酸を入れる、これは効果の薄いやり方。
土の中に入れるとほとんどのシュウ酸、クエン酸、あっという間に分解される。
根っこまで届かない可能性がある。
シュウ酸やクエン酸を増やす土作りをちゃんとやったほうがいい。
土壌中にリン酸とクエン酸を同時に入れると、リン酸だけの時に比べて土壌吸着が半分ぐらいに抑えられる。
クエン酸があるとリン酸が土にくっつきにくくなるので、それだけ植物が吸いやすくなる。少ないリン酸でも効率よく吸収させることができる。
先にリン酸を入れてからクエン酸を入れてもリン酸は土から離れない。
先にクエン酸を入れてからリン酸を入れた方が吸着が少なくなる。
土中にキレート物質がたくさんある状態の土のところに施肥をするからリン酸の効きがよくなる。
あとからクエン酸をまいてどうにかしようと思っても遅いし、効果もうすい。
有機酸を出す菌を入れるのではなくて、土の中にもともといる菌を増やす方法を考えた方が早いし楽。
カビをはやすような土作りをして有機酸をだすような方法も一つの方法。
もっと簡単な方法として、堆肥を活用することでリン酸を吸わせることができる。
チッ素をカリを十分に与えて、リン酸を徐々に入れていくとリン酸施用量が多くなるほど生育がよくなる。リン酸が少ないと生育しない。
リン酸は入れた量の10%ぐらいしか吸収されていない。
残りの8~9割は土に吸着されている。
堆肥中には溶存腐植酸という物質がたくさん入っている。
これらがリン酸を守ってくれる。
少量のリン酸を堆肥でくるんでいれた場合、同量のリン酸だけを入れた時に比べて圧倒的に生育が良くなる。リン酸の吸収効率も格段にアップする。
リン酸を守ってくれるキレート物質が土中に大量にある条件をつくっておくこと。
それができない場合、堆肥にリン酸を入れることで使えるリン酸源として使うこと。
日本の土壌のように鉱物表面にアルミが露出していると、銅・亜鉛・鉄イオンなどがくっつく。
アルミがマイナスの電気をもっているので、プラスの電気をもったマグネシウムイオン(交換性マグネシウム)がイオン結合する。
亜鉛とか銅とかは配位結合、リンと同じでがちっと結合してとれなくなる。
亜鉛や銅などのミネラルを挟み込んでとれなくする。入れても効かない。
水に溶ける腐植と亜鉛がキレートをつくるとアルミにくっつかなくなる。
ミネラルは、いかに効かせるかが大切。
ミネラルが効くような土の状態をつくる方法を考えた方が合理的。
自然界もそのようになっている。
たんに入れるのではなく効かせる形でいれることで、ミネラルの吸収も大きく変わる。
小麦に銅欠乏がでる場合、硫酸銅の施用がすすめられる。
しかし硫酸銅をそのまま入れても効かないということは実験でわかっている。
(土に入れて1時間以内に99.9%の銅が土に吸着されてしまう。黒ボクの場合、 1時間以内にくっついて、かつイオン交換できる形でくっついているのは5%しかない。残りの95%は配位結合でがちっと結合している)
そこで堆肥の中に硫酸銅を入れて、堆肥に守ってもらう。
結果は堆肥と銅を一緒にいれた方がきちんと生育する。
堆肥をつかうと銅だけでなく亜鉛の吸収も抜群によくなる。
普通は拮抗作用が認められるが、マンガンの吸収も上がる。鉄は微妙。
なおこの実験ではきちんと発酵させた堆肥を使用した。
この点が先ほどの土ごと発酵とはちがうところ。
(※きちんと発酵させることで腐植物質の含量が多くなっている)
堆肥の中に黒い腐植物質が含まれている。
水にとける腐植物質。ここがすごく大事なところ。
水に溶ける腐植物質がすごく大事だということが最近わかってきた。
堆積1ヶ月後と12ヶ月後の堆肥の水抽出物の比較では、12ヶ月後の方が真っ黒。 この黒い水の正体は腐植酸。すごい機能性成分をもっている。
良い堆肥をつくることはすごく大事。
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(成田注:堆肥の機能性についての詳細な説明が以下に続きますが、堆肥の機能性についての部分は未発表データも含まれていることもありブログ上では割愛させていただきます)
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良い土とはほうっておける土。
ある程度、環境変化に対して自立性の高い土をつくっていくことが本当の土づくりかなと思う。
いろんなところを科学的に証明していきたいので、皆さんから現場のヒントをもらえれば助かります。
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以上が谷先生の勉強会の概要です。
「家畜糞尿や堆肥を活かした土づくり」 の話、とてもわかりやすい内容で新しい知見が多く、参加者もおおいに刺激になったと思います。
特に良い堆肥が持っている水溶性腐植の機能性についての話は驚きの内容でした。あらためて堆肥のすごさを再認識しました。
堆肥の活用と土づくりに役立つ谷先生のご研究、これからも成果発表を楽しみにしたいと思います。
(Radix事務局 成田)
【01 農産活動報告】
2009-12-29
丸山塾in千葉 開催報告【宮城さん堆肥場・圃場見学編】
2009年11月13日(金)、千葉県香取市にて丸山塾を開催しました。
講師は、あゆみの会の丸山訓さん。
(丸山さんは、あゆみの会の生産者の施肥設計や現場指導などを幅広くご担当されています。また丸山さんのDr.ソイルによる土壌分析数は日本有数だと思います)
今回の勉強会では、丸山さんから土壌分析の活用、土づくりや腐植の大切さについてお話をいただきました。
同時に、あゆみの会を代表する生産者の一人、宮城さんの堆肥場・圃場を見学しながら宮城さんの種菌堆肥の活用法と土づくりについてのお話をいただきました。
それでは、午前中の宮城さんの堆肥場・圃場見学編よりスタートです。
(※丸山さんの講義と蒸気除草機の実演概要については丸山塾in千葉 開催報告【講義編】にて報告します)
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宮城さんの堆肥場見学
(宮城さんの堆肥場 右写真の左下に見ているのがエコキッチンクラブの乾燥残さ)
【丸山さん】
左側の堆肥置き場では、らでぃっしゅぼーや会員さんからのエコキッチンクラブの乾燥残さと、首都圏・神奈川センターから出た乾燥残さが持ち込まれて活用されています。これが種菌堆肥の原料となります。
1週間に400~500kgぐらい持ち込まれます。
そのため切り返しは頻繁に行われています。
乾燥残さが雨にあたると生に戻り虫などが発生してしまうので、すばやく種菌堆肥と混ぜて良好な発酵をすすめています。
(エコキッチンクラブの乾燥残さと拡大写真)
左の堆肥置き場には今回の勉強会のため、乾燥残さを混ぜないで置いてあります。その上の部分は3日前に切り返ししたものです。
(参加者に説明する丸山さん)
乾燥残さと近くの養豚場からもらってきた豚糞に放線菌が繁殖している種菌堆肥を混ぜて発酵させています。
養豚場でも堆肥化処理をしていますが、堆肥になる前のものをもらってきて、この種菌堆肥を混ぜるようにしています。
(参加者に種菌堆肥を説明する丸山さん)
右側の堆肥置き場の堆肥は完成した種菌堆肥。
白っぽく見えるのが放線菌のかたまりです。
宮城さんは堆肥にエアレーションをかけていません。
エアレーションをしなくてもこのような(乾燥した)種菌堆肥ができます。
このように宮城さんの種菌堆肥はかなり乾燥しています。
これは宮城さんがわざと発酵を止めているところがあるからです。
現代農業の宮城さんの紹介記事にもある通り、近くに養豚場があるので、そこからの豚糞をもらってきて、種菌堆肥と1:1ぐらいの割合に混ぜて発酵をかけます。
その際、屋根のある堆肥場の中にいれるのではなくて、屋根のない堆肥場で発酵をおこないます。
(※屋根がなくても堆肥の上部にシートが覆われます)
発酵が進むと放線菌が表層で繁殖しはじめます。
表層から少し内側に入ったところに放線菌が繁殖するので、ある程度繁殖したらその表層をけずりとって種菌堆肥の中にもどします。
表層が削られると内部が表に出て酸素が供給されることによって放線菌の層が再びできます。そしてその部分を削って種菌堆肥場へもどす、その繰り返しで種菌堆肥を確保しています。
そのため屋根のある堆肥場の中は放線菌豊富な種菌堆肥となるわけです。
畑に入れる堆肥は新鮮な豚糞堆肥に種菌堆肥を混ぜて1週間ぐらい発酵をかけてから畑に入れます。畑に入れてしばらく時間をおいたり、太陽熱処理をしたりして、十分に土になじませてから播種をする流れになっています。
現在の種菌堆肥の温度は60度前後です。
乾燥残さの扱いが難しく、いかにうまく種菌を仕込むか、種菌の量と餌の新鮮具合がキーポイントになっているのではと思っています。
農学の先生がよく完熟堆肥を使いなさいと言いますが、現場の農家の方々は「完熟では力がない」とか「効かない」という声が多くて、どうしても生の力のある堆肥を入れたいと思う傾向があります。
宮城さんも同じ考え方です。
種菌堆肥をそのまま畑に入れても力がないと判断しています。
宮城さんの場合、生糞と種菌堆肥を混ぜて少し寝かせて施用することで活用しています。
(参加者に種菌堆肥を説明する宮城さん)
【宮城さん】
原料は籾殻入りの豚糞と乾燥残さです。これを混ぜているだけ。
(ここにある堆肥は)種菌堆肥だと思っています。
皆さんは堆肥は畑にまくもんだと思っているかもしれませんが、うちは種菌堆肥として使っています。あくまで土壌改良材をつくりたくてこれをやっています。
土壌改良材として優良な菌がふんだんにある堆肥を作りたくて、考えて考えて、四苦八苦してこうなっています。
最初はサカタのバイオ21という微生物資材から始まりました。
バイオ21は高温菌が主体だということだったので太陽熱処理と併用できるかなと考えたわけです。米ぬかと堆肥を使って増やして活用していました。
それ以降、自分で種菌を増やして活用する今のスタイルになってきました。
今では鉄、マンガン、FTEなども堆肥に入れています。
(※宮城さんの種菌堆肥は肥料成分の補給ではなく、中熟堆肥をつくる際の優良な菌の補給源として活用されています)
堆肥を作る場所が十分にない方は、種菌堆肥の(菌)密度を高くして、米ぬかなどを入れて発酵させてやればOKです。緑肥をすき混むときに一緒にやればすごくよくなります。はっきりわかるほど圃場の改善になります。
緑肥をうないこんだときにもさらっと土が変わるような感じになります。
この種菌堆肥でもいいんですけど、緑肥と一緒に入れてあげると全然違う。
春先から夏にかけてロータリーをかけて2日ぐらいおいて雨が降ったその後を見てみると畑の状態が変わります。
毎年毎年少しずつ良くなってきています
大きな間違いもなく改善できる、そう感じています。
住宅街の中では堆肥場はつくれません。
そのためこの種菌堆肥を少し持っていって米ぬかとまぜて少量ずつ堆肥をつくれば迷惑もかからない。
そして緑肥をすきこむときに使う種菌として使えば畑が変わってくると思います。
あくまで土壌改良をする堆肥を作りたいと考えています。
肥料的につかう生糞に種菌堆肥をまぜて使用していますが、自分が力を入れているのは種菌堆肥づくりです。
【質問】
土壌改良を目的にというお話でしたが、そういう気持ちになったという原因が圃場の方にあったということでしょうか?
【宮城さん】
あゆみの会、らでぃっしゅさんとのおつきあいをきっかけに有機栽培を始めて2年ぐらいはまあまあとれたんですよ。3年目からガタガタということで資材代ばかりかかって収入が少ないということに・・。
これで本当にやっていけるのかなというぐらいになったんですよ。
一時は有機栽培をやめようかなと思ったことも・・。
まわりに聞いてみると有機でうまくいっている人もいるので、どうにかしようと思いたって始めたのがきっかけです。
良い畑にしようと思って市販の菌体を買ったりもしましたが、それにお金をかけすぎるよりも自分で培養した方がよいと思うようになりました。
微生物って培養できるじゃないですか。
だからこのように始めました。
【質問】
堆肥の原料となる豚糞の窒素・リン酸・カリの成分比などは、どれぐらいのものを使っていますか?
【宮城さん】
低いよ。
自分の圃場にやってあうかどうか、やってみないとわからない部分もある。
百姓ならわかると思う。
肥料をあげたってそれだけのことができないし、逆に徒長しすぎてしまったり、良いものがとれなかったり・・。
やはり自分の観察、前回こうなったからこうだな、というようなことをやっていかないとうまくいかないと思うんだね。 ![]()
(宮城さん(右)と中部・関西のエコキッチンクラブを受けて入れている、ゆうき伊賀の里の福広さん(左)のツーショット)
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宮城さんの圃場見学
宮城さんの圃場で団粒の確認を行いました。
丸山さんが団粒の塊を参加者に見せながら、団粒化が進むと保水性、排水性が良好になり、根張りも促進することなどの話を行います。
また2mほどの棒を参加者自ら圃場に刺していただいて、宮城さんのふかふかで柔らかい圃場の様子を体験していただきました。
上の写真のように2mの棒がすーと全部入ってしまいます。
続いて宮城さんが実践している太陽熱処理についての話。
【宮城さん】
太陽熱処理につかうマルチは1m80cm幅のもの。
実際に張る幅は1m60cmぐらい(※両サイドは畝に沿って折り曲げるため)
マルチを張って太陽熱処理をしたところは草がなくて、マルチをしていない通路部分に少し草が残る感じになっています。
そのため通路は草取りをしています。
太陽熱処理したところだけに播種しています。
ニンジンとネギには堆肥を入れるけど、カブやジャガイモの前にには入れない。
主にネギとニンジンを交互に作付け(例:ニンジン2年やった後でネギ1年とか)
堆肥(生豚糞+種菌堆肥)の施用量は反あたり5t弱ぐらいです。
堆肥をつくるタイミングは自分の作業の合間を見ながら養豚農家さんから豚糞をもらってきて種菌堆肥とまぜて準備をします。
雨が降りそうだとブルーシートをかぶせます。
ブルーシートを直接堆肥にかぶせてしまうとたぶんウジがわくと思うので、風が通るように堆肥の上にシートをかぶせるようにしています。
作付けされているニンジンの品種は愛紅(あいこう)、パワフルレッドなど。
【丸山さん】
太陽熱処理で草取りがだいぶ省力化できています。
また宮城さんは発芽がそろうように灌水にかなり気を遣っています。
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区民センターにて
【丸山さん】
土の表層で団粒ができやすく、特に太陽熱処理をした後は団粒ができやすいと思います。
団粒は力を加えるとぽろぽろと崩れます。
団粒が増えることで保水性・排水性・根張りが良くなり、肥料成分もうまく吸着しています。
圃場視察質疑応答
【質問】
畑の耕盤ですが、あれは機械で崩したということはないんですか?
サブソイラーなどを入れていますか?
【宮城さん】
サブソイラーはやります。
以前はトラクターが動かなくなるぐらいまで目一杯入れて引っ張っていました。
今は普通走行の1~2速ぐらいで十分です。
【質問】
連作・輪作の話などを聞かせていただけますか?
【宮城さん】
ネギ、ニンジン、ジャガイモとカブを栽培しています。
秋冬ニンジンと秋冬カブの前に太陽熱処理をします。
その後にネギ。うちらの方ではネギをつくると畑を荒らします。
畑をこわすので、その後に太陽熱処理をしたニンジンを作付けし、カブという流れです。
緑肥は入れます。
春夏ニンジンの場合はどうしても太陽熱処理ができないので、緑肥を栽培してそれを鍬き込む時に堆肥をいれています。
今年はヘイオーツなど。
緑肥は生長してくると自然と倒れてくるので、浅く軽くロータリーでうなってしまいます。(土の中に入れるのではなく、倒して少し土が被さるような感じに)
もうじき雨が降るなというタイミングでロータリーをかけると良い感じになります。
【福広さん】
宮城さんの堆肥づくりの話があるということで参加しました。
棒があそこまで刺さるのにはびっくりしました。
以前、浅く耕すだけの栽培方法だったんですが、新井さんの影響などもありまして去年プラソイラーを購入し深耕でやるようになっています。
入れた後は少し水はけが良くなります。徐々に目が詰まってくるというか、時間がたつとだんだんと雨が降って水はけに時間がかかるようになります。
まだまだ底の方は変わっていないかな。
うちの堆肥は肥料成分重視で窒素濃度が高い堆肥を使って、施肥設計をしています。
宮城さんの堆肥の成分ですが、何か分析結果などあるんですか。
【丸山さん】
分析はしてません。
炭素率的にはそんなには高くはないのかなと感じます。
宮城さんが緑肥を使って地力を維持しているのは必要なのかなと感じています。
堆肥だけだと地力を維持するには少し弱いかもしれません。
【福広さん】
堆肥+有機質肥料という組み合わせでやっているんですか?
【丸山さん】
はい、そうです。
【宮城さん】
今は8-5-3(※JBFの有機質肥料)を使っています。
【福広さん】
私もどの程度の炭素率で有機栽培をしていくのが理想なのかなと考えています。うちの堆肥の炭素率はだいたい9ぐらいです。
施肥設計でも炭素率9でやっていますけど、もう少し高い方がいいのか、低い方がいいのか・・。
普通は炭素率15ぐらいの堆肥をつかって炭素率5ぐらいの有機質肥料を足してやると、比率にも関係しますが、たとえば炭素率10前後になるとします。
そのあたりに炭素率をするのが理想的かなとも思うんですが、トータルの炭素率についてはどれぐらいが病害虫が出にくいとか、そのあたりについて感覚的にわかりますか?
【丸山さん】
一番怖いのが数値だけを見てしまって、熟度がどの程度なのか、菌体量がどのぐらいあるのか、畑の条件だとかも関係してくるので、なかなか一言では言えないと思います。
経験則から考えていかないと、イメージだけではわからない。
現実はどうなったのか、それに対してどうやったのか、そして検証しながら解決していく方があっているのかな。
現状は緑肥と堆肥を併用した方が土づくりにとって良いと感じています。
【津田さん】
私たちの圃場にくる方は皆、「こんなところで農業ができるの?」と言われます。
(※渥美半島の先端近くで砂利混じりの圃場)
大きな河川によって砂や石が堆積した地域なので、私のところは砂とレキばかりで開拓農家の親が麦を植えても全然生育しなかったほどです。
農業をやるには非常に過酷な条件で、ずっと有機物を入れながら土づくりをやってきました。
肥料と農薬をのぞいたら農業が成り立たない土地で、30代までは慣行栽培をやってきました。
今は20年近く化学肥料・農薬に頼らない農業をしています。
自立して後継者も育ってきています。
これまで機械的な深耕、プラソイラー・サブソイラー、ロータリーなどでやってきましたが、今日の見学で学んだことを取り入れることができたらと思っています。
有機肥料の8-5-3を使用されているとのことですが、それ以外の資材を使っていますか?
【丸山さん】
カルシウム、マグネシウム等は基本的に入れています。
カルシウムはハーモニーシェルを、マグネシウムはブルーマグかキーゼライト等を使っています。
鉄・マンガン、FTEとかホウ素系のものを入れています。
生産者の圃場を見ていると苦土が蓄積しているような感じがします。
ハウスの場合はク溶性の苦土は気をつけて施肥する必要があります。
宮城さんの場合、硫酸系の肥料があった方がネギがしっかりするということで、同じ苦土でもブルーマグよりキーゼライトのような硫酸根が入っている苦土の方がいいのかなと感じています。
作物を見ながら作物に適した肥料を入れていくことが、作物の健康にとってもいいのかなと思います。
【野口さん】
いい堆肥をつくっているというのが率直な感想です。
3ヘクタールを栽培されているそうですが、今日見た堆肥の量で間に合うのかなと感じたのですが・・・。
【宮城さん】
種菌堆肥をそのまま圃場に入れるのではなく、(豚糞と混ぜて発酵させることで圃場に入れる前には堆肥が)倍・倍に増えています。
種菌堆肥を直接畑に入れるわけではないので大丈夫です。
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以上で午前中の見学と質疑応答は終了です。
引き続き、丸山塾in千葉 開催報告【講義編】へと続きます。
(Radix事務局 成田)
【01 農産活動報告】
2009-12-25
『めだかの学校』新井塾par t4 開催報告【講義編・後半】
『めだかの学校』新井塾part4開催報告【講義編・前半】に続いて、甘楽町有機農業研究会の新井俊春さんの講義後半の概要をお知らせいたします。
それでは新井さん、引き続きよろしくお願いします。
(新井さんのミディトマト 2009-06-02写真)
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【新井さん】
病害虫防除の話に入ります。
病害虫防除を考える手順として、まず病原体を分類してみようというところから始めています。
まずはカビ(糸状菌)、細菌(バクテリア)、一部の放線菌、ウイルス、線虫。
この5つが土壌病害原因のほとんど100%を占めています。
(当日資料より)
まずどういう条件が揃うと繁殖するのかを考えてみます。
どんな有機物を好むのか?、生育しやすい温度は?、水分量、pH、酸素が必要な菌か?・・・。
次に作っている作物にどういう病気がでるのかを考えます。
それを5分類したどこにあてはまるかを見るわけです。
繁殖しやすい条件の逆の条件をつくれば発生しないということです。
このように考えると結構ヒントが生まれてきます。
ウドンコ病や青枯れ、萎ちょう病・・、その病気のもとになる菌がどういう状態だと繁殖するんだろうと考えて、その逆をやれば出なくなるという考え方です。
まずはカビ。
病害の約80%がカビによるものです。
フザリウム、これが一番やっかいなものです。
萎ちょう病なんかです。あとキュウリ蔓割病、イオウ病なんかもそうです。
バーティシリウム、半身萎ちょう病の菌です。
次にリソクトニア、これは立ち枯れ病なんかを出す菌ですよね。
立ち枯れはリゾクトニアかピシウムのどちらかの影響が多いようです。
地上部の土1cmぐらいでくびれて倒れるのがリゾクトニアです。ピシウムは根を侵すために全体が枯れてきます。
次に菌核、疫病、根こぶ病菌。
あとは白絹病のコルティシウム。
土壌病害のカビはそんなところですね。
細菌の関係だと軟腐病系、青枯病系です。
放線菌だと、ジャガイモのソウカ病、サツマイモの立枯病等です。
土壌病害のウイルスなどはモザイク病、レタスのビッグベイン病などです。
線虫はネコブ、シストセンチュウ、ネグサレセンチュウなどです。
まずは糸状菌のカビから。
フザリウムによるダイコンの硫黄病。
フザリウムによる病害の場合、だいたい全体的に侵されます。
次にバーティシリウム。これは半身症状。
リゾクトニア、これは立ち枯れ病ですが、これは地上部が細くなって倒れるのがリゾクトニアの症状です。
これは地面に沿って繁殖する菌です。
ピシウム、立ち枯れとは違いますが、このカビによっておこる障害です。
菌核、最近深谷地方のネギ産地で出てきているのが黒ぐされ菌核病です。
水が留まるような畑に必ず出てきます。
次が疫病関係。
ネギ類の白色疫病。
疫病はトマトにもでますし、いろんなものがありますね。
先ほどサラダボウルさんが届けてくれたこれがネコブ病ですね。
これから出てくるんですが、どういう条件で出てくるかというと酸性土壌で水がたまりやすい場所に必ず出てきます。
「連作土壌」+「酸性土壌」+「水がたまりやすい場所」が繁殖条件ですね。
(当日資料より)
私も春・秋にアブラナ科の野菜を5種類ぐらい連作しています。
でもネコブ病は出ないんです。
というのは酸性土壌ではないからです。
pHも6.5前後で、そのような土壌ではネコブ病はでないです。
やっぱり酸性土壌ですね。pH5.5とかという土壌でつくると出やすいです。
次に白絹病。
畑のはじからだんだんと出てくることが多いですね。
作業道路の方から入ってくる、雨とともに流れ込む例が多いです。
次に細菌。
細菌の場合は多すぎる水です。
逆に言うと水がないと生きられない。
根のまわりに余分な水がたまらないような状態にしておけば発生しないものですね。
次に青枯病。
ナス科野菜にでやすいです。
排水対策が一番です。
プラソイラーをまず引いて降った雨を早く浸透させる。
そして畝を高くすることを併用する。
もう一つは団粒構造を増やしていくこと。
それらを改善していくのが一番いいと思います。
ソウカ病関係。
放線菌の一部ですね。
本来放線菌というのは抗生物質を分泌したり有害な菌をやっつけるほうに働くんですけど、ソウカ病の菌だけは作物に悪さをします。
次がウイルス。
緑斑モザイクという、左がウリ科野菜にでるカボチャなんかにもでてくる緑斑ウイルス病、これは土で伝染します。
こっちがレタスのビッグベイン。
これも土壌で伝染します。
(当日資料より)
昨年も話をしましたが、どのぐらいの深さまでそれぞれの菌が繁殖するのかというのを記したものです。
表面近くには白絹病とか疫病、あとネコブですね。
ネコブが出るのはだいたい20cmぐらいまでです。
あとはピシウム、リゾクトニア。
フザリウム以降はかなり深くまで繁殖をしていることを示しています。
この表が非常に参考になります。
病原菌がどのぐらいの温度を好むのかを表していますが、黄色がついているのが高温性の菌です。
疫病は低い温度で発生しやすいということです。
水分の状態。
カビですからほとんどが多湿の条件ででるんですけど、ソウカ病の放線菌だけは乾燥状態ででやすい。
細菌でもカビでも水分過多の条件ででます。
だから排水対策は大事、プラソイラーを使ってくださいというのはそういう意味です。
繁殖に適したpH。
酸性土壌で繁殖しやすいのがフザリウム。ネグサレの関係です。
あとはネコブ。酸性土壌ですよね。
白絹病も酸性土壌の方がでやすい。
ジャガイモソウカ病はアルカリ性。
ジャガイモをうえるところはpHがなるべく低いところが良いというのはそういうことです。石灰はなるべく控えた方がいいということです。
(当日資料より)
有害菌等がどこに影響を及ぼすかを示したものです。
根にこぶを出すというのは根コブ病ですね。あとはセンチュウ。
導管の通り道が侵されてしまうのが、フザリウムとか、半身萎ちょうのバーティシリウム、あとは青枯病なんかです。
根の地際、地面のすれすれの部分をやられるのが、ピシウム、疫病関係、白絹病、紋羽、センチュウの根腐れ関係ですね。
地面のすれすれの上がくびれて倒れるのがリゾクトニアです。
(当日資料より)
どういう状態がそろうと病気になるかという部分です。
まずは素因。
作物自身にどういう素質があるのかという部分です。
よく種の袋にウドンコ病耐病性とか、アブラナ科の野菜の抵抗性があるかどうか、耐病性があるかどうかが書いてあります。
こういう素質が植物自身にあるかどうかが素因です。
次に主因。
病原体の密度がどれぐらいになっているかということです。
(当日資料より)
誘因。
生産者自身が工夫するところなんですけど、栽培環境がどうなのかなという部分になります。
特に自然環境、雨が多いとか少ないとか、湿度が多いとか少ないとかです。
次に栽培環境ですね。
カビの場合には作物の残さだとか有機物を畑にもどしてすぐ種を蒔いて植え付けする。これはカビのもとです。
適期適作といいますけど、時期ですよね。
アレロパシー効果のある緑肥などを利用していますかどうですかということもあります。
土壌病害の病原体ごとに防除方法を考えていきましょうという内容に入ります。
ここからが大切な部分になります。
まずはカビ(糸状菌)。
連作をしているかどうかということですね。
カビの繁殖には未熟有機物が土の中に投入されていないかどうかが一番問題になります。
細菌(バクテリア)。
連作と根のまわりに余分な水があるかどうかが細菌(バクテリア)の繁殖のもとになります。
次に放線菌。
ソウカ病のような放線菌の場合はpHの上がりすぎがキーポイントです。
ウイルスは害虫が伝染しますので、害虫とpHですね。
センチュウは連作をしているかどうか、保護作物を利用しているかどうかがキーワードになります。
まずはカビから。
抑制方法は輪作、未熟有機物を入れない、あとは放線菌堆肥です。
雨水の停滞が一番良くない。あとはpH関係。
次に細菌。バクテリア関係は余分な水です。
抑制方法は輪作体系、排水対策、高畝マルチ、プラソイラー。
あとは放線菌堆肥等です。
佐藤さん、去年トマトに根こぶが出たと言っていましたよね。
それどのように対処したかをちょっと話をしていただけますか。
【佐藤さん】
基本的に(太陽)熱とたん水処理で嫌気にしてしまうこと。
今年は天気も悪かったこともあり2回代掻きをして土中の空隙に残る空気を抜きながら、たん水をしたままでビニールをかけて自然落水させて熱をかけるという方法をとっています。
【新井さん】
結果はどうでした?
【佐藤さん】
一粒もとれなかった畝も今は普通に生育をしているので、ある程度の効果はあったと思います。一方、疑わしい場所もちらほらあるんですね。
そういう場所もあることはあります。
【新井さん】
センチュウ自体というのは空気がないと生きられないですから、やはり空気を遮断するということですよね。
たん水と太陽熱消毒です。それを佐藤さんは実行したということになります。 ![]()
(当日資料より)
センチュウの抑制対策ということで緑肥利用。
空いている土地に緑肥作物、保護作物を蒔く例があると思いますが、センチュウに対して効果のあるものを選びたいですよね。
二重丸のあるものを選ぶのがコツかなという気がします。
空いているから何でもいいから蒔いてみようではなくて、どういうことを目的にして保護作物を利用するかを考えて利用してください。
夏場でおすすめするのがギニアグラス、ソイルクリーンです。
春とか秋であれば、エンバクの類ですね。
クロタラリアの場合にはネマキングなどはネコブに効くんですけど、初期生育が非常に遅いんです。
クロタラリアを利用するんであればギニアグラスを混播してまいたほうがいいです。そのようなやり方をした方が雑草も防げます。
(当日資料より)
地上部にいきます。
まずは糸状菌、カビ。
土壌病害と同じようにカビ類が一番多いです。
約8割はカビに関したものです。
症状だけを見てあとは解決方法に入っていきます。
最近多いのがネギのベト病です。
うちの団体でも3年ほど続けて出ているところがあります。
タマネギです。
春先の天候によって決まってしまうんですけど、収穫間際になって雨が降って前年に(ベト病が)出ている場合、土の跳ね上がりで葉について空気伝染してしまいます。
ベト病の症状は不鮮明な楕円形の症状が出てきます。
かならず出始めるのが畑の水がたまるところです。
やはり水に関係していることがわかります。
キュウリのベト病です。
日光を嫌うので裏側にカビが生えて表が不鮮明になってきます。
斑点細菌病とまぎらわしいのですが、ベト病の場合は葉脈と葉脈の間が明らかに変わってきます。
枠の中の色が変わってきます。
次に疫病。
ピーマンによる疫病です。
窒素過多と水分過多ででることがあります。
菌核です。
出荷するときにはカビはなかったはずが到着したらカビが繁殖してしまっている写真です。
キュウリの場合、菌核の始まりは花の場合が多いです。
キュウリの下にしぼんだ花が付いていますよね。
しぼんだ湿気った花から菌が繁殖するんです。
荷づくりをする際にポリで覆ってから出荷しますので、湿っぽくなっているところに菌糸がはびこってしまうわけです。
次は灰色かび病と葉かび病。
これはトマトです。
灰色かび病も葉かび病も比較的低温のところにでます。
人間が暮らすのにちょうどいい20度から25度くらいの温度、湿度が高い場合なので、灰色カビ病がトマトに出てしまった場合は侵された部分を摘んでですね、ハウスを一回締め切って温度を上げるんですね。
朝8時ぐらいに屋根を開放するのを1時間か1時間半遅らせると、ハウス内の温度がぐーと上がります。
温度が上がった後で一気に屋根を開けると、湿気がすーっと飛んでいきます。これを何回か繰り返すと灰色カビ病は乾いて死滅します。
温度を上げるというのがコツです。乾かすということですね。 ![]()
(当日資料より)
(当日資料より)
次に細菌、バクテリア関係。
バクテリア関係は根から入って内側から腐らせるものと雨の跳ね上がりなどで外から腐らせるものとがあります。
バクテリアによる腐敗はたいてい匂いがあります。
ネギの軟腐病。非常に臭いですよね。
ハクサイもそうですし、レタスも非常にいやな匂いがするのが特徴です。
斑点細菌病です。
ベト病の場合、このように枠の中でわかるんですけど、バクテリアの場合には区別がつかないですね。
全体的に枠の中だけでなく広がっていくのが特徴です。
ウイルスです。
コナジラミが媒介する黄化えそ病ですね。
こちらがカボチャモザイクウイルス。
これはアブラムシが媒介します。
これが今問題になっている黄化葉巻き病です。
コナジラミ関係です。
次に虫関係に入ります。
当日資料に虫とウイルス関係がまとめてあります。
キュウリの黄化えそ病、これはアザミウマですね。
虫の方はざっと読んで頂くとして、ここで質問を受けましょう。
【質問】
トマトで苗の状態でリン酸を効かせる必要があるんですけど、新井さんはどんな工夫で、リン酸を効かせているんですか?
【新井さん】
去年参加した方は私の堆肥場を見たと思うんですが、あの堆肥の中に米ぬかがかなり入っているんですよ。
育苗用につくった堆肥なんですけど、米ぬかですね。
赤土を混ぜて育苗土をつくっています。
【質問】
発酵させて?
【新井さん】
そうです。
【質問】
糸状菌(かび)の抑制のところで、前作残さ、未熟有機物の投入をしないという未熟有機物の種類なんですけど、特に籾殻とか落ち葉、ピートモスとか今日見せて頂いた竹などもこの悪い糸状菌の餌になりうるんでしょうか?
【新井さん】
なります。
【質問】
木質系であろうと草質系であろうと?
【新井さん】
なりますね。
入れた場合には期間をおけば問題はないです。
入れて時間もたたないうちに播種・植え付けをすると、必ずカビが繁殖します。
それを食べるカビがね。
糸状菌の餌というのは有機物、炭水化物ですから。
草だと草むしりをして山にしておくと下の地面すれすれのところにカビが繁殖するでしょう。あの状態です。
あれが土の中でおきるんです。
【質問】
ナスなんかで青枯れ対策としてプラソイラーをかけているんですけど、圃場に植えている期間が長いじゃないですか。その時にできる対策などがあれば。
【新井さん】
半身萎ちょうの場合はカビだし、青枯れの場合は細菌・バクテリアですよね。
好む物が変わってくるんですよ。
カビの場合は有機物。細菌・バクテリアは水なんですね。
カビの場合もほとんど水がからんできます。
途中でも抑制するのは難しいですよね。
放線菌の堆肥が十分入っていて繁殖できる状態であって、なおかつ排水対策を併用していくしかないですよね。
【質問】
堆肥の話がでたので聞きたかったんですが、堆肥は有機物を入れるためにどうしても入れたいんですが、あまり良い物が手に入らない。
それでも入れたいとしたら、いつ入れたら一番いいですか?
【新井さん】
完全に有効な放線菌が繁殖するまで追加発酵できないんですか?
面倒だからといって未熟な堆肥をもってきて入れると必ず糸状菌・カビが繁殖します。トラクターのバケットなどがあれば貝殻でも足して放線菌を繁殖させて圃場に入れることはできない?
【質問】
半分できるかもしれないけど、できない部分もあると思うので、できない部分をなんとかしたい場合には?
【新井さん】
入れてから期間をおくしかないですね。
【質問】
いろいろな種類があるかと思いますが、どれぐらいの期間をおいたらいいですか?
【新井さん】
C/N比の関係ですよね。
おが屑などC/N比が200とか300とかのものが入っている場合には、相当期間をおかないとムリですね。
【丸山さん】
次回、勉強会を行う宮城さんの堆肥ですが、もとは豚糞堆肥で、あとはらでぃっしゅさんから出てくる乾燥残さ、生のものです。
いかに菌体をつけて発酵過程にもっていくかというところがキーポイントになっています。
宮城さんのところでは太陽熱処理をしながら中熟堆肥を使うことで土壌団粒がつくられています。
このあいだ棒を刺してみると1m半とか2mぐらい刺さりました。
微生物をどう活かす環境をつくるかがキーポイントになってくるのではと感じています。
いかに根域範囲を広げていけるか、微生物がすむ環境をとれるかが安定した野菜づくりにつながるのではないかなと思っています。
【新井さん】
その中熟堆肥を入れて植え付けする場合、どのぐらい期間をあければいいんですか。?
【丸山さん】
そんなに長くはないです。
太陽熱処理をする場合は期間をあけますが、それ以外の時は少し寝かせるぐらいです。
【新井さん】
今年のトマトとキュウリについてお話したいと思います。
まずは播種から。
私の場合は30cm×60cmの箱にまきます。
ここ(上記写真のコテの部分)に1cmのコンパネが貼り付けてあります。
縁に沿ってコンパネを動かすと縁から1cm下がったところが整地できます。
この状態でキュウリの種をまきます。
トマトの場合は種が小さいのでもう少し浅く、縁から7~8mmほどを整地します。
写真が1cm縁が下がった状態でキュウリを蒔いた状態。
たぶん230粒ぐらい入っています。
こうするとすべての種が1cm、7~8mmに全部、おなじ覆土になるんですね。
これでスタートします。
ちょっと上をコテで押して灌水をして下がらないようにしてスタートします。
発芽の状況です。
キュウリの場合、かけるのはバーミキュライトを使っています。
というのは230粒もまくと土をもちあげちゃうんです、よいしょっという感じで1cmほど浮いてしまうんです。
バーミキュライトをかけるとほぼ100%、3日目にはこのような状態です。
土の温度は28度から30度。
ウリ科の野菜は3日。ナス科の野菜で5日です。
キュウリ、トマトの鉢上げ状態です。
播種が揃うので、ひとつひとつの苗がすべて揃います。
とにかく播種をそろえるということです。
温度・地温は28度から30度。
そして発芽したら25度。
鉢上げする場合は20度に下げます。
鉢上げする方の土の温度を逆に上げておくんですよ。
移動する先の温度を高め高めにもっていくと萎れずに活着が良くなります。
トマトです。
福広さんのところもそうですし、私のところもそうなんですが、産地担当の神保さんが見ても、すごくいじけた苗に見えるんですよ。
小さないじけた苗。
「こんな細いのに実がなるの?」とよく言いますけど、だいたいこんな細い感じです。
これが植えて二週間ぐらいです。
小さい実がついていますので、もう少したっていますね。
とにかく暴れさせない苗です。
リン酸中心の苗です。窒素優先になっていないです。
1mぐらいになっています。
細くて貧弱なトマトに見えます。
茎の細さ、葉っぱが混んでいなくて、向こうがすけて見えるでしょう。
茎に対して葉が直角に出るように水管理をしています。
(新井さんの今年のミディトマト 6月の写真)
実がついた状態。
向こうがすけて見える状態で実が鈴なりになっています。
トマトは無肥料です。
スタートが無肥料で連棟ハウスでは今年最後まで肥料を使っていません。
冬に葉ものを2回転して、それで整地しただけです。
なにも入れていません。
生長点を見ながら肥料が必要なら入れようと思ったんですけど、最後まで生長点が衰えなかったんですね。
下葉に欠乏症状が出ていないんですよ。
(新井さんの今年のミディトマト 実が色づいた時期の写真)
色づきが始まっている状態です。
葉を見ていただけるとわかるんですが、先ほど見ましたカリの欠乏症状、苦土の欠乏症状、出ていないですよね。
樹に対しての中玉トマトの大きさを見てくださいね。
昨日も話をしたんですけど、「土壌分析プラス何か」ではなく、私の考え方は『観察力プラス土壌分析』なんですよ。
もうここ3年ぐらい土壌分析はしていないです。
作物を見ながら次の施肥設計を考えています。
トマトの生長点が衰えない場合には追肥もしない。
欠乏症状が下葉にでてこないんですよね。
無肥料でやっちゃいました。そして最後まで水を入れていないです。
植える前にみっちり水をあげてから定植、12段とるまで全然水をあげていないです。
【質問】
前作の葉ものの様子を見て、無肥料か肥料を少し入れるかを決めたとのことですが、前作の葉ものの様子というのは、元肥を入れない時と決めたときの状態と肥料を入れようと決めたときの状態、前作の葉ものの状態ですよね・・。
【新井さん】
おもに窒素切れです。
葉ものというのは先ほどの施肥パターンでいうと、コンスタント、初期から後半まで効かせたい作物です。
とくに小松菜なんかはかなり肥料がいります。
後半切れてしまうと茎が赤くなってしまいます。
そうなってから葉をかくと繊維が強くなっておいしくないんですよね。
平均して水をあげているつもりでも、やっぱり灌水量が多いところは流れてしまいます。部分的に窒素欠乏が出ました。
その部分には特に入れて全体的に薄くいれたということです。
ミネラル、微量要素、すべてです。普通より少なめです。
症状を見ながら、観察しながら足せばいいという作り方。
樹があばれないしカビも繁殖しないんですよ。
実が太るときに効けばいいから生長点の下葉の様子を見ながら追肥をするというやり方をすればカビはでないです。
福広さんもそうだと聞いていますけど、最後のピークになってくるとウドンコ病が出てきます。
ただウドンコ病の場合は収穫を仮に12段までとる場合でも、そんなに気にならないんです。
取りきるまで繁殖していてもほとんど問題ないですね。
通常ウドンコ病は下部の葉から少しずつ上部の葉に移っていきますが、実の善し悪しを左右するのは、実のすぐ下の1枚の葉と上2枚の葉と言われています。
実が充実する際にこの上下3枚が健全であればОKということです。
【質問】
元肥を入れようと思ったところの葉ものの症状というのは、下葉がちょっと黄色くなっていたり・・ ?
【新井さん】
全体がかたくなります。
窒素切れになってくると繊維が出てくるんですよ。
小松菜なんかの場合、貝割れの葉と一番外の葉をかきますよね。
かいたときに繊維がでてくるんですよ。かたい状態。
ぱきんぱきんとみずみずしくかける状態が窒素がきれない状態なんです。
窒素が切れてくるとかいたところから繊維がずっとでてくるんですよ。
かたい繊維がね。それでわかりますよね。
食べてみたって美味しくないです。えぐみがちょっと強くなってくるので。
間口3間で長さ50mのパイプハウスが6棟あるんですけど、傾斜が少しあるので手前と最も奥とがおよそ60~70cmぐらい高低差があると思います。
だいたい欠乏が出る位置というのは決まっている。
この辺がいつも切れるよねという場所がきまっているんです。
チューブの関係かわからないですけど、その部分をちょっとだけ入れて全体を薄めに入れてあとは欠乏症状を見ながら足してやるというやり方です。
入れすぎると必ず茎が太くなって、葉っぱが垂れてきて、空気まわりが悪くなってカビがでてくるんです。そういう悪循環です。
【質問】
うちの生産者もウドンコ病がでて終わってしまうというパターンが何回か続いています。なにか対策は?
【新井さん】
ウドンコ病がでるということは葉の中のアミノ酸・硝酸濃度が高いという状態です。だから灌水ですよね。
水が切れてアミノ酸濃度・硝酸濃度が高くなるとウドンコ病。
ウドンコ病になる場合はアブラムシがつきやすい状態です。
後半になってでるウドンコ病の場合、樹が伸びて日陰になったことも要因だとおもいます。
ちなみにうちが出始めるところというのは連棟のトヨの陰から始まります。
日当たりの悪い場所です。
窒素過多だけでなくて、日当たりの悪い場所、株元に日があたる状態だとウドンコ病はでにくいと思います。
トヨの陰からウドンコ病が出るというのはそういうことなんですね。
水管理は初期からよく効かせるのですか?
【新井さん】
キュウリはそうですね。
一回でやらないで一日に10分でもまめにあげるということです。
とくにウドンコ病をださないようにするにはそうしますよね。
【質問】
こまめに水をやったほうが根がいたまない?
【新井さん】
そうですね。
圃場でキュウリの曲がりがあるという話をしましたけど、ストレスなんですよ。
一気に水をあげて幾日も放置しておいて乾燥し、また水をあげて乾燥の繰り返し・・。それが植物にとってストレスになります。
ストレスをなるべく出さないようにしていくと曲がりがでなくなります。
忙しくてキュウリの誘因ができなかった時、しばらくしてから誘因しますよね。
必ずキュウリが曲がります。ストレスが一番大きいです。
コンスタントに水が効いている場合は曲がりは少ないです。
【質問】
さっき見ていただいた圃場、けっこう水分多いんですけど、追肥した後はそれでも灌水は?
【新井さん】
水分多ければ大丈夫ですよ。
どういう追肥をしているかわからないですけど、たとえば有機の配合肥料をふって、そこからカビがでるようだといらない。
カビがばぁーと繁殖する状態だと水分があるということだから。
無理に水分を足す必要はないと思う。
【質問】
ナスもたまに曲がりが出てくるんですけど・・。
【新井さん】
やはりストレスがあるのかなぁ。
あとはカリウムだよね。
トマトの例なんだけど窒素の倍ぐらいカリウムが必要。
根の肥大にも必要、かたい状態だと伸びないわけだから、ゆるめる部分でカリウムが必要だと思うんですよ。
曲がりもそのへんがあるのかな。
仕上げに今回のまとめということで病害虫防除と有機質肥料の特性をいかした施肥体系ということでまとめに入ります。
野菜のどこを使うのかが非常に大事なことで、その部分が豊作になることを考えればいいんです。
窒素が優先に働いて、灌水や雨水が多かった場合に植物がメタボ状態、暴飲暴食という形になるので病害が出やすくなります。
肥料を入れすぎて窒素が優先になった場合で灌水不足になるとアブラムシなどがつきやすくなりますね。
それから作物ごとの吸肥特性を知りなさいということです。
特に窒素の効かせどころとC/N比です。
どのような肥料を使い分けているかということと施肥量です。
根張り促進として団粒構造、堆肥の関係ですよね、あとバランス、水管理、一番大事なのが水なんですよ。
上手にできるかどうかというのは施肥以上に水管理です。
特に排水対策です。
そして「土壌分析+作物の観察力」。
実を言うと私は逆だと思っているんですね。
『作物の観察力+土壌分析』と考えています。
最後に、予想もしなかった“台風”襲来の中、生産者の皆様に参加していただき、誠にありがとうございました。
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以上が新井さんの講義概要です。
長文にもかかわらず最後まで読んでいただいた方には感謝します。
それでは、当日参加された方も参加できなかった方も新井さんの講義から何か栽培上のヒントを得られることを期待しています。
(Radix事務局 成田)


