【レポート】
2010-08-27
農業経営者定例セミナー 参加レポート
農業経営者定例セミナー
日時:平成22年8月17日(火) 16時~18時
場所:農業技術通信社内セミナー会場
テーマ:おいしさの科学-食の原点-
講師: 山野善正
《講師プロフィール》
1938年滋賀県生まれ。京都大学農学部農芸化学科卒業後、食品包装会社に勤務。レトルト食品の開発を担当し、手がけた崎陽軒のパック入りシュウマイはロングラン商品となっている。1968年より香川大学農学部で教鞭をとり、食品学科教授、農学部長として活躍した後退官。2006年より生活協同組合コープかがわ理事、2007年よりおいしさの科学研究所の理事長を務める。香川大学名誉教授。農学博士
《著編書》
「おいしさの科学事典」、「おいしさの科学」、「食品の物性」、「フィルム包装食品」、
「レシチン」など食品感性学、食品物理学、応用コロイド学などに関し30編
研修生の高橋です。
普段の生活の中でおいしさについて考えるということはなかなかありません。私の場合はさっき食べたあれはおいしかった、ぐらいのものです。
そんな私ですがおいしさに関してのセミナーに参加してきました。テーマはおいしさの科学。講師の山野先生は、食は人を作る原点であり、おいしい食は魅力的な人間を育むと考え、食べ物やおいしさの研究をしているそうです。
以下にセミナーの内容を個人的にまとめます。
おいしさの科学
―食の原点―
1、おいしさとは何か
2、おいしさの3要素
3、おいしさの評価
4、調理とおいしさの科学
5、まとめ
1.おいしさとは何か
食べ物の品質には3つの要素があり、それは栄養、安全性、おいしさです。栄養と安全性は食品に因るものですが、おいしさは同じ食べ物でも食べた人の感性によって変化するように、相対的なものなのです。
おいしさの要因は下記の4つ
①生理的要因
欠乏による生理的な欲求が強い場合、それを満たす食物はおいしい。
②文化的要因
民族や集団の中で発達した食文化に合致するものはおいしい。
③情報要因
情報(TV、思い込み)がおいしさを規定する場合がある。
④薬理的要因
欠乏していなくても本能的な報酬の会館を強く刺激する特殊な食品がある。
そして人の好み、嗜好の要因もいくつかに分けられる。
① 先天的要因
人種、民族、性別、体質
② 後天的要因
生活様式、地域の風土・習慣、宗教、教育
③ 現在の状態
年齢、健康、経験、職業、時代
このように、人の嗜好はもちろん、おいしさの要因というのも人によって大きく変化しうるものです。
2、おいしさの3要素
次に、おいしさとはどのような要素で構成されているのかということ。一般的には食べ物を口に入れて感じる「味」ですが、それはあくまで狭義の味です。
おいしさというのは、味、匂い、テクスチャー(食感)の3つの要素で構成されています。この3つはどういうものなのか、そして私たちはそれをどういう風に感じているのかを、それぞれ説明していきます。
【味】
先に述べたように味の感じ方や好みは人によって様々です。そもそもどんな味があるのかというと、各民族で認識される基本味としては、以下のものがあげられます。
日本: 甘、酸、塩、苦、辛、渋、旨
インド: 甘、酸、塩、苦、辛、渋、淡、不了味
中国: 甘、酸、塩、苦、棘(辛)、鮮
欧米: 甘、酸、塩、苦、アルカリ味、金属味
各地域ではこのような種類の味があると認識されていたが、その中の「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」の4つ、これをドイツのヘニングは4原味と名付けました。ヘニングはこの4つの味の組み合わせであらゆる味を作ることができるという説を唱えました。
しかし、今では食品には5つの基本味があるといわれています。日本の学者が「旨み」を発見し、発表したものが世界でも認められたからです。旨味はヘニングの4原味説だけでは説明できなかったのです。
味は舌の表面にある味蕾によって感じることができ、グルタミン酸、イノシン酸やグアニル酸というアミノ酸が旨味をもっています。これらのアミノ酸は一緒に食べることで、相乗効果によってよりおいしくなることがわかっています。例えば、日本のだしはグルタミン酸を多く含む昆布と、イノシン酸を多く含むかつお節が使われています。
【匂い】
食事の際に感じる匂いというのは実は2種類あって、食べる前と後で分けられます。匂いを感じるセンサーは鼻の奥の上の方にある嗅粘膜という場所にあり、外部の匂いだけでなく、体の喉の方からも匂いを感じているのです。
食べる前に感じる匂いによって私たちは食べるものを選別したり、食べ物の味を予想したりしています。匂いの種類は多様で、味にあるような基本味といえるようなものはありません。
また、食品の香気成分数を見てみると、
ブドウ 466、チェダーチーズ 213、かつおぶし 280、
などの固体に対し、液体はコーヒー 789、白ワイン 644、紅茶 537、と総じて固体よりも香気成分数が多い(香りが強い)傾向があります。
【テクスチャー】
テクスチャーというのは食品の物理(化)学的性質の総合的食感、または構造及びレオロジー的性質の食べるときの感覚(外観、噛む時の音、温度を含む)のことです。
舌で感じる味、鼻で感じる匂いは科学的なおいしさで、それに対して食感は物理的なおいしさといえます。おいしさに貢献する化学的なおいしさ、物理的なおいしさの割合を調べてみると、米や豆腐、ようかん、団子などではこの物理的な要因がおいしさの大部分を担っていると考えられています。
日本では外来産の食材を生で食べることが多く、テクスチャーを感じやすいため、それを表現するオノマトペ(擬声語)もかなりの数になります。
3、おいしさの評価
おいしさを評価する方法としては、官能検査と測定器を使った検査があります。
官能検査というのは人間が実際にモノを食べてそれについて評価するというものです。
測定器には、食味計、粘度計、匂いセンサーなどがあり、それらによって品種ごとのおいしさの評価や、生のときと調理したときの評価などができます。これによって目に見える形での客観的な品質評価、そして差別化ができるようになります。
4、調理とおいしさの科学
人が先天的にわかるおいしさには、砂糖の甘味、旨味、油のおいしさがあり、これは他の動物たちも当てはまります。
では、この味覚はいつごろから発達するのでしょうか。基本的な味覚機能は出生時に備わっていて、3歳頃から浩二の味覚機能は完成していくが、その程度は個人差があり、いかなる食生活をつんだかに依存します。
逆にいつから衰えたのかといえば、味覚の老化ははっきりとはしていません。60歳ぐらいからあるかもしれませんが、たいていの場合、味覚の衰えは薬剤性や亜鉛欠乏症といった病気などが原因で味覚障害となることがほとんどです。
では次にどのようにしたらよりおいしく食べられるのかを考えて見ましょう。
私たちが普段からしている料理もその方法の一つです。その時には香辛料や油、旨味物質(出汁)、発酵食品やアルコールといった味覚増強物質を使っています。
吸い物の塩分は0.8~1.0%が好まれますが、これは血液中の塩分濃度とほぼ一致しています。他にも、合わせ味による旨味の相乗効果などで体に良く、おいしく食べる方法を私たちは気づいていないうちに実践しているのです。
5、まとめ
農林水産省は食生活指針を定めています。これも正しいとは思いますが、もう少し付け足したいこともあります。
「癒しと健康の食生活指針」
1・毎日3回規則正しく食事する
2・食事の前後で「いただきます」、「ごちそうさま」を言う
3・できるだけ多種類の食材を食べる
4・日本の伝統料理や食材を大切にする
5・国産国消
6・自ら料理する
そして食事の作法として、重要なこともあります。
A・正しい箸の使い方をする
B・ひじをつかない
C・バックミュージックの廃止
D・「いただきます」「ごちそうさま」を言う
こういった正しい食生活、マナーが日本人には必要かと思います。
そして、生命の原点である本物のおいしい食の生理的・心理的充足により、心豊かな人間的な生活の達成を目指したいのです。
しかし今は日本全体での味覚の均一化が進み、人間の多様性もなくなっていると感じています。
種の多様性と同じように、食・味覚の多様性も重要なのです。多様なおいしい食事により、多様な魅力ある人が育まれる社会を作るべきなのです。
これは山野先生のセミナーを受けて、私がこんなことを言ってるのかなと思ってことを書いています。なのでこの記事を読んだだけで山野先生にケチつけたりしないようにお願いします。
ここからセミナーの感想
味覚の均一化というのは、作られる作物、食べ物が皆甘いものを目指していることだそうだ。全体的な傾向として、甘いものが増えている。
野菜の食味を計るときには糖度を見るものだし確かにその傾向はあると思う。その結果として苦いものや昔は食べていたものを食べなくなってきているだろう。
とはいえ、糖度や甘さを重視するようになったのは皆が甘くておいしい食べ物を望んでいたからではないのか。苦いものと甘いものでどちらかを選ぶなら甘い方がいいと思うし、野菜・果物に限って言えばおいしくなるのは良いことだろうと思っている。人が変わってきたのではなく、甘いものの入手のしやすさが変わってきたということではないでしょうか。
苦味・渋みのある野菜だって変わらずあるのだから認められなくなったわけではないはずだし。
味覚の均一化ということであれば、コンビニやファミレスなどの全国で同じ商品を出すチェーン店の方が問題はあるように思う。しかもこれらは大変便利でよく活用していて、なくなってしまったら困る人も多いだろう。
だから山野先生が言っているように食育、食生活の改善が必要になる。特に子供の内から進めるのが肝要だと思う。子供の食生活が変わり、大人になれば、それをターゲットにする飲食業界にも変化は出るのではないか。
地方からこつこつと変えていくことがまず必要なことだと感じます。


