畜産部会ブログ

2011/12/06

食品・畜産合同セミナー 開催報告

2011年10月22日(土)、前日のトップミーティングに引き続き芝パークホテルにて食品・畜産合同セミナーを開催しました。

今回のセミナーでは、日本トップクラスの獣医師でもある、大井宗孝先生を
お招きして、『NonGMO飼料、口蹄疫の実情と今後、東日本大震災と福島第一原発事故の影響』について盛りだくさんのご講演をいただきました。
(豚インフルエンザについては時間の都合でさわりだけお話いただきました)
※大井先生は養豚農場に獣医衛生・生産性のアドバイスを提供する養豚管理獣医師のクリニック『豊浦獣医科クリニック』の代表をされています。
豊浦獣医科クリニックでは全国で母豚約25000頭のの診療契約、年間約70000検体の 豚疾病検査を受託されています。


大井先生のお話はとてもわかりやすく、畜産業界がおかれている状況について大変勉強になりました。

まずはセミナーの流れにそって感想を交えながら概要を報告いたします。
1)Non-GMO飼料について
2)口蹄疫の実情と今後
3)東日本大震災と福島第一原発事故の影響


◆Non-GMO飼料について

日本で消費される穀物のなかで一番多いのは何だと思いますか?

主食である『お米!』と言いたいところですが、お米と小麦を足した分よりも
多く消費しているのがトウモロコシ。

最新の数字を交えながらお話をいただいた大井先生も、
『日本はお米(瑞穂)の国ではなくて、トウモロコシの国と言ってもいいかも
しれない』とも。

トウモロコシは世界でもっとも生産量が多い穀物で、その生産量は年間で
約8億トン。(※お米の世界生産量は約4.4億トン)
日本が輸入しているトウモロコシは年間で約1620万トン。(※2010年実績)
輸入先でもっとも多いのがアメリカで輸入量の約90%を占めています。

世界一のトウモロコシ産地アメリカでは、食用・飼料用が42.5%、輸出が15.7%に対して、燃料用エタノールの原料用に32.1%も出荷されています。
(燃料用途がなんと輸出量の倍も!トウモロコシ価格が高騰するわけですね)

ということで、アメリカ産トウモロコシがないと日本の畜産、ひいては日本の
食も成り立たないという現実が厳然と立ちはだかっているわけです。
この現実を直視しつつ、遺伝子組換えの話に入ります。

アメリカでは遺伝子組換えトウモロコシの作付面積の割合が88%(※2011年)になったと報告されています。
反収が高く生産コストの面からも有利であることから、アメリカの生産者は遺伝子組換えトウモロコシを優先的に作付るため年々作付面積が増加しています。(その結果Non-GMOトウモロコシの値段が相対的に高くなります)

日本はアメリカから 年間約1600万トン(飼料用は1170万トン ※2008年)を輸入しているので、相当量の遺伝子組換えトウモロコシが輸入されているといわれています。(詳細は、ウィキペディアの『遺伝子組み換え作物』などをご参照ください)

Non-GMOトウモロコシが高いのは収量・生産コストの面はもちろん、日本に輸入されるまでの手続きが非常に煩雑で書類(証明書)が多いこともコストアップ要因になっています。
大井先生は煩雑な書類の例として以下のような証明書をあげられました。
1.NonGMO証明
2.I/Pハンドリング(分別生産流通管理)証明
3.PHF証明(残留農薬検査結果)

Non-GMO飼料の将来については以下のように予想されるそうです。
・一定の需要がある限り生産は続く
・契約栽培などプレミアムをつけて栽培する傾向が強くなる
・IPハンドリングにより価格が高くなる
・米国でトウモロコシと大豆の非遺伝子組み換え割合は10%を切っているが
量的には十分あるものの価格は高くなっていく

一方、遺伝子組換え穀物の功罪としての功の面を見てみると
・2009年産トウモロコシで2940万t、大豆で970万tの生産量増加がGM作物で
もたらされた
・GM作物が利用されなかった場合
2009年 トウモロコシ・・563万ヘクタール、大豆・・382万ヘクタール
の農地がそれぞれ必要になる(日本の農地は460万ヘクタール)

また、GM作物が導入された1996年以降に不作がない理由のひとつにGM作物の安定した収穫が貢献したともいわれています。厳しい気象条件の中でも害虫などの被害を受けにくいため世界の食糧供給に対する安定の一助となっている現実も知る必要もありそうです。

以上のように、大井先生から畜産物を安定して消費者にお届けする畜産業界としての責任を持ちつつ、 獣医師という立場から科学的な根拠を重視しながら遺伝子組み換え飼料についてのお話いただきました。


◆口蹄疫の実情と今後
2010年宮崎で発生した口蹄疫を事例としつつ牛と豚の口蹄疫の写真を交えながら、口蹄疫の発生農場でどのようなことがおきていたのかをお話いただきました。 (痛々しく辛い映像と写真が続き、二度と起こしてはいけないという気持ちになります)

まず宮崎県の口蹄疫発生事例を時系列順にご説明いただきました。
・4月28日:川南町で豚の口蹄疫発生、豚の発症は国内で初めて
・ ~ :発生頭数が殺処分頭数を上回る、未処分頭数増加!感染爆発!
・5月18日:宮崎県が非常事態宣言発令
・5月22日:ワクチン接種開始(非常に効果あり)
(もし5月連休時に国がワクチン接種を決断していたら ⇒ 被害が1/3程度に
収まった可能性あり)
・7月27日:非常事態宣言を解除
・8月27日:終息宣言

最終的に殺処分されたのが牛・豚・ヤギ・羊すべてあわせて288643頭・・。
そのうち豚が最も多くて174132頭と殺処分の60%を占めたそうです。

大井先生も現場に直行し口蹄疫対策で奔走されました。
その現場で大井先生が感じたこととして、

・現地はとにかく混乱していた
・防疫意識の不足が目立った
・指揮および命令系統(国と現地)、情報伝達が統一されていなかった
・疫学調査の遅れ
・安楽死に関する規定(ガイドライン)がなかった
さらには、埋却地が充分に確保できなかったなどの課題もあったそうです。
口蹄疫がこれほど広がって被害が大きくなったのは何よりも口蹄疫を甘くみていたことが要因であるとのご指摘もいただきました。


また初発とされた発生農場・担当獣医師が犯人扱いされるなど、早期発見・早期通報に障害となるような風潮も問題視されていました。
大井先生曰く、『初発農場・発見獣医師は(被害者で)功労者です!いまのままでは早期発見・早期通報に障害となる』と警鐘をならされていました。

1例目の発生が確認された4月20日の時点ではすくなくとも10農場以上にウイルスが侵入していたと推察されていて、日本への侵入経路の特定は現時点では困難とも。(現在も空港などでの水際対策が不十分)

獣医師として今後の防疫訓練を考えると
「実際にやってみて『何ができなかった』『何に手間取った』を明らかにしておく
ことが重要」とのこと。
口蹄疫についてはまた発生することを前提にして、地域全体、全畜種で防疫意識を高めていく必要がありと強調されました。

最後に宮崎県では畜産再建に向けた新たな動き『新生プロジェクト』が始まっているそうです。(※5月31日現在、復興状況は全体で51%、養豚で30%ほど)

(こちらも参考になります⇒ウィキペディア『2010年日本における口蹄疫の流行』)


◆東日本大震災と福島第一原発事故の影響
東日本大震災では東北の多くの養豚場で地震被害、沿岸部では津波で甚大な被害をうけました。
大井先生の契約先農場も津波を受けて、信じられないような被害を受けました。(上記写真。太い鉄骨でできた豚舎もグニャリ・・)

福島第一原発事故の影響の話では、放射線の基礎的な内容から食品汚染と暫定基準値についても詳しくご説明いただきました。

放射線の影響についてのメカニズムでは遺伝子中の塩基の変化、二量体形成、塩基喪失、一本鎖切断、さらに二本鎖切断などの影響があり、特に遺伝子の二本鎖切断では修復しきれない可能性が高くなるそうです。
(修復が困難な二本鎖切断が放射線障害に大きく関与)

被ばく線量と生物効果では、1mSv~100Sv(=100,000mSv:100%致死線量)
まで各線量での人体に対する影響についてお話をいただきました。
ちなみにチェルノブイリ事故では以下のように報告されています。
0.8-2.0Sv( 800-2000mSv) 140人中死亡者は0人
2.0-4.0Sv(2000-4000mSv) 55人中死亡者は0人
4.0-6.0Sv(4000-6000mSv) 21人中死亡者は8人

その他、下記の内容も詳しいお話をいただきました。
・放射性ヨウ素とセシウム、プルトニウム、ストロンチウムについて
・土壌-植物の移行率や海産物への影響
・放射性物質の食品汚染
・牛肉の放射性物質の汚染
・粗飼料(稲わら、牧草、飼料作物)中の放射性物質
・食品の放射性セシウム基準
等々

安全性の面からは、とにかく内部被ばくを減らすことが大切。
まだまだ予断が許されないですが、今後も最新の情報をもとに冷静に行動していくことが重要とのことです。

(報告:Radix事務局)
2011/12/06

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