畜産部会ブログ

2017/07/21

オランダAW視察報告

Wageningen Univ. 養豚研究センターにて
畜産部会では、アニマルウェルフェア(以下AW)の流れを拡げていくことも課題のひとつと考えています。らでぃっしゅぼーやの2010年独自基準改定時にも畜産部門で、それまでの環境・投薬・飼料などの項目に加え、家畜へのいたわりという面からもAWの考えをプラスしています。そこで今年度の部会は、AW先進国における養豚・養鶏・酪農の現状を知るために5月にオランダへ行ってきました。

5/15 ワーヘニンゲン大学 養豚研究センター

オランダ国内の養豚について、多機能・近代的・革新的・持続可能な研究をされているセンターです。今回の訪問では、オランダ養豚、二段式豚舎の講義受講と豚舎見学しました。まだ実験段階ではありますが、離乳の期間を9週間とする研究結果は驚きでした。二段式豚舎はスペースの有効利用、温度管理など、そこで過ごす豚にとって快適かつ効率的に設計されていました。
ワーヘニンゲン大学での講義を聞く参加者
豚舎見学は全身シャワーと専用ウェアに着替えが必要

5/16 放牧養豚、放牧肉牛の教育ファーム

農場主のキースさんは14世紀から続く農家の19代目。2003年からAWをブランド化とすることを決意し放牧を始め、2013年オーガニックに。通年放牧に周囲の理解が得られなかった当初に比べ、今は一般の人もAWの知識があり反対の声はないそうです。豚が土地を耕しその後生えた草を牛が食べるため、広い敷地を区切り、1年ごとにバークシャー豚→アンガス牛の順に移動、7年かけてのサイクルで放牧しています。
キースさんは「動物がHAPPYな一生を送れるよう、それを実現するために先駆者的人間が必要」と言っていました。一方で農業の肉体労働を背負っているのは移民であり移民の労働力あってのオランダ農業という現実の中「若い人で農業をやりたがる人が少ない。オランダ農業の未来は、大型化していくのでは…」という言葉は日本と共通する部分も感じ、心に残りました。

5/17 有機養豚場

高齢者のデイケアと就学前の子どもを預かる施設を併設している有機養豚ファーム。31年前に始め、1996年にオーガニックに転換。現在はドイツやベルギーに出荷しています。約100頭いる母豚の世話を近所の若い男の子と一緒にしているそうです。豚舎と屋外スペースは自由に行き来が出来るようになっており私たちが見学していると興味深そうに寄ってきた子豚もいました。
耳標にはチップがついているので、餌をどのくらい何回食べたのか個体管理がされています。餌マシーンで順番待ちしている場面も見ることができました。敷地内には畑もあり在来野菜の栽培もしているようです。

Vencomatic Rondeel平飼システム鶏舎

ロンディールとはワーゲニンゲン大学・政府関連機関・vencomatic社共同開発の平飼いシステム鶏舎です。屋外と屋内のエリアがあり、さらに昼と夜のエリアも分かれていて、止まり木や遊び場も充実しています。全てのエリアに屋根、屋外にはフェンスがあるので、鶏は屋外エリアにいても野鳥からの病原菌にさらされる心配がありません。卵パックはヤシの実をでんぷんで固めたもので出来ており環境にも配慮されていました。
屋外からの見学
屋内からの見学

5/18 Beter Levenシステムの講義と養豚場

Beter Levenとは、オランダの動物保護団体や流通業の主導で設立された、AWの考えで生産された畜産商品に表示されるラベル認証制度で、飼育方法などによって★の数1~3でランク付けされています。今回の視察先は、1つ星の養豚場。この農場に来て最初に「隠すことなく来たい人には見てもらえるようにしています」と言われました。昨年建てたという豚舎は言葉通り清潔で見やすい見学ブースと隣接していました。豚舎のフードステーションは8箇所。豚の状態に合わせコンピュータ制御で給餌管理が行われていました。約500頭の豚を息子さんと2人体制。週の労働時間は20時間未満とのこと。生産者さんのポロシャツには誇らしげに「1つ星生産者」のワッペンがついています。松下会長は「群れなのに一頭一頭非常によく管理されていてバランスが良いのはすばらしい!」と感心されていました。
胸にワッペン。建物にもGOOD FARMINGのマークが
2階会議スペースからの豚舎見学

5/19 酪農、体験農場

デンハーグやデルフトなどの都市に囲まれ、野鳥も来る自然保護特地区にあります。自然を都市部のために残しながら農産物を作るという二つの役割を果たしています。都市部の人たちもサイクリングや夕方の散歩に来ることもあり敷地内には、パン工房もあり店舗では農作物やミルク肉の加工品など幅広い商品を扱っていました。商品価格は高めですが一日に100人程度が訪れるそうです。

スタッフは18名の他にハンディキャップのある人やホームレスも働いており社会復帰の場にもなっているそうです。180ha余りの農場では、子牛も入れて約370頭のフレックフィー(Fleckvieh)種という珍しい牛がいます。(頭が白く赤茶色が特徴の肉質も乳質も優れている牛です。)

給餌ロボットを導入していて自動化されているので少人数でも農場管理ができていました。政府による自然管理への補助金があることも影響していると感じました。
珍しいフレックフィー種の牛たち
赤い機械が給餌用のロボット

酪農ミルキング(搾乳)ロボット

こちらもデンハーグまで近い都市に囲まれたロケーション。30haの敷地に約100頭の乳牛がいて、4月から10月までは放牧しています。平日はスタッフが1人で、ミルキングロボットを2台導入しています。人件費が高いこともあり、オランダではロボット利用が進んでいます。
見学時にもちょうど牛がやってきて実際に搾乳するところを見ることができました。放牧の牛たちは私たちの訪問にも、急に立ち上がることもなく、落ち着いた様子でした。大型ミキサーで餌を攪拌しているところも見せていただきました。
搾乳ロボ。手前の丸いパイプがロボットアーム。
大きなトラクターの後ろで動く餌撹拌ミキサー

5/20 オーガニック市場

最終日、アムステルダムで毎週土曜日に開催される有名なオーガニックマーケットがあると聞き行ってきました。17:00の閉店ぎりぎり間に合ったのですが、それでも人が多くにぎわっていました。野菜などの青果の他、牛乳、チーズ乳製品、パン、肉や畜産加工品、鮮魚や、調味料などひと通りのオーガニック食品がありました。
●オランダのスーパー「アルバートハイン」
オランダ最大手のスーパーで、今回滞在したどの町でも見かけました。
営業時間は8:00~21:00ですが開店前から数人のお客さんが待っていました。ちなみに扱っている豚肉はベターレーベン認証のものでした。
オーガニックマーケットのチーズ売り場
どこの街にもある「アルバートハイン」

最後に

オランダにはAW推進の政党もあり国民の支持を得ていること、消費者が農場に訪れて見学(オープンデー)や直売所で買物をしたり、毎週ファーマーズマーケットが開催されていることなどが、消費者にAWを身近に感じさせていることわかりました。生産の現場ではロボットによる管理・省力化、ハンディキャップのある方やホームレス、過去の犯罪者を受入れて社会復帰の支援をしていたり、自然保護の取組みに対する農場への補助金などの制度があるようです。
 
一方で、ある生産者さんの言葉が忘れられないのですが『AWやっていて重要なのは消費者について来てもらうこと。』という言葉です。消費者は、AWは大事!というわりに商品価格が高いと買わない。大きなスーパーとの提携や自分の商品をブランド化する等、市場でどのように売っていくかが大事と言っていました。
 のびのびと放牧するために必要な広い敷地、人件費、コスト増が価格に反映することなど、AWについて一般の消費者にも正しい理解が不可欠だと思いました。

参加者の感想はRNL83号に詳しく掲載しますので、そちらもぜひ、お読みください。(報告・事務局 加藤)
2017/07/21

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