畜産部会ブログ

2016/09/22

畜産部会 in 山口 開催報告

今年の畜産部会視察は9月3日(土)~4日(日)で開催しました。
 折しも台風12号が九州に着々と接近中。「山口に集合出来ない」とスタッフにあきらめムードが漂っていた前日でしたが、フタを開けてみれば台風なんてどこ吹く風、というより風が吹いていない!

 幸運なことに台風はノロノロ進み、飛行機の到着時刻こそ少し遅れたものの無事オンタイムでの進行となりました。

秋川牧園さんの本社で工場を見学

 
 生産者11名、らでぃっしゅぼーやの食品課3名、Radixの会事務局他4名、計18名の参加者がまず向かったのが山口市郊外・仁保(にほ)の秋川牧園本社。ここには本社の他、加工工場と直売所があります。
 まず、秋川実会長から秋川牧園についてのお話がありました。

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 秋川牧園では生産を行う直営農場、契約農場ともに、資材や飼料、基準を共有し、最終的に秋川牧園が品質管理を行ったものを消費者に届けるという「健康に安心・安全」なネットワークをつくっています。
 秋川牧園は昭和初期、秋川会長の父・房太郎さんが苦労の末、広大な総合農園を中国大連で開いたときから始まります。
 その後秋川会長が「1羽の鶏、1個の卵から健康に」の決意で山口市で秋川牧園をスタート。創業した昭和47年は水俣病やカネミ油症事件などが社会問題になっていた年でもあり、秋川牧園は「健康安全な卵づくり」を目指します。昭和50年代には、生産品目となった若鶏で無投薬飼育を日本で(世界でも)初めて確立。
 志を同じくする多くの仲間にも恵まれ、生産品目は牛乳、野菜、豚肉、冷凍加工食品と拡がり、平成9年には農業の会社としては日本で初めて株式上場しました。

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 会長のお話の後は、2グループに分かれてミートパックや冷凍食品の作業風景を見学。
 冷凍食品工場の見学時はチキンカツのカット作業中。250種類もの加工商品を作るため、間違いがないよう作業中の商品名がテーブル端に掲げてあります。人材確保には苦労もあるそうですが、現在は山口大学の中国人留学生がアルバイトに来ているとのこと。アルバイトは後輩留学生にバトンタッチされているようです。カットが終わると調味料などの加工が施され、別棟にある調理工程にベルトコンベアで運ばれていきます。
 ミート工場では鶏肉をカットし、一定の重さに袋詰めされ、冷蔵品や冷凍品にされます。機械化出来そうですが鶏肉にも個体差があって手作業でないと難しいそうです。長年勤務しているベテランメンバーが多数いますが、作業トラブルを防止するためにチーム制で情報を共有しながら作業を進めているそうです。
 工場見学の後は秋川牧園さんの商品の試食会。一番人気のチキンナゲットを始め、塩味、醤油味のから揚げ、珍しいセセリ(首の筋肉の部位)のグリル、新商品のヨーグルトやアイスクリームなどが並べられました。「凝った味付けでは大手のメーカーさんには勝てないです。だからうちは極めてシンプルな味付けで作っています」とのことですが、どれもとてもおいしい商品でした。


飛行機が遅れて昼食がとれなかった参加者用に急遽用意した
お弁当。フグだけどフグの味のしないフグ弁当。残念!

秋川実会長から秋川牧園の概要をお話いただきました

冷凍食品のカット作業中。白い帽子が正社員、クリーム色の
帽子がアルバイトやパートさん

参加者からの異物混入についての質問に「ほとんどありませ
んが、まれに骨や毛が混じったりすることがあるので、かな
り神経を使っています」の答え。「異物だけど異物じゃない
のね〜」と一同から笑いが起こりました

カットされた鶏肉を加工中

漫然と作業を進めないために大きなタイマーが設置されてい
ます。「1分で1枚カット」のような目標が設けられていますが、
ノルマではありません

ミート工場でカット作業中

情報共有ボードには作業するグループの名前が。“N・K・H(生
肉・カット・包装)”、袋詰めで“お袋さん’s”など楽しい名
前がついています

敷地内にある直売所。さまざまな商品が並んでいます

試食品はどれもおいしいのですが、セセリに人気集中。お酒
は出ませんよ!

下関市にある菊川農場を視察

 試食の後はバスに乗り込んで下関市まで移動。本社を出てすぐに、飼料米を貯蔵するサイロの建設現場が見えます。この秋には完成し、地域で栽培される飼料米が保存されるようです。秋川牧園ではポストハーベストフリー・遺伝子組み換えしないnon-GMO飼料原料を与えていますが、海外からの輸入に頼っている部分もあります。サイロ建設は、飼料の高騰や不足、停滞する地域の農業を活性化するために進めている「飼料用米推進運動」の一環です。飼料米は鶏舎から出る鶏糞を肥料に栽培されていますが、循環が非常に円滑に行われているようで鶏糞が足りないほどだそう。20の生産場(95ha)で750kg/反の鶏糞を使っています。

 乗車したバスでは先日放送された「カンブリア宮殿」を視聴しながら、1時間半の移動。
 農場に到着後は徹底的に消毒を行い、事務所で農園について説明を受けます。
 菊川農場には6棟の鶏舎がありますが、もともとは採卵用のウィンドレス鶏舎だったものを開放型の鶏舎に改築。35羽/坪(一般的には50 〜60羽/坪)、全体で9400羽が飼育されています。ヒナを60日飼って入れ替え準備、90日で一回転。年4回出荷しています。成長とともにヒーターやファン、霧の発生機(気化熱利用)で温度管理をしていますが、やはり鳥インフルエンザ対策が大変だそうです。床材は鶏糞を切り返して発酵させたものを再利用していますが、鶏舎特有のアンモニア臭がなく、もちろん臭いはありますがとても香ばしく不快な臭いではありません。
 台風が近づいていたため台風対策についての質問がありましたが、予想外に窓は開け放ったまま、ファンも回したままだそうです。窓を閉めしまえば温度が上がりすぎ、窓の一部を開ければ風で建物が吹き飛んでしまう。
考えてみればその通りなのですが……。
 また、山の中の鶏舎のため、美化のための草刈りが欠かせないそうですが、音に敏感な鶏がビックリしてしまうので草刈り機が使えず、意外に大変な作業だそうです。


本社近くのサイロ建設現場

菊川農場到着後、消毒を徹底的にして農場の藤重さんから説
明を受けます

採卵鶏舎を改装したため、天井の高い開放感のある鶏舎にな
っています

防疫対策のウェアを身につけると誰が誰だかわかりません

鶏に与えられる植物性飼料

50日で出荷が一般的だが長く飼育すれば旨み成分が増えるそ
う。ただしコストはかかります!

全部で6棟の鶏舎があります
 
3次会まで盛り上がった懇親会
見学終え宿泊先の新山口駅側のホテルに到着した後は、山口の海の幸を楽しむ懇親会で親睦を深めました。
懇親会は3次会まで続き、明日は早い時間から始まる畜産会議が少々不安になる盛り上がりでした。

2日目・畜産会議

秋川牧園・秋川正社長の発表

 会議は秋川牧園さんからの発表から開始。昨日見学した工場や農場見学のおさらいと補足。驚きだったのがその育成率。牛や豚、卵と異なりすぐに成績が出るのが鶏だそうで、温度管理やエサの状態など、どこが悪かったのかが育成率としてすぐに出るそう。現在は100/102羽、ヒナが100羽につき2羽プラスで入荷されるので育成率は100%となっています。無投薬だから育成率が低くなるわけではないようです。
 最後にアニマルウェルフェアについての秋川さんの考えを発表されました。「言葉としてしっくりくる部分来ない部分があるが、自分の言葉で表現すると“健康的な飼い方を科学しよう”。理念の上に成り立つことが基本ですが、消費者のためにトータルの仕組みとして良い飼い方をする。生産現場、社員、農場も元気であることが大事だと思います」
 発表後、鶏肉処理について、水の量の調整について、委託の場合のチェック方法、坪あたりの数を減らすことで肉付きは改善されるか、など質問がありました。

生産者さんからの発表

続いて向山さんの進行で参加生産者皆さんから、現在の生産方法、自主基準、抱えている課題などについて発表。

 佐藤 貞之さん(木次乳業)
 中国地方の中山間地で平地が少ない環境。それをどう活かすかを考え、出来るだけ牛たちのストレスを少なくするために直営牧場は全て放牧で飼育している。これからの時代は、一歩は消費者へ、二歩は生産者の方へ向けて仕事をしていくことが必要だと思っている。現在は後継者育成とシルバー人材の活用に力を入れている。

 松下 憲司さん(中津ミート)
 養豚だけでは厳しいためハム・ソーセージを扱うようになった。近代的な施設に作りかえ、現在は年間1万3千頭の繁殖から肥育までの一環経営。土着微生物を利用した肥育豚舎で1頭あたり1.4平米、通常の2倍くらいの広さでゆったり育てている。古くなった加工工場を建て替えて、もっと賞味期限の長い商品や消費者のニーズに合った商品を作りたい。

 一柳 憲隆さん(丸一養鶏場)
 アニマルウェルフェアの考えに則したヨーロッパの直立立体式平飼飼育システムを導入。ヨーロッパに合わせ8羽/1平米のスペースで飼っており、これは病気の発生率にも関わってくるのではないかと考えている。自家配合飼料は価格のこともありトウモロコシと大豆の混合飼料を購入している。

 向山 洋平さん(黒富士農場)
 大量生産型から平飼いに転換。現在は18棟のうち15棟が平飼い鶏舎で、15000羽を育てる。渡り鳥のいない4〜10月末までが平飼い期間だが、鶏たちが元気に走り回っている姿は生産者から見ても気持ちが良い。昨年、世代交代を行ったが、農業の分野から日本を明るくし、次世代の生産者達に誇れるような魅力溢れる農業を行っていきたい。

 高橋 基弘さん(高橋ファーム)
 えりもで昆布漁のない時期の仕事として始まった放牧だが、高橋ファームでは「自然との共存。地域との共存」を理念として掲げ、240頭の短角牛を家族で育てている。将来は機械化や仕事の合理化も行い、家族と従業員1人で300頭の牛を回したい。最近飼料の変更を行ったのだが、お客様アンケートでも「味は変わらない」と回答をもらった。

 上田 金穂さん(北十勝ファーム)
 曾祖父の代からは110年、北十勝ファームとして11年目畜産に関わる。商品数で日本一を目指し、短角種は550頭育てている。国産飼料100%を売りにして取り組んできたのだが、それが売りにつながることが広まりエサも高騰、入手しづらくなっている。これから取り組まなくてはいけないアニマルウェルフェアだが、日本独自の基準を模索するのが大事だと思う。

 山田 純二さん(湯田牛乳公社)
 私は生産者ではなく1日25トンの牛乳を処理する牛乳づくりの技術者。一番力を入れているのは低温殺菌だが、東日本大震災で沿岸部のコミュニティが壊れ、ちょうど洗ビン機の入れ替えと重なってしまい、ビン牛乳が採算割れに陥り撤退。現在は紙パックの低温殺菌に力を入れている。心配なのは生産者の後継者不足だが、なかなかいい方策が見つからない。


秋川社長から発表

さまざまな質問がされました

質問に答える秋川社長

松下 憲司さん(中津ミート)

一柳 憲隆さん(丸一養鶏場)

向山 洋平さん(黒富士農場)

高橋 基弘さん(高橋ファーム)

上田 金穂さん(北十勝ファーム)

山田 純二さん(湯田牛乳公社)
 佐藤 貞之さん(木次乳業)
 最後に木次乳業の佐藤さんから「non-GMO飼料とそうでないものとの価格差がどんどん大きくなっている。畜種により、特に牛などの大きなものになると負担額も大きい。理念だけでやっていくには現実的でないところに来ているので、早急に何かの手立てを考えなくてはいけない」という、これから一番課題になっていくであろう意見が出されました。

らでぃっしゅぼーやの考えるアニマルウェルフェア

 らでぃっしゅぼーや商品部 倉嶋 誠シニアマーチャンダイザー
 アニマルウェルフェアの取り組みを始めるにあたり調べたところ、10年以上も政府が取り組んできたにもかかわらず「有機JAS」について知っている人が4割、アニマルウェルフェアについてはなんと4%の人にしか知られていないことがわかった。とはいえ今後必ず何らかのアクションが必ず必要となるはずで、生産者も含めた勉強会に向け準備している。らでぃっしゅぼーやとしては長年アニマルウェルフェアに寄り添うような畜産の取り組みの実績があり、会員の皆さんにも指示をいただいている。一方で1.コストがかかる 2.認知度が低い 3.規格がまだない といった課題もある。理想論だけではないアニマルウェルフェアを考えなくてはいけない。
 らでぃっしゅぼーやではアニマルウェルフェアの認知度を上げるため、会員情報誌「おはなしサラダ」で「『いただきます』の国のアニマルウェルフェア」という特集を組み、良い反応をもらっている。この11月には国際フォーラムで開催されるオーガニックライフスタイルEXPOで、らでぃっしゅぼーやの取り組み・実績をアピールする予定で、畜産部会の皆さんにも多数参加してほしい。

ワカモノのコミュニティ結成

 らでぃっしゅぼーやの遠目塚さんを中心に、次世代を担う若者生産者で畜産部会独自のコミュニティをつくって活動していくことが発表され、ベテラン生産者からエールが送られました。この夏退職された元農産部の後藤さんから「若いうちは、恥かきベソかき、全部入れてはき出す力をつけることが大事」という印象的な言葉をいただきました。
 今回は少数の参加者での畜産部会になりましたが、そのぶん参加者の距離の近い部会となりました。生産者それぞれが抱える問題点は、懇親会でも活発なやりとりがありましたが、これから取り組んでいくアニマルウェルフェアについてはまだまだ議論や勉強が必要なようです。

らでぃっしゅぼーやの倉嶋さんより発表

有機JASとアニマルウェルフェアについての調査の結果

次世代を担う若手たち。まとめ役の遠目塚さん(らでぃっしゅぼーや)、向山さん(黒富士農場)、一柳さん(丸一養鶏場)、坂本さん(黒富士農場)、高橋さん(高橋ファーム)、松下さん(中津ミート)、堤さん(らでぃっしゅぼーや)
2016/09/22

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