農産部会ブログ

2017/11/01

専門部会|畑・福廣塾in名張 開催報告

農業技術と農業経営をテーマにした勉強会。初日10月20日はゆうき伊賀の里の福廣さん・鯨岡さんの圃場見学。
翌日21日は土佐百の畑さんによる過剰施肥問題の勉強会と、福廣さん・鯨岡さんによる無理せず経営的に成り立つ有機農業・新規就農からの農業経営のお話です。

【福廣さんの圃場見学】

自作堆肥の説明中の福廣さん
右:あゆみの会丸山さん、ハウス管理、土壌管理について熱心に聞いています。
ヨトウの忌避効果がある黄色蛍光灯
秋雨の中、福廣さんの圃場見学スタート。福廣農園は福廣さんご家族と社員さん・パートさん・研修生の6名体制でトマト・葉物類を栽培。すべての圃場で有機JASを取得されています。いつ訪問しても圃場には雑草ひとつみあたらないほどきれいに管理されています。今年は長雨の影響で露地コマツナ・ホウレンソウなどの播種が遅れ気味となっていましたが、天候不順も見越した緻密な栽培計画などの説明をいただきました。

福廣さんは良い堆肥づくりをするために10年以上前に堆肥場を建設。圃場がリン酸過剰ぎみなので、堆肥原料はリン酸の少ない植物性の「おから」と「もみがら」が中心。そこにエコキッチンクラブの家庭生ゴミ乾燥物が入ります。週に1回ぐらい切り返して約半年で完成、グループ内で積極的に活用しています。
自作堆肥だけでは不足するので近くの業者さんから剪定枝など植物原料中心の堆肥も購入。水分が高めの「おから・もみがら堆肥」と混ぜて水分調整の役割も担っています。
福廣さんは堆肥主体の施肥体系です。そのため熱水抽出法による土壌分析で年間を通じた土壌窒素の動きを把握し、圃場や土質のクセ、季節・品目にあわせてきめ細やかに投入する堆肥の量を調整しています。まさに職人技、なかなか真似できないノウハウですが、コスト低減や施肥作業の効率化にも役立っています。
4年前に建設した20棟のハウスでは、地下水位が高い・雑草が多いなどの問題をかかえていましたが、もみがらの積極投入などで土壌改良をすすめ、今はホウレンソウ・コマツナなどを中心に年5作を栽培。ハウス内雑草対策でも太陽熱消毒はもちろん、太陽熱では枯れにくいサイド部分にもみがらを堆積、そこから畝近くまで黒マルチを引くことで雑草を抑制していました。もちろんハウス外側は防草シートで雑草対策万全です。
ホウレンソウ・コマツナは雑草が生えると負けてしまうので、とにかく雑草を生やさないようにしているそうです。雑草残渣もすべてハウスから持ち出すなど、雑草との戦いは『とにかく増やさないこと!』です。
倉庫では堆肥散布用農機などの農機具類や被覆材、ホウレンソウのヨトウ・ヤガ・メイガ類防除(忌避効果)の黄色ランプ、福廣さんが使用している資材類について皆さん興味津々。自作の有機栽培用の育苗培土の作り方などのお話も詳しくいただきました。

【鯨岡さんの圃場見学】

圃場の説明をする鯨岡さん
天敵の説明をする畑さん
福廣農園の見学後、同じグループの鯨岡さんの圃場見学へ。鯨岡さんは2011年8月~2013年3月まで福廣農園で研修、2013年4月に就農。現在はゆうき伊賀の里の生産者として、らでぃっしゅぼーやにも出荷されています。ハウス10アール(6棟)、露地60アールでトマトやパプリカ、葉物類を栽培されています。師匠である福廣さん同様に有機JASを取得されています。
ちょうど見学時は、トマト後作のホウレンソウが収穫中でした。トマトの残肥が十分あるので、もみがらを入れて太陽熱消毒をすることで無肥料でも十分生育するそうです。
パプリカ栽培は畑さんのアドバイスも参考にしながら毎年改善・改良をすすめて、今年は全面施肥で元肥を多めにして追肥なしで栽培中とのこと。畑さんも太鼓判のできです。天敵も積極的に導入、実際に畑さんが天敵のタバコカスミカメを圃場内から採取して参加者に見せていただきました。畑さんからは現状の詳しい説明とアドバイスをしていただきました。次作のパプリカ栽培がどう変化していくのか楽しみです。

【過剰施肥問題について】

勉強会で説明中の畑さん
環境制御を学ぶには「ハウスの環境制御ガイドブック」がおすすめ
畑さん勉強会のレジュメ


二日目は、過剰施肥問題で悩んだことのある土佐百の畑さんの勉強会から。過剰問題は窒素過剰から時代とともに塩基過剰やリン酸過剰が言われるようになりました。分析精度が向上した現在では、微量要素や重金属の過剰も明らかに。畑さん曰く、『社会で注目される前に、投入する資材類について十分注意し、過剰に蓄積しないように、環境を汚染しないように心がける必要があります』
窒素成分では地力窒素の影響を忘れがち。地力窒素の発現で同じ施肥量であっても春~夏と秋~冬では窒素の効き方が違います。無肥料栽培で窒素過剰が疑われた事例では、有機物をたくさん入れて被覆した後に太陽熱処理をしたところ、一時的にアンモニア態窒素が急上昇して作物に悪影響をあたえたことも。
『知識で知っておくと、いろいろ役に立ちます。メカニズムを知っておくと、対策をたてやすいです』と畑さん。
リン酸は畜糞堆肥にかなり含まれています。リン酸が過剰になると様々な野菜で収量が低下するほか、アブラナ科では、根こぶ病を助長するなど様々な障害が見られるようになります。畜糞堆肥の投入をひかえたり、圃場全体のリン酸を増やさないように株元だけ施用するなど総量を増やさないような工夫も必要です。
微量要素はホウ素を除き分析法が統一されていないので、いろいろな分析機関で比較すると分析結果が大きく異なることがあるそうです。微量要素に関しては圃場に入れることを少し待ったほうがよいそうです。
日本の場合、有機栽培でも「環境にやさしい」とは決して言えない状況があるそうです。EUなどでは施肥投入量の上限が決められていますが、日本には上限がないからです。畑さんは非常な危機感を持たれています。
『農薬を使わない場合は環境にやさしいと言えます。しかし肥料に関しては化学肥料を適正に使った方が、環境負荷が少ない事例が多いです。本気で環境負荷を減らしていくなら、時間をかけてでも着手すべきです』
肥料成分の過剰に対する具体的な対策として、無施肥や減肥(インターネット上に各種試験結果が公表されています)、薄める(表層下層混合・客土・プラソイラー)、部分改良(播種位置・株周り改良)、施肥方法の改善、緑肥、かん水、湛水などの手法をご紹介いただきました。

【農業経営のお話】

勉強会で説明中の畑さん
福廣さんの勉強会レジュメ
休憩をはさんで、福廣さん・鯨岡さんによる、無理せず経営的に成り立つ有機農業・新規就農からの農業経営のお話。新規就農しても生活苦で離農する人も多い現状、どのような経営を目指せば十分生活できるのか。福廣さんが実際に就農希望者に伝えている農業経営の目標を中心にお話をいただきました。
就農時の売上目標は1人の場合500~700万円/年、夫婦でやる場合には800~1000万円が目安。就農一年目は赤字になりやすいですが、その後は利益率50%を目標にすると経営が楽になってくるそうです。
有機栽培の場合、品目にあう栽培技術をいかに慣行栽培並にあげていくかがポイント。病害虫の被害が少なく栽培技術が慣行栽培と同等になれば収量も同等になります。有機栽培は適地適作で旬の時期につくるのが一番作りやすいので、無理な作型はせず環境と土壌にあう品目を優先してつくること。生産物を適正価格(慣行の1.3倍を目標)で販売できるよう努力すること。生産に注力するなら、販売はどこかの生産グループに所属するパターンが一般的。生産物が3割高ぐらいで売れていくような売り先を確保。経費についても慣行と同等レベルに抑えるよう努力する。高い有機肥料はなるべく買わないように、安い堆肥を中心にする。いかに肥料バランスのとれた肥料を安く仕入れてくるかがポイント。
『慣行栽培と同じ収量、販売単価が3割高、そして経費が同等なら有機の方が3割儲かります』
目標に近い農家、技術、販売、経営、労働時間などを考慮すること、研修先の近くで就農すると大きな失敗する可能性がすくなくなります。アドバイスをうけることができるので近くに良い指導者がいるかどうかが大きなポイントとのことです。
活発な質疑応答もあり、とてもよい勉強会となりました。
来年度もできるだけこのような勉強会を企画・開催していきたいと思います。
2017/11/01

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